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Beat Up

2024

1年早慶戦観戦記

 ぶつかり合うプライド。目まぐるしく動くスコア。早慶の歴史に残る『大乱打戦』に、土埃舞う慶大の聖地・日吉グラウンドは異様な雰囲気に包まれた。
 「FWもBKもタックルにいかな過ぎ」(清宮監督)、「A、B、Cも大勝したし、自分たちもやれるだろうという甘えがあった」(ゲームキャプテン・矢富勇毅)と言う様に、前半のワセダはいいところまったくなし。4連続を含む5トライを献上し、7-27と大量リードを奪われた。引き裂かれるディフェンスラインに、度重なるミス。今季最大のビハインドがヤングワセダに重く圧し掛かった。
 しかし、「自分たちの今できることを清宮さんに教えてもらった」(矢富)という後半に入ると状況が一変。SH三井大祐、FB矢富の配置転換もピタリとはまり、怒涛の反撃を開始した。
 前半の拙攻がウソのように、1分(WTB巴山儀彦)、4分(FB矢富勇毅)、8分(WTB首藤甲子郎)と電光石火の3連続トライ(26-27)。Aチーム顔負けのトライラッシュで、逆転も時間の問題かと思われた。
 ところがどっこい、ここからが本当の『乱打戦』。早慶の意地を賭けた、近年稀に見る壮絶なトライ合戦が展開された。
 ラックのこぼれ球、キックチャージから2トライを奪われると(26-39)、直後のキックオフからFB矢富がすぐさまお返し(33-39)。更にはSO曽我部佳憲、CTB今村雄太、WTB首藤甲子郎の「F1バックス」によるノーホイッスルトライで、この試合初めてのリード(40-39)を奪った。
 やっとの思いで奪った初めてのリードに気が緩んだのか、それとも若さか、この後一瞬のスキを突かれまさかの2連続トライを献上。残り10分を切ったところで再び11点ものリードを奪われた(40-51)。余りにも絶望的な失点、強烈なアウェーのプレッシャー。今シーズン初めて、『敗北』の2文字がちらつき始めた。絶体絶命…。
 しかし、こんな苦しい状況でこそ、力を発揮するのが百戦錬磨・啓光学園出身のHB団。全国大会2連覇。もっとも勝ち方を知るふたりが沈みかけたチームを甦らせた。まずは34分、SH三井が素早い球捌きでFB矢富の独走トライを演出すると(45-51)、土壇場38分には相棒が放つドンピシャのパスを受けたSO曽我部が、敵将も唸る華麗な個人技で歓喜の逆転トライ(52-51)。貫禄のプレーで、もつれにもつれたシーソーゲームにケリを付けた。
 自らを上回る9トライを奪われながら掴んだ薄氷の勝利。ディフェンス網を切り裂かれ、泥に塗れながら、そのプライドだけは守り抜いた。<HP委員 疋田拡>

<マルチプレーヤーぶりを如何なく発揮したゲームキャプテン・矢富勇毅>
「今日は本当にしんどかったです。相手が慶大だということは意識したつもりでしたけど、先輩たちほど気持ちが入ってなかったかもしれません。A、B、Cも大勝していたし、自分たちもやれるだろうという甘えがあった。そこで相手の勢いにやられてしまった。ハーフタイムに清宮さんから今自分たちのできることを教えてもらってから、うまく対応できたと思う。自分たちの武器はBKだからそこで勝負しようと。ディフェンスもできることをやった。途中からFBに移ったけれど、高校時代から色々なポジションを経験して、こういうのにも慣れていたので、別に違和感なくできた。最後はとにかくトライ取って勝ってくれと。とにかく勝ててほっとした。自分は一般的なSHより大きいと思うし、抜くことを得意としているので、9人目のFWの仕事もできて、パスも捌けるSHになっていきたいし、タックルにもどんどんいきたい。当面の目標は翔太さんにすべてにおいて追いつくことと、体を大きくして、どのポジションでもこなせるマルチプレーヤーになることです。これからも清宮さんに行けと言われたポジションでどんどんいきます!」