早稲田大学ラグビー蹴球部WASEDA UNIVERSITY RUGBY FOOTBALL CLUB OFFICIAL WEBSITE

Beat Up

2024
  • SpoLive

対九州電力 激動の1年 『東条組』涙のラストマッチ


 そのいつまでも止むことのない温かな拍手は胸に沁みた。選手の誰もが心を打たれた。ミッション:『ラグビーを通じて夢と希望、感動を与える』―。完遂できたと胸を張れるようなラグビーではなかったが、秩父宮の空気はどこまでも温かかった。『東条組』への愛がヒシヒシと伝わってきた。こんなに幸せなチームが他にあるだろうか…。だからこそ、その熱を感じたからこそ、より一層思いを強くした。「ワセダは勝たなくてはならない」、「魂を揺さぶる試合をしなくてはならない」、「見ている人の人生観を変える試合をしなくてはならない」と―
 例年よりちょっぴり早く訪れてしまった『東条組』ラストマッチ。その80分は、まさにこの苦悩の1年を凝縮したような時間だった。「このチームの真価が問われる舞台」、「ワセダの強さをみんなに見せよう」、「俺たちはまだ死んでない。胸を張って前を向こう」…。誰もが確固たる意志を抱いていた。このままでは終われないと思っていた。しかし…、いざ試合が始まれば、ブレイクダウンは甘く、ディフェンスの淡白さも消し去ることができず、その厳しさを痛感させられた。0-5 → 12-12 → 12-22 → 26-22 → 26-29 → 26-36…。勝つチャンスはいくらでもあった。というより、勝たなくてはいけない試合だった。が、ここぞで続出するミス(あのパスが通っていれば…、逆転後のキックオフ、その直後のペナルティがなければ…)、緩さに芯のなさ…。いいチームたりえても、ワセダは勝てるチームたりえなかった。関東とのすべてを懸けた決勝も、そしてこの日も、勝てなかった結果がすべて。悔しいけれど、この1年の歩みがそのままグラウンドで表れた。あの勝負強さ、勝ちきる力、ワセダらしさはどこへ、なぜ失われてしまったのか。「グラウンドで結果を出せなかったのは、ワセダの力がなかったということです。終わったことを悔いても仕方ないですけど…。今年は自分たちの強みを見つけて、それを徹底することができなかったのが敗因であり、足りなかったところ。FWはシーズンの経過とともによくなってきたし、BKの決定力も上がったけれど、じゃあそれらをどうするか徹底することができなかった。ディフェンスにしても、春からやってきたことが最後は疎かになってしまったところがあった。徹底、です…」(主将・東条雄介)。
 今村雄太、首藤甲子郎『スターバックス』によるトライの競演(すごいの一言。カウンターからだけでなく、セットから生かせていればもっと…)、菅野朋幸の魂(もうスーパーです)、笠原歩のほとばしる熱。この日も見せ場は多々あった。そこにはたしかに『東条組』の息吹が感じられた。でも、それでも敢えて『レジェンド』の一翼、『男』・松本允は口にした。「決勝戦を見ていてタックルが甘かったし、ブレイクダウンも甘かったので、今日はその厳しさを自分が見せてやろうって。タックルは上にいくし、ダブルでもいかない。球際の強さもない。そういったワセダらしさが失われてしまっていると感じてました。自分のプレーを見て、後輩たちが何かを感じてくれていたらいいなと。強いワセダ、期待してます」…。笑顔でこそあったものの、愛のある、その言葉は重かった。「今日の負けがあるから次またがんばれる。この負けがあるから次がある」、そういう試合であったのか…。
 すべてが変わり、まさに激動だったこの1年。『東条組』には、楽しくも苦しいことがたくさんあった。近年でもっとも悩み、苦しみ、もがいたであろう才気溢れる男たち。その歩みには心からの敬意を払わずにはいられない。「4年生に対する思いは話始めたら切りがない。3年間ずっと一緒に生活してきて、ラグビーでも、人としても迷惑を掛けてしまうこともあった。今はただ感謝と申し訳ないという気持ちでいっぱいです」(権丈太郎)、「自分が変わるキッカケをくれた1年。来年はそのキッカケをしっかりと自分のものにできるように、変われるようにやっていきたい」(五郎丸歩)…。4年生にはもうこの時間は戻ってこない。されど、ワセダとしてこの1年を絶対に無駄にしてはならない。そのためにも、それぞれが覚悟を持って本当に変わらなければならない。フィジカルがもっと強く、コンタクトがもっと激しく、痛くて逞しいFWを。通り一辺倒ではない、より精度の高いBKを。そして何よりブレない、ガッチリと芯の通ったチームを。ワセダの時計の針は止まらない。まず『東条組』に、最大級の労いと感謝を。ありがとう『東条組』。そして、ワセダ新時代へ―


