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2024
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対帝京大 『権丈組』、ついに出発の地へ

 苦しかった。本当に苦しかった。ノーサイドの瞬間、多くの者の頬には熱いものが伝っていた。2008年1月2日、大学選手権準決勝。ワセダの象徴・『背番号15』、さらに春から赤黒を支えてきたコア・メンバーを欠いた『権丈組』は、もがきながら、何度も危機に晒されながら、逃げることなく、ブレることなく、全員でカベを乗り越えた。「もう何があっても怖くない。チームにとって、この一勝はすごく大きなものです」(主将・権丈太郎)―。
 気持ちは十分に作っていても、頭の中は十分に整理できていても、やはり『Dominator』不在は想像以上に大きかった。ゲームの組み立て、状況に応じたプレー選択と緩急をつけたコントロール。あの突破力を失うことは織り込み済みでも、準決勝での、帝京相手の「イロハ」を貫き通すことは困難を極めた。「五郎さんとは終わった後、ゲームメイクのところでこうした方がよかった、ああした方がよかったんじゃないという話をしました。敵陣に行ければ怖くないと思っていたんですけど、ペナルティで下げられてしまったり、ポンポン繋ぎすぎてのミスなど、前半は風上を生かしきれなかったなと。前半もう2,3本取っていれば、楽というか、全然違う展開だったと思います。天候を生かしきれず、