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首藤 甲子郎
早稲田大学ラグビー蹴球部

特集
    [2006/03/28]
東条組『荒ぶる』、新たなる歴史の創造へ。『伝説』のその後、新生ワセダが目指す極限の世界― 中竹竜二『極』   編集 疋田 拡

 「とにかく自分らしくということかな。監督はこうあるべきというのではなく、自分ならこうするだろうなって…」。緊張、創造、継承。すべてが変わったあの日から一週間。決意みなぎる新指揮官の下、ワセダはまた新たなビクトリーロードを歩み始めた。
 あと5cm、あと1度、どんな屈強でもブレないタフさを…。東条組『荒ぶる』、新たなる歴史の創造へ。『伝説』のその後、新生ワセダが目指す極限の世界―
中竹竜二
『極』

―「監督」と呼ばれるのはもう慣れましたか

 監督と呼ばれるのは…、まだ慣れないねぇ。誰のこと呼んでるんだろうっていうのはあるよ

―学生には何と

 中竹さんって(笑)

中竹竜二―今更という感じですが、卒業されてから今日まではどのような時間を過ごされていたのでしょうか

 長い話だね(笑)。卒業して半年間は留学準備で日本にいたんだけど…、んー留学準備と言いながらほとんど中学生とかのコーチをしていたかな。それでイギリスに行って、最初は文化人類学を勉強して、最後に社会学に変わったんだよね

―そこでスポーツに関わる研究を

 そうそう。向こうには3年半いて、ラグビーもクラブチームでやってた。それで帰ってきてからは三菱総研。まだ全然仕事の引継ぎできてないけどね(笑)

※4月からは三協フロンテア所属となります

―3月18日からシーズンがスタートしましたけど、実際始まってみていかがですか。心持というか、どんな毎日を

 んー、まだ手探りのところがあって100%軌道に乗ってはないね。学生も様子を見ているだろうし、俺もそうだし。様子を見ているというか、まだ知りたいなと、お互い手探りなところは感じるね

―今月初めのワセダクラブのシンポジウムでは「緊張している」とおっしゃっていました。『緊張』『創造』『継承』の緊張とは言葉の意味は少し違いますが、スタートした今はそんな感じもだいぶ…

 そうねぇ、今はあまり緊張ではないね。心地よい緊張感はあるけど

練習―練習も徐々にエンジンがかかってきてますが、どのようなことを感じているのでしょうか。実際触れてみての新たな感覚だったり、発見だったり

 清宮さんは幹の部分をかなり作ってくれたから、そこについては学生の中では申し分ないけど、

―枝の部分を見ると…

 見ると、かなりできていないところは多いなって。それは試合中にそういった局面が少ないようなところが欠けているんだけど。例えばセービングだったり。でもすごいのが、今日なんかも羽生が見本を見せて何回か教えるだけで、すぐできるようになるんだよね。あれにはすごく驚いた。やっぱりそういうことを意識していなかっただけで、実際意識して、いいイメージを持つとみんなやれるだなって。これが来週また始まってできるかどうかは別として、吸収力はすごくあるね

※タックル、セービング、羽生コーチの見本はやばすぎです…

―枝葉の部分もかなり上げていけそうな感じだと

 そうだね。でも枝ばっかりいっているときに、幹の部分を忘れがちだから、そこは気をつけなきゃいけないと思ってるよ

ファーストミーティング―18日のファーストミーティングで学生に一番伝えたかったのはどのようなことなのでしょうか。ここ5年間を見ても、一発目のミーティングはかなり大事です

 一番伝えたかったことは、学生は僕に対してすごく不安を持っていたと思うんだけど…、昨年あれだけいい成績を残したけれど、今年はまったく別のチームで、4年生の抜けた穴はすごく大きいと。そこを埋めるためにはすごい努力が必要だということと、本当に上の上を目指さないと上にはいけないということかな。2段階上を目指さないと、最終的には本当の、目の前の上にもいけない。そこだね。だから社会人のトップ3を倒すということを最初にみんなに言った。「進化しなければ組織は衰退する」。そこはちょっと強調しておきたいね

