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2024
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清宮監督・佐々木隆道、未知なる世界を語る―

 『佐々木組』未知なる世界へ―。史上最強『佐々木組』は東芝戦へ向けた練習を2月14日より再開(トヨタ戦の興奮冷めやらぬ中迎えたバレンタインは悲喜交々???)。5年目の集大成・清宮監督の下、ワセダは日本一を目指し、再び走り始めました。

 週明け最初の練習となった昨日は、ミーティングも交え、戦い方やそれぞれのイメージを統一。そして2日目の今日は、清宮ワセダの屋台骨・あの伊藤雄大を練習相手として招き、スクラムを組み込みました。「まず大前提はスクラム」と清宮監督も言うように、東芝戦でもここが一番の勝負どころです。そう、ラグビー=スクラムの格言はいつだって不変。この日も密度の濃い練習で、また新たな手応えをつかむことができました。

 清宮ワセダのスクラムを作り上げた男・伊藤雄大の言葉には説得力、実感、ワセダの伝統がギッシリと詰まっています。「ワセダのスクラムはかなり強くなっていてビックリした。特に前田の成長率はハンパじゃない。トヨタ戦は嬉しい半面、心の中で2割くらい複雑な思いがあったけど、今日でその2割もなくなった。東芝戦は絶対に勝って欲しい。スクラムでやれれば、おもしろい試合になる」―。もうこの言葉に余計な説明はいりません。この一体感がワセダの強さです。

 さぁ、いくぜリアル日本選手権。『佐々木組』は本気で東芝に勝ちに行きます―



 2月15日の練習後、清宮監督、佐々木主将に東芝戦への思いを聞きました。まずは清宮監督の熱き想いを


―打倒・トップリーグを果たし、次は東芝戦が待ち受けていますが、今はどんな心持ですか

清宮:んー、まぁ圧倒的にトップリーグでも強いチームだからね。トヨタ戦も学生がトップリーグに勝つという夢への挑戦だったけれど、今度は本当に頂点に対するチャレンジだよね。選手たちには、1番大切なのはトヨタに勝ったワセダであるということ、連覇した、ただの学生チャンピオンのワセダじゃないんだ、という話をしたかな。そこには東芝といい試合をしなくてはいけない責任がある

―やはり期待感が大きいですか

清宮:そうだね。本当に楽しみだよ

―改めて、トヨタ戦はワセダにとってどういう試合だったのでしょうか

清宮:ワセダというより、ラグビーにとって大きな意味のある試合だったよね。個の力で劣るチームが、チームの力でその相手を破ったというところに

―普通に戦っているようにも感じましたが、やはり個の力では劣っていたと

清宮:そりゃ劣ってましたよ。体格差はかなりあった。特にあのFWバックファイブのデカさはハンパないからね

―バックファイブといえば、NZ協会のサイト内、スーパー14ブルーズのトピックスに「Flavell makes early return」と題した記事が掲載され、「TOYOTAがWASEDA UNIVERSITYに敗れたことでフラベルが思いのほか早く帰ってくる」と書いてありました。NZ協会のサイトにしっかりと記された『WASEDA UNIVERSITY』の文字、28-24と結果まで載っていました。何かすごいことのような気もします

清宮:本当?、ということはヘンリー(NZ代表監督を務める超名将。清宮さんの主将時、そして4年前と臨時コーチとしてワセダに!)も今回の結果を知ってるということかな(笑)。だとしたら嬉しいね

―やはりトヨタ戦で一番大きかったのは、スクラムということになるのでしょうか

清宮:そうね、まずはスクラムだろうな。そこがすべてのプレーに自信をつけたという感じだったよね

―あの最後の10分、清宮さんはどういった思いで戦況を見つめていたのでしょうか

清宮:最後の10分?(笑)、もう観客と一緒かな…。見ている人と同じ気持ち。あんな気持ちで試合を見たのは、監督になって初めてだったよ(笑)

―昨日から東芝戦に向けた練習を再開しましたが、やはりあの試合でワセダはひと回り大きくなったと感じたりするものでしょか?

