INTERVIEW 山下監督インタビュー

鎖は、強固。鎖は、連鎖。鎖は、自在。鎖は、信頼。

細部にこだわり、「勝つ」ための連鎖を生む1年に

2018年に迎える創部100周年を前に、次のシーズンこそ何としても「荒ぶる」を…。2009年以降「大学日本一」の座から遠ざかるなか、打倒帝京大学を目指して監督に就任したのが、2002年度の優勝チームのキャプテンとしてチームをけん引した山下大悟だ。

「勝ち方を教えてほしい」。選手たちの必死の思いを受け止めた山下は、今の早稲田ラグビーをどのように変えて、チームを一戦必勝の集団へと変えていくのか。1年目に掛ける想いと戦略を語る。

―現状の早稲田ラグビーをどのように見ていますか?

 今、チームが抱える最も大きな問題は「勝つことへの感覚がない」ということです。早稲田大学ラグビー蹴球部が全国大学ラグビーフットボール選手権大会で最後に優勝したのは2009年1月。7シーズンも勝っていないと、「勝ち方」や「頑張り方」が分からなくなってきます。ただチームメンバーは、それぞれに「強くなりたい」「勝ちたい」「日本一になりたい」と言う想いをきちんと持っている。

ただ、頑張ろうという想いはあるのに、その頑張りをどう繋げていけばいいのかわからない。選手の心の持ち方や練習の方法、そしてそれを支えるチームの体制という意味でも。監督である自分の仕事は、その想いを1つに束ねて、しかるべき方向に導いて「勝利」をイメージさせてあげることです。

 

 そのために、まず明確な目標を提示することが必要になる。つまりはライバルを設定すること。それは当然(今の大学ラグビー界を見渡すと)帝京大学以外にない。では、来年の1月に彼らに勝つためには、選手はどう1年間を過ごして練習に取り組めばいいのか、そしてチームとしてどのように戦っていくべきなのか。今は自分たちの「強み」を構築する作業をしているところです。

昨年の早稲田は帝京に92点も取られた。ディフェンスが弱点と言わざるを得ない状況です。この部分を立て直し、今年はそれをさらに強みへと昇華させていきます。目指すのは、切っても切れない「鎖」のように強いディフェンスを作ること。「BE THE CHAIN」というチームのスローガンを打ち立て、この点を徹底していきます。

なぜなら帝京大学の選手たちは、個々の能力がものすごく高い。単純な腕っ節で勝負をしても恐らく勝てないでしょう。しかし、常に複数で敵に当たっていければ、決して負けることはない。今はこうしたディフェンシステムの再構築に、とにかく力を入れています。

選手の意識、環境の整備1つ1つにこだわりを

―チーム作りのために何を取り組んでいる?

チームを強くするにはまず、我々を取り巻く環境を1つ1つ整えることが大切です。そして、その1つ1つの質に徹底的にこだわろうと、選手、スタッフ全員に言っています。

まずは自分たちのチームの武器や弱点をしっかりと分析し、ライバル校と比較することから始めています。そしてフルタイムで働けるコーチングスタッフの体制も大切です。今までコーチは、週末スタッフとして多くのOBに頼んでいましたが、情報や意識の共有などの連携が上手くできていませんでした。そこで今年からは全員、チームのためにすべてを捧げてくれるフルタイムのコーチに就任してもらいました。

 

また組織を変えるには、まずは選手1人ひとりの意識から変えてゆく必要があります。これは冒頭でお話した「勝つ感覚を教える」という話にもつながります。例えば、ルールを教えるにしても、それがどうして「勝つことにつながっていくのか」という基盤となる意識が共有できなければ、いくら何を教えても意味がない。「自分が変わることで、どう勝ちにつながっていくのか」という意識を徹底して教えていくことが重要なのです。
そのために、先日から選手、学生スタッフも含めて全部員と個人面談をしています。選手の1つひとつの行動について細かく聞いています。トレーニング、リカバリー、ニュートリション全てに真摯に取り組み高いパフォーマンスを出せるのが早稲田の選手だと言い聞かせています。そのために彼らのグラウンド内外の行動1つひとつを把握しジャッジする。何が格好良くて、何が格好悪いか。そしてどういった行動が勝利につながっていくのかを教えてあげたい。勝利への意識を共有し、ギュッと固まって鎖のような強固な団結力と意志を持つチームにしたい。