―就任直後、「学生と本気で向かい合いたい」とおっしゃっていましたが、これが中竹監督の芯になるのでしょうか

 そうね。学生とは本気で向かい合って、本気でぶつかっていこうと思ってるよ

話し合い―全部員との面談も行いましたが、実際学生たちと1:1で話してみていかがでしたか。思っていたのと違ったりとか、そういったものは…

 んー、まだ始まったばっかりだけど、考えている人間とそうでない人間との差があるかな。でも考えていない人間も、別に考えられないのではなくて、考える機会がなかったのかなって、そう思うね

―今年は「考える場の創出」を掲げています

 うん。やっぱり自分たちで考える力をつけて欲しいからね

―ここ数年のワセダはどう見ていたのでしょうか

 とにかく自信を持ってプレーしていたよね。後藤さんも言っていたけど、自信に満ち溢れたプレーをしていた。それが一番かな

―指導するようになった今もその印象は変わらない?

 そうだね。それは変わらない。なんだけど、今ものすごく基本的なことをやっていて、自分たちは強くて何でもできるんだというところから、やっぱりできていないことがたくさん自分たちでも見えてきてるんじゃないかな。そういうときに、それを克服する粘り強さを持って欲しいなって。Aチームであっても、タックルの1:1がしっかりとできるのは東条くらいしかいないし、試合でそういう局面が余り出ないとしても、できないのは誰が見ても分かるから。そこから、できるようになるプロセスを経て、もっと自信を持って欲しいね

―キャプテンをやられていたのは10年前、もう一昔という感じでしょうか

 そうだねぇ。まだちょっとしか経ってないと思ってたら、もう10年も経っちゃって(笑)

―環境をはじめ色々な物が変わりましたが、これは変わっていない、そう感じるものはありますか

 んー、やっぱり学生はマジメでひたむきということかな

中竹竜二―新スローガンは『極』ですが、この言葉にはどのような想いを…

 色々な意味が含まれていて、ひとつは、個人の限界まで挑戦して欲しい。自己の追求。その中に全力で出し切ること。限界まで自分を追い込む、チャレンジする。そうしないと見えてくるものも見えてこないから、そこに重点を置きたいなと。あとはどんなプレーに対しても拘りを持って追求して欲しい。最終的にはどちらでもいいことでも、例えばこのパスもうちょっと、あと5cmこっちに欲しかったとか、スクラムがあと1度こっちに向いてくれればとか、あと0,1秒早くパスが欲しかったとか、そこは本当の拘りのところまでいって、いいパフォーマンスができると思うから。最終的にはそこになっていくのかなって

―学生の間では『ULTIMATE CRUSH』という言葉が深く浸透していて、練習でも試合でもこの言葉を口にすることによってひとつになれました。そこが清宮さんの拘りでもあり、もはやワセダの代名詞です。グラウンドで口にできる。そういう意味ではこの言葉も残っていくものなのでしょうか

 まぁ、それは残したいなと思うね。学生相手には『ULTIMATE CRUSH』したいと思っているし。でもトップ3を見たときに、『ULTIMATE CRUSH』できるかと言われたら、それはできないので、やっぱり拘って、極まって、一番向こうが弱くて、こっちが強いところを発揮して勝つ。圧倒的に勝つというよりは、小さな穴を突いて、極まって、勝つというイメージが強いから

―最終目標である打倒・社会人トップ3まで見据えて『極』だと

 そう。イメージ的には、試合で使えるような、グラウンドで使えるような言葉を捜していたんだけど、そうなると英語になっちゃうと思うんだよね。だからそれはチームスローガンではなくて、色々なゲームプランの中に入れたりとか。今年は「スウィフト」という言葉を使うんだけど、そこの中に色々な言葉も増えてくると思うし

ファーストミーティング―今年は「スウィフトラグビー」というのを掲げましたが、この「スウィフト」という言葉はどこの世界で使われているものなのでしょか。ビジネス用語だったり、何用語とか決まったものはあるのでしょうか

