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2024

対帝京大戦・観戦記

 11月8日、「立冬」。対抗戦の大一番、対帝京大。冬の訪れとともに、『大田尾ワセダ』がその真価を発揮した。
 キックオフから僅か1分、軽快な『継続』から『キング』曽我部佳憲(1年、CTB)が華麗にノーホイッスルトライを決めたものの、その後はディフェンスの連携ミス、自らのアタックの稚拙さから一進一退の激しい攻防。「ひとりひとりは相当強かった…」(フッカー青木佑輔)。ブレイクダウンでも後手を踏み、取りつ取られつの我慢の展開を強いられた。
 しかし、前半終了間際にフランカー松本允(2年)がペナルティーからの素早い仕掛けで逆転となるトライを挙げると(21-19)、後半は一気にギアチェンジ。「一旦落ち着かせてから、ゲームを動かす」…。思惑通りの試合運びで、怒涛のトライラッシュを展開した。
 まずは8分、勝負どころを嫌と言うほど知り尽くす、負けない男・NO8佐々木隆道(2年)が50メートル独走トライ(曽我部のトライでリードを9点にした直後、SH後藤翔太、フランカー川上力也の芸術的な連続オフロードパスから相手BK陣を一閃)で口火を切ると、プロップ伊藤雄大(3年)、SH後藤翔太(3年)らアスリートが気持ちよくインゴールへダイブ。激しいブレイクダウン、巧みな『揺さぶり』、そして決定力…。『2003年度版ワセダアタック』を存分に発揮し、難敵・帝京大に力の差を見せ付けた。
 そしてこの試合を語る上で欠かせないのが、負傷した同僚・首藤甲子郎に替わり出場した矢富勇毅(1年)の非凡なセンス。ぶっつけ本番のWTBながら、「あいつはすごい、決定力もあるし、あんな奴がいると楽」と主将・大田尾もうなるプレーの連続で、「代役」の域を遥かに超える活躍を見せた。まさにユーティリティー、驚愕のラグビーセンス。シーズン佳境を目の前に、またひとりニューヒーローが現れた。
 「これで一皮剥けたと思うよ」(清宮監督)と言うように、チームの雰囲気も急上昇。次戦はいよいよ『早慶戦』。「死ぬ気で飛ばしていきますよ…」(副将・川上力也)。誇り高き赤黒軍団が、手負いの虎の息の根を止める…<HP委員 疋田拡>

<第一関門突破に満足気な表情を浮かべた清宮監督>
「前半あの点差で終えて、突き放さなければいけない状況で、チームがその通りの結果を出せたことが嬉しい。いいところもあったけれど、もちろん悪いところもたくさんあった。その点はコーチ陣と修正していきたい。まずは第一関門でこういう結果が出せて満足している。帝京の前半のジャージー(流行のピチピチジャージー、協会から指摘を受け、ハーフタイムで交換)は強かったね(笑)。掴むにいった奴はほとんど外されていたし。前半はとにかくディフェンスが芯に入れてなかった。後半はブレイクダウンでの体の使い方、ボールの置き方などを指示した。前半は4回くらいターンオーバーされたけれど、後半はほとんどなかったと思う。トライも指示したところで取れた。雄大はまだまだ。スクラムでは勝っていたけれど、レフリーに注意されてから崩せなくなった。本当はもっといける。矢富はセンス抜群。最後の相手にタックルしながら、ボールにも手をかけたあのプレーは最高」

<冷静なゲームメイクを見せた主将・大田尾竜彦>
「帝京は今までの相手より強いことは分かっていた。その割には点数が取れたと思う。1年生がノビノビとプレーして、思い切りのよさが出たのはよかった。空くところは分かっていたし、後半は相手の穴をうまく攻めることができたと思う。修正しなくてはいけないのはディフェンス。1対1で食い込まれてしまったし、コミュニケーションが足りずにピンチを招いてしまう場面があった。相手のジャージーは僕は掴みにいった記憶がないので、何も感じなかったけど、掴みにいった奴は外されて大変だったみたいです(笑)。矢富のあのセンスはすごい。決定力もあるし、あんな奴がいると楽。次もいいゲームして勝ちます」