<学生への感謝 土台の再構築の必要性を強く認識する中竹監督>
「今日は早い仕掛けを思っていたけれど、ブレイクダウンのところで負けてしまい、ターンオーバーからやられてしまった。そこが1番の敗因。矢富も徹底マークされていて、いけそうな局面でも2、3人ディフェンスがいて、うまく攻めることができなかった。今日試合に臨むにあたって未知数だったのは、FBのミラーが出てきた点。グレイ、ミラーのふたりが出た試合の情報はほとんどなくて、対策をうまく立てることができなかった(それでもビデオはいくつかありチェックはしましたが…)。カウンターあり、キックありで、受けに回ってしまった。(それでも勝てる試合だったのではないかの問いに)勝てる試合だったとかは言いたくない。ラグビーは結果がすべて。そこは単純にうちに力がなかったというだけです…。来季のことは考えていなかったので、次に繋がる~とかそういった視点では見ていなかったけれど、それに関係なく、今年のチームが残してくれたいいものは継続していきたい。ブレイクダウンの修正力であったり、セービングであったり。特にセービングに関しては、目の覚めるようなものがいくつもあったし、本当に指先まで集中したプレーもあった。その点は学生をほめてあげたい。ディフェンスでもいいターンオーバーがあった。体が小さくてもやれるというところも見せられた。そういったところは残していきたい。決勝でも今日の試合でも、今シーズンはあらゆる部分で徹底できていないところがあった。ディフェンディングラグビーを掲げてきて、いいラグビーができているところはあっても、ふと穴のある時間があったり…。そういったところをなくすことができなかった。根本的な土台をもっと厚くしないといけないと強く感じた。個の倒れない強さ、力、意識。全員で揃って出る。そのベースを今一度徹底しないといけない。学生にはありがとうと言いたい」