 いや、特にないね。今までに使ったことのない言葉にしようと思ったのと、「クイック」という言葉を使いたくなくて、動作と動作の間とか、アクションの速さとか、そこは別の言葉を使いたいなって

―これまで使っていた「トツ」に変わって使われる言葉

 そうだね。まぁ、「トツ」でもいいんだけど、「トツ」は「トツ」(リムーブのことです)だけだからね

―すべての間を早くする…

 そうそう、そうだね

―ミーティングでは今年は「スウィフトアタック」だと学生たちに提示しましたが、「スウィフトアタック」という言葉になるとどういう意味というか、イメージになりますか

 イメージとしては、オフロードもあり、東芝がミニモールというのをやっているけれど、またそれとは違ったすごく早いモール。本当のショートモール。モール組んだ瞬間に、入った瞬間に、ちぎれて、またブレイクして、そこからポイントができて、また攻める。本当に相手にリセットさせる時間を短くしていく、そういうイメージだね

―イーブンボールを100%自分たちの物にしようとも常に言っています。それもこの「スウィフト」に入ると

 そうそうそうそう。イーブンボールというのは、ボールへのプレーの間の中に、どっちのボールでもなくなるということだと思うんだけど、そこに対して全部ワセダが支配したいなって。昨年のワセダは強かったけれど、大きな試合で、イーブンボールで負けているところがあったから。特に社会人相手で。そこは学生としては負けたくないよね

―「安定的なゲームプランと個々の特殊能力を融合し、圧倒的組織を持つチーム」というのがミーティングの総括の中に出てきましたが、そのためにはどういう流れでチーム作りを

 それがミーティングで掲げた『ディフェンディングラグビー』と、『セットアタックラグビー』と、『スウィフトラグビー』の3つになると思うんだよね。まずは個々のディフェンス力を高めて、組織的なディフェンスシステムを作れば、安定的なチームになるし、ゲームプランとしては、セットから、ここのポイントまでくれば、セットからこれだけトライを取れるとか、ゲインを切れるとか、ゲームメイクをしていても、そこまでリスクを負わずに戦える

―まず春の段階では今やっているような個のタックルの強さだったり、セービングだったり、それぞれの能力を高めることに重点を置いてと

 んー、でも来週からは2:1とか2:2とか段階を経ていこうとは思っているけどね

―5月の招待試合が始まる頃には、チームとしての具体的な戦い方も提示して

 そうね

矢富勇毅―「個人の特殊スキルへの依存」ということも、昨年の振り返りとして話されていましたが、セオリーの上で、その能力を最大限に生かしたのが昨年のチームでした。これは依存度の高さの問題ということでしょうか

 今年はジャパンで取られてしまうというのもあるし、ケガしないとも限らないしね

―春はU23やジャパンで多くのメンバーが抜けてしまいそうですが、「特殊能力に依存しないチーム」を目指すという点ではポジティブに

 そうだね。さすがに秋は余り取られたくないけど…

―いずれにせよ、春は勝負の時期になりそうです

 そうだね。伸びる、ベースを上げるのは今しかないからね

滝澤直―春はやはり最後の関東戦が一番のターゲットになるのでしょうか。清宮さんの置き土産とも言えるものです

 もちろん、最後の関東戦が1番のターゲットになるね。あとは慶應かな

―慶應はやはり気になるチームではありますか

 そうだね。彼ら自身も自信を持っているだろうから、春から勝負しておきたいなって

―春口さんとは何か話は

 いや、まだできていないんだよね

―今年のチームの戦い方はある程度頭の中で描かれていたりするのでしょうか。それともまだ作り上げている段階?