清宮:そりゃそうですよ。あの経験をした選手たちが以前と同じはずがないからね。その力は計り知れないものがあるよ

―ワセダにとって何物にも変えがたい大きな試合だったと

清宮:そうだね。ワセダの今後ということで言うと、あの準備、あの経験をした下級生たちが、来年以降、あの準備、あの気持ちになれれば、3連覇、4連覇は間違いないと思える。そういう財産をワセダにもたらした大きな試合だったと思うよ。そしてさっきも言ったように、ラグビーということで言えば、力の劣る者が強い者に勝つ。あのラスト5分、10分の攻防というのはラグビー以外ではないものでしょ。ラグビーはタックルして相手を止めるスポーツ。もちろんサッカーにも、1:0とか同じような緊張感があるけれど、サッカーの場合はスペースを埋めるだとか、チェックをしたりで、直接のコンタクトはない。そういった意味でも、トヨタ戦のあの最後の攻防はラグビーの醍醐味が詰まったものだったと思うわけですよ。例えばラグビーは好きだけれど、今回はテレビでいいやと思った人も、あれを見たらあぁスタンドにいけばよかったって思うはずなんだよね。だからラグビーにとっても、色々な意味を持つ試合だったなと

―学生たちのコンディションはいかがですか。トップリーグとの連戦はもちろん初めての経験になります

清宮:思っていたよりというか、ほとんどダメージがない状態なんだよね。だから東芝戦もいい状態で臨めるよ

―東芝戦はどういった認識で臨まれるのでしょうか。トヨタ戦はかなりの自信を持って戦えました

清宮:まず大前提はスクラムから始まるよね。そこはトヨタ戦と一緒かな。スクラム、ラインアウトがポイントになるのは変わらない。そういった意味では、今日はいいスクラム練習ができたよ

―ワセダとしてはどういう試合を

清宮:やっぱりひとつひとつのプレーへの拘りとか、そのプレーの持つ意味とか、ひとつひとつのプレーに気持ちを込めることだよね。そういったプレーが1分、5分、10分と続いて、体と心と頭が切れることなく、時間を積み重ねていく。そういうイメージかな。それができれば東芝とも十分に戦えるよ

―日本最強と称される東芝のイメージはいかがですか

清宮:FWの力強さと仕事量というのが、まずイメージとしてあるよね。それに15人のゲーム理解度。これはズバ抜けている。そしてBKにマクラウド。ここでしょ

―戦い方のイメージはかなり描けているのでしょうか

清宮:イメージはできあがったけど、いかにそれを切れることなく積み重ねられるかだよね

―10月には東芝Bに大敗しました

清宮:まぁ、あの時とはワセダが違うからね。あのときを参考にしてもらっては困るな(笑)。戦えるという手応えは持っているよ

―対東芝、日本選手権といえば、88年のあの試合です。清宮さんにとってあの試合はどういうものなのでしょうか。当時は20歳のNO8です

清宮:88年のあの試合は…、それこそ準備も何もなかったんだよね。期間もなくて。あの試合は俺自身がトライにつながるビッグプレー(あのスーパーパスは今でも語り草です。コーチ陣はいつでもこの話題で盛り上がれます…)をしたこともあって、よく覚えてはいるけど、まぁ今とはまったく状況が違うからね、お互いに

―トヨタ戦では『極限の静寂と大歓声』という言葉を使いました。次の東芝戦はどういった言葉で表現されますか

清宮:次は何だろうなぁ…、大きな壁を乗り越えた男たちがどんな結果を出すのか。んー、未知への挑戦というか、そういうイメージだよね。やっている本人たちも気がつかない、分からない力がグラウンドに出てくる。そんな視点で選手たちのプレーを見て頂ければという感じかな。80分、これ以上すばらしいドラマはないでしょ

―最後に、ワセダが東芝に勝っているものは…

清宮:今言ったその未知の力、そこだよね。そこは勝ってますよ。東芝戦の満員の大観衆を期待しています

<早大ラグビー蹴球部寮内監督部屋にて 日本選手権準決勝を前に>



 続いて佐々木隆道の本気を…

―いよいよ次は東芝との決戦だけど、今はどういった心持?