<改めて中竹監督、仲間への感謝を口にする主将・東条雄介>
「試合に関しては中竹さんの言われたとおり。ブレイクダウンが劣勢になってしまい、いい球を出せなかったのが敗因です。一方で、カウンターから外に仕掛けるラグビーだったり、ラインアウトもある程度修正できたところだったり、自分たちらしさというのも出せたところもあったかなと。今日は単純に力の差で負けた。そういった感じです。(大学選手権後のモチベーションについて問われ)日本選手権前は僕自身もみんなと練習することができなかったし、彰友もいない、さらにテストで練習にメンバーが揃わない。そういったことが重なってしまいましたけど、それは言い訳にすぎないですから…。グラウンドで結果を出せなかったのは、ワセダの力がなかったということです。僕自身としては、本当に何もできずに終わってしまい、最後までみんなに迷惑を掛けてしまったなと…。今日は決勝で痛めていたところではなく、右足付け根の関節がずれてしまった感じで…、力が入らない状態だったので、笠原に出てもらった方がいいと思い、交替しました。もう赤黒を着て試合をすることがないと思うと、ものすごく寂しいです。終わったことを悔いても仕方ないですけど…。後輩たちにはとにかくがんばって欲しい。今年は自分たちの強みを見つけて、それを徹底することができなかったのが敗因であり、足りなかったところ。FWはシーズンの経過とともによくなってきたし、BKの決定力も上がったけれど、じゃあそれらをどうするか徹底することができなかった。ディフェンスにしても、春からやってきたことが最後は疎かになってしまったところがあった。そういったところを徹底しないといけないと思う。この同期とずっと一緒にやってこれてすごく楽しかったし、この仲間は永遠、本当に感謝してます。自分たちのプレーを見て、後輩たちが少しでも何か感じてくれていたらと。大学選手権、日本選手権で勝てなかったことは一生忘れられないものなので、後輩たちには何としても勝って欲しい。勝つための日々を過ごして欲しい。ワセダが勝つことでラグビー界も盛り上がるし、今日もこれだけの方が応援してくださるのは本当に素晴らしいこと。その期待に応えるためにも強いワセダを作って欲しい。体制が変わったり、自分はケガばかりだったり、色々とありましたけど、この仲間と戦えたのは本当に大きなことだし、これからの支えになると思う。中竹さんに出会うことが本当によかった。中竹さんに出会えてなかったら、指導を受けてなかったら、ここまで大人のチームにはなれなかった。本当に感謝しています」


<同じく感謝の言葉を口にする副将・首藤甲子郎>

「何かあっと言う間でした…。このチームが始まったのはついこの間のような感じで…。今日も手応えはあったんですけど、チャンスでボールキャリアの寝方が悪かったり、ここぞのところでリズムが出ず、チャンスを生かせず、取りきることができなかった。あとは自分のディフェンスです…(セットからミラーに取られて場面、決め事があったのですが…)。もっとコミュニケーションが取れていれば、その後逆転できてましたから。負けて悔いの残らないことはないです。今更後悔しても仕方ないんですけど…。自分は結局最後しか出ることはできなかったけれど、4年生はひとりひとりがんばってくれたし、後輩もそれについてきてくれたからここまでこれた。みんなには本当に感謝です。決勝にしても今日にしても、最後のところの詰め、最後のところの集中力で負けたんだと思います。後輩たち、特に3年生はずっと一緒にやってきて、リーダーシップのある奴、トップに立てる奴がたくさんいるので、心配してないです。いかにうまくまとまれるか。トップリーグにも勝てる奴ら。がんばって欲しいです。終わってみたらアッという間でしたけど、本当に楽しかったです。苦労した分、絶対に返ってくると思いますし、ラグビーもそれ以外も本当に楽しかった。感謝の気持ちでいっぱいです。吉永さん、何で出てこなかったんですか…。トップリーグで倒します!ワセダとは…、絶対にやりたくないです(笑)」


<ワセダでラグビーができた喜びを噛み締めるSH矢富勇毅>

「やっぱり負けるのはどんな試合でも悔しいです…。もっともっとこのチームでラグビーがしたかった…。今日はもうそういう気持ちだけでやってました。やっぱり負けた試合というのは、取る方も取られる方も、大事な局面でミスしていたなと。今年はそういうところに尽きると思う。決勝も、今日もそこで負けた。結果は出なかったけれど、中竹さんが監督で本当によかったですし、色々なところで成長させてもらいました。この仲間、このスタッフ、みんなに感謝です。後輩たちにはもう二度とこんなに悔しい思いをして欲しくないし、そのために1日1日を大切にして欲しい。自分ではすごくやったと思っていても、それでも結果が出ないこともある。そういった恐怖ともまた戦いながら、『荒ぶる』、そして打倒トップリーグを成し遂げて欲しい。ワセダでの4年間が終わってしまうのは寂しすぎます…。悲しいです…。ファンの方のありがとう、がんばったねの声を聞いて、ワセダでラグビーができたことに本当に感謝です。そしてわがままをたくさん聞いてくれ、いつでも自分を支えてくれた両親にも、最後に感謝の言葉を言いたいです。本当にありがとうございました」