 ゴールデンウィーク前には出すんだけど、具体的なところについてはまだ作り上げている段階だね。本当はもっと早く出さなくてはいけないんだけど。そこはちょっと遅れてるかな

―今年のチームはどの段階からのスタートになるのでしょうか。トヨタに勝ったワセダ、大学で勝つことから目指すワセダ、まったく新しいワセダ…

 まぁ昨年とは違うと考えた方がいいだろうね。また全然違うチーム

―先ほども出た「ディフェンディングラグビー」、一番強化したいのはここになるのでしょうか

 そうだね。強化したときに、ディフェンスの方が分かりやすいというのもあるし。アタックは相手によって色々なオプションがあるけど、ディフェンスは分かりやすいから。それにディフェンスの強いチームはブレることがないからね

東条雄介―その中心を担うであろう主将の東条は、中竹さんから見てどんな男でしょうか。色々と話されてみて

 やっぱり芯があって、情熱があって、魅力あるキャプテンだと思うね

―個のタックルの強さは拘りたいというか、足りないと感じるところですか

 まぁみんな学生相手には強くて、全然通用するけど、社会人の本当に強い外国人とかにはまだちょっと足りないところがあるから、ディフェンスで1:1で勝てるチームになって欲しいね

―コーチの方はそれぞれどのような観点で選んだのでしょうか

 今年必要だなと思っている、みんなで考えるというところで山羽さんにお願いしたし(セルフマネジメント)、スカウティングとか戦略・分析も俺にとっては絶対必要だなと。必要な枠を、必要な人間を探していったときに、今の人たちがいた。その中で俺がやりやすい世代の人たちを選んだというところかな

―スローガン『極』ということで言えば、やはりポジ練もかなり…

 そうだね。ポジ練はこれまでもやっていたと思うけど、まだまだ細かいところをみっちりやれるチームだということを感じていたから

―新たな試みであるセルフマネジメントには、どういった思いが込められているのでしょうか。ワセダはハートで勝ってきたチーム。メンタルも強くて、自分をしっかり持っていて、目標に突き進んでいく。そういう感じだと思いますが

 もちろんそれはAチームの奴らはメンタル的にも強いかもしれないけど、それ以外の人たちが、普段ライバルがすごい中でどんなイメージで練習してくのかとか、どんな時間を過ごしていくのかとか、そこは部としてもう少し詰めたいというのがあったんだよね。ただ漠然と努力して、4年間出られませんでした、卒業ですというのはもったいなすぎるから

―自分を見つめる、考える…

 そうだね。自己認識とか、目標設定とかそういうところだね

―清宮さんとはかなりの時間をかけて引継ぎをされていましたが、その中で1番心に残っているのはどんなことですか

 んー、何だろう。5時間くらいかかったんだけど…。まぁ清宮さんの中ではいい悪いがハッキリしていて、その基準をしっかり示してあげたことに尽きるかなと。曖昧とか、グレーゾーンをすべて消して指導したんだなということがハッキリと分かったね

―清宮さんは「自分の経験で物を語ったり、物事の尺度を決めるのはいいコーチとは言えない」ということを、もっとも伝えたいとおっしゃっていました

 それは要所要所でそういうことがあったから、肝に銘じています

―引継ぎのときの清宮さんはどういう感じでしたか。何か変な質問ですけど…

 本当に丁寧にやってくれたからね。いいチームを作ってくれなって、がんばれよって

―『中竹ワセダ』はこれで勝つ、こういう集団にしたいというのは

 もう本当にどんな相手でも、どんな逆境にも耐えられて、そこから解決策を導き出していける、想定されてないことでも対処できる、タフな集団になりたいね。精神的にも肉体的にも

―監督として貫いていきたいこと、これは譲れないことはありますか

 んー、自分らしくということかな。監督はこうあるべきというのは余り意識してなくて、自分だったらこうするなとか、そういうところだね

―キャプテンを務められていたときには、「謙虚」「モラル」「感謝」ということをおっしゃっていました

 あぁー、あれね(笑)。あれはね、学生が言うもんでね、僕が言うもんじゃないよね。東条がそういうの興味あったら、口にすればいいし、俺は言うつもりはないよ。大切だとは思うけど、それは上から言われてやることじゃないから

―最後に、ファンの方にメッセージをお願いします

 色々な変化があるだろうけど、その変化に一喜一憂せず。こっちとしては一喜一憂せず、ブレないタフな組織を作るので、見守ってください。そんな感じかな


<早大ラグビー蹴球部上井草グラウンド内体育館にて 新チームがスタートして>

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