隆道:んー、まぁ今は東芝に勝つことしか考えていないです

―昨年は「もし東芝とやることになったら棄権か」とかいう声も出てくるくらいだったけど、今年はそんな気持ちまったくないでしょ

隆道:全然ないですね。恐怖心もないですし、今は楽しみで仕方ないです。今ワセダが、そして自分がどのくらいのレベルにあるのか、ワセダが全部の力を出したらどのくらいやれるのか、勝てるのか。未知の世界なので、本当にワクワクしています

―昨日から練習を再開したけど、チームの雰囲気とかどう?清宮さんは「あの経験をした奴らが以前と同じはずがない」って

隆道:んー、そこは自分たちではよく分からないですけど(笑)。ただ勝ちたいという気持ちはどこにも負けてないですし、東芝戦も勝ってやろうってみんな本気で思ってますよ。トヨタ戦で燃え尽きた感もまったくないです

―そのトヨタ戦、改めて振り返ってみると

隆道:大体思惑どおりに進んだ試合でしたね。最後はああいう形になるとも思ってましたし、最初のコンタクトで勝てると確信しましたから。ああいう状態でも、試合のことはすごくよく覚えてます

―コンディションはどう?初めてのトップリーグとの連戦になるけど

隆道:いやっ、全然疲れてないです。体も動くし、筋疲労もないですし。ちょっと走り疲れた感じはありましたけど、大丈夫です。心の糸もまったく切れてないですし

―東芝戦はどういったどういった心持で。『荒ぶる』も勝ち取って、その後の打倒・トップリーグも果たして臨む試合

隆道:まだこのチームでラグビーがしたいという思いですよね。この最高の環境でもっともっと長くラグビーがしたいし、今は本当に自分にとって幸せな時間を過ごしているんですよ。だからこの時間を終わらせたくない。そういう気持ちです

―『佐々木組』としてどんな試合を

隆道:やっぱりひたむきにドンドン前に出て、相手の嫌がるようなプレーをすることですね。それを続けられれば、絶対に勝てると思ってます。ポイントはそこです。いかにひたむきに激しくできるか

―10月のあの対戦はやっぱり今でも深く心に刻まれているもの?

隆道:そんなには残っていないですけど、ここまで来る上ではあの試合は絶対に外せないものでしたよね。あの敗戦からみんなの意識が変わりましたから。ワセダが変わることができたいい試合。あの試合こそ、僕の言ってきた意味のある負けです

―学生チャンピオンというだけでなく、トヨタに勝ったワセダという自信も持って

隆道:元々自信はありますからね(笑)。それにワセダはどこにも負けてはいけないと言い続けてきましたし。今は、ワセダだったら何でもできるような気がするんですよ…

―ワセダが東芝に勝っているものって何?

隆道:頭とハートとフィットネス。あとは部員の想いと熱さです

―部員の想いと熱さといえば、選手権優勝後に4年生みんなで話した「ワセダとして伝えていかなくてはいけないもの」、しっかり実行できてる?

隆道:実行できていると思いますよ。いい感じに。こうして勝ち残っていることでも下につなげられているでしょうし、トヨタ戦を見て、後輩たちもあの舞台に立ちたいと思ったでしょうし、ワセダとしてやるべきプレーはこうなんだ、こうするとワセダは勝てるんだと分かったでしょうから。それだけでも大きいと思います。別に伏見を伝えなくてもいいんですよ。ワセダの芯を継承していけばいいんです。東芝戦でももちろん、そういったものを見せるつもりです

―では最後に東芝戦へ向けた誓い、ファンの方へのメッセージを

隆道:誓いということでは、ワセダとして試合に臨む以上、自分としてもチームとしても、絶対に結果を出します。ああいった雰囲気の中でプレーできるのはファンの方のおかげですし、自分たちもすごく幸せに感じています。一緒に日本のラグビーを盛り上げていきましょう。そして東芝戦でまた何かを一緒に感じてもらえればと思っています。東芝に対してももちろん、残りの試合全部勝つつもりですし、そういうことができるチームがワセダです

―目指すは日本一。どうしてもつきまとう「学生だから」って前提は関係ないってことですよね

隆道:そういう目では見ないで欲しいです。世間の目はトップリーグが上、まぁどう考えてもそうなんですけど、自分たちは違う。そんなところは見ていない。本気で日本一を目指しますので、応援よろしくお願いします

<早大ラグビー蹴球部寮内主将部屋にて 日本選手権準決勝を前に>