<ハードタックル、スイープを連発した副将・川上力也>
「点差はまあどうでも。途中で相手も切れた感じですし。点差に関しては何とも。前半は接点のひとりひとりが前に出なくてはいけないところで、押されてしまった。いい球が出たときはゲインできていたのに、それを連続してできなかった。そこがすべて。後半は相手の疲れもあったのだろうけど、修正できたと思う。突破力のある選手がガンガンきて、一発で仕留められない場面もあったけれど、しつこく止めていれば、最終的には抑えられるので、脅威には感じなかった。でも、これからはもっとひとりひとりのディフェンス力を上げることが必要だと思う。大きい相手にはいいタックルをしなければ、ターンオーバーにつながらないので、とにかくいいタックルをできるように。傍から見たら、チームは仕上がってきたように感じるかもしれないですけど、僕はまだまだ伸びシロがあると思っている。またまだいきますよ。これからの早慶戦、早明戦は力関係は関係ない。とにかく激しい試合になると思うので、練習の段階から高いテンションを保って、後先考えずに死ぬ気で思い切り飛ばしていく」

<会心の50メートル独走トライを決めたNO8佐々木隆道>
「今日はチームとしては通過点だったけど、個人的には夏の試合でケガをしてしまったので、そのリベンジマッチ。大学選手権決勝くらいのテンションで試合に臨んだ。いいプレーができたかは微妙ですけど…。(後半8分の)あのトライは会心のトライです。競っていたし、気持ちも入っていたので、思わずボールを投げてしまいました。投げた瞬間、やっちゃったという感じです(笑)。ちょっと反省しています。前半は相手に威圧感があったというか、パワーに押されてしまった。ブレイクダウンも強くて激しかった。後半は前半からやってきたことを継続しただけですよ。修正できたというのもあるんでしょうけど、相手がバテたんだと思います。前半のトライも個人のタックルミスだし、まだまだタックルが甘い。関東、メイジにはこれではやられてしまうので、もっとお互いが厳しく指摘できるような環境を作っていきたい。もちろん早慶戦も勝ちますよ」

<見事なトライにスクラムで会場を沸かせに沸かせたプロップ伊藤雄大>
「トライの場面は、来い来い!ってボールが来るまではしゃいでしまいました(笑)。まあトライはクールでしたけど(笑)。展開していく中であそこが空くのが見えていたので、取る自信ありましたよ。タツヒコー、タツヒコーって叫びまくりました。あれでパスが来なかったらもう竜彦さんにはついていかないところでしたよ(笑)。スクラムはまだまだですね。もっと押せたと思いますけど、レフリーとの解釈が合わない面もあって。やっぱり久我山3人で組むのはやりやすいですよ。何かあったときに言いやすいですし。早慶戦、早明戦ではすべてのプレーで、いやいや、スクラムで沸かせます!」

<慣れないWTBでの出場ながら、非凡なセンスを発揮した矢富勇毅>
「後半からいきなりWTBでいけと言われて、かなりドキドキしました(笑)。おいおい、できんのかって。最近はずっとSHの練習しかしていなかったので。WTBは入部式の新歓試合以来ですから。でも高校の時はWTBでも出てたんですよ。国体はWTBで出て、大阪戦ではFBを抜きまくって3トライしましたし。その時の大阪のFBは曽我部なんですけどね(笑←隣で曽我部がちょっと淋しそう…)。今日はアタックはよかったと思うんですけど、ディフェンスで1本抜かれてしまったので反省してます。このメンバーの中にポンと入るのは多少違和感ありましたけど、自分はそういうプレーヤーなので。最近抜きにいくプレーをしていなかったんですけど、竜彦さんにドンドンいけと言われて、思い切りできました。トライはよかったです。どんなポジションであれ、魅せていかないとこれから使ってもらえなくなりますから。今日の試合は自信になりました。このレベルでもついていけるなと。これからはウェイトをもっとして、体を大きくして、本当にどのポジションでもいけるプレーヤーになっていきたいです。最後のプレーはその前に抜かれた罪滅ぼしのつもりで必死でした(笑)」