<ワセダの魂!最後の最後まで輝きを放ち続けたWTB菅野朋幸>
「本当に終わってしまったんだなって…。実感がないというか、今はうまく言葉にできないです。今日も九電相手に全然勝負できていたんですけど…。うまく言えないというか、何かが足りなかった。その何かはまだ…。実力が足りなかったということだと思います。今年は体制もガラッと変わって、練習にしても、考え方にしても変わったなかで、とにかく自分はガムシャラにやってきた。本当にあっという間の1年間。自分が4年間やってきたことをしっかり出そうと常々思ってやってきて、それが少しは出せたのかなと。自分は口下手でうまく伝えることはできなかったけれど、自分のプレーを見て後輩たちが何かを感じてくれていたら…。今年は『荒ぶる』を歌えなかったことが何よりも大きかったので、後輩たちには絶対に歌って欲しい。中竹さんとの出会いは本当に素晴らしいものでした。自分は1年生のときからドスさん(OBの渡邊さん)のところに行って色々なことを教わって、中竹さんのことも色々と聞いていた。最後の年に中竹さんと出会うことができて本当によかったです」


<次代のリーダー 個のレベルアップ、強さの向上を誓う権丈太郎>
「終わってしまったんだという感じです…。すごく悔しいです…。試合が終わった後ファンの方々がワセダありがとうと言ってくださって、それが耳に届いたときは嬉しかったと言ったらおかしいですけど、やっぱりワセダは勝たないとダメなんだと思いました。来年は絶対に勝たないといけない。4年生に対する思いは話始めたら切りがない。3年間ずっと一緒に生活してきて、ラグビーでも、人としても迷惑を掛けてしまうこともあった。今はただ感謝と申し訳ないという気持ちでいっぱいです。シーズンを終えた今感じることは、ひとりひとりがレベルアップしていかないと関東学院には勝てないということ。主力、力を持った人たちが多く抜けてしまうけれど、それを逆に全員がチャンスだと思って、1日1日、ひとりひとりが勝負できるように、しっかりとした環境を作って、自分自身チームを引っ張っていければと思ってます」


<試練の1年 『継承』への意志を強くするFB五郎丸歩>

「最後の最後でFWががんばってくれて、いい試合ができて1年間楽しかった。今はまだ終わってしまったという実感はないです。優勝することはできなくても、先輩たちが残すものはしっかりと残してくれたと思う。次は僕たちがその伝統、ワセダの伝統を引き継いでいかないといけない。自分のことで言えば、菅野さん。色々なことを感じたし、一般で入ってきた人の力を見たというか、とにかく得るものがたくさんあった。体制が変わって、色々なことがあったけれど、ラグビーの技術でないところもたくさん学べた1年だった。自分が変わるキッカケをくれた1年。来年はそのキッカケをしっかりと自分のものにできるように、変われるようにやっていきたい。毎年のことですけど、4年生には本当に感謝の気持ちでいっぱいです」


<『ザ・レジェンド』 後輩たちを憂い自ら手本を示した松本允>
「お久しぶりです(笑)。試合をする前は楽しみだなぁとか、色々な気持ちがあったんですけど、決勝戦を見ていてタックルが甘かったし、ブレイクダウンも甘かったので、今日はその厳しさを自分が見せてやろうと思ってました。タックルは上にいくし、ダブルでもいかない。球際の強さもない。そういったワセダらしさが失われてしまっていると感じてました。自分のプレーを見て、後輩たちが何かを感じてくれていたらなと。曽我部から甲子郎へのパスはサインが分かっていたとかはないですけど、動きを見てこれ絶対来るぞって(笑)。後輩たちにはお疲れ様と言ってあげたいです。強いワセダ、期待しています」