 

今まで、早稲田のチームは1人ひとりが思い思いの場所にポツポツと立っているイメージでした。その1人1人を収める場所がなかったのです。彼らに対して、チームとしてつながる感覚を覚えさせる。基本的なことですが、地道に、こだわってやっていきたいと思っています。

それらを1つにまとめることで、「勝てる」チームの雰囲気を作るのだと思っています。それが、「チームの環境を整備する」ということにもつながるかなと。

新ジャージに込めた意味

―チームの強化以外にも、さまざまな取り組みをされています。

チームを強くするには、もう1つ大切なことがあります。それは、色々な人に応援してもらうことです。

私たち早稲田大学ラグビー部のミッションは、ラグビーを通じて、世の中の人に夢と希望と感動を与えること。自分たちが成長し、強豪と戦う姿を見てもらうことで、世の中の人に何かを感じてほしい。そのためにはチームを「魅せる」ことも大切だと思っています。

例えば、特に学生や若い人に関心を持ってもらうことは大切です。「応援したくても応援の仕方がわからない」と思っている人のために、クラウドファンディングも考えています。ファンの想いを1つに束ねて、一丸となって盛り上がることで「おらがチーム」という気持ちをもっていただければなと。

 

早稲田大学ラグビー蹴球部のプライドでもある赤黒のジャージは、ファンの方々に私たちの存在感を示す1つのシンボルでもありますが、今回、世界的に高い評価を得ているデザインオフィス「nendo(ネンド)」のみなさんにデザインをお願いしたことによって、ジャージのデザインは大きく変わりました。

戦う上での機能性を追求し、さらには選手を強く見せる工夫がされています。脇の部分には「V」の模様を取り入れているのですが、これには仕掛けがありまして、お互いが肩を組み密着したときにジャージの「V」が組み合わさり、早稲田の「W」を浮き上がるのです。私たちの想いを取り入れてもらい、身に纏うだけで特別な思いで戦える。自然とチームの連帯を意識させる。さらにはファンの皆さんにも楽しんでもらえる。そんなデザインになりました。

このユニフォームをはじめ、nendoのみなさんと協力して多くのファンに愛されるような「魅せ方」にもこだわっていきます。これは、世間に対して「早稲田大学ラグビー蹴球部が変わった」と伝えるきっかけにもなるでしょう。

よくこうした取り組みをすることで「変えることに怖さはないのか」と聞かれることもあります。ただ、早稲田大学ラグビー蹴球部の100年は、挑戦の歴史でした。さまざまなことを変えながら、自分たちにしかできないことをずっと模索してきたのです。その繰り返しで今日までやってきたので、変わることに対する怖さはあまりないですね。

「スポーツとデザインを掛け合わせる監督は珍しい」とよく言われますが、僕は、洗練された空間だったり音楽だったり、そして今回のユニフォームのデザインのような「ソフト・パワー」の力を信じています。例えば、良い音楽を聴くと気分も良くなるし、人生も豊かになりますよね。今回も、スポーツ×デザインというソフト・パワーの掛け合わせで、より素晴らしいものが出来上がるだろうと考えています。もちろんそのためには、選手たちの成長は欠かせないと思っています。

選手をはじめとした周囲のスタッフやそれを支えてくれる専門家、そしてOBやファンの皆さんとが1つにつながって強いチームへと生まれ変わる。そんな連帯の仕組みを作っていく1年にしたいとも考えています。

WASEDA RUGBY 早稲田大学ラグビー蹴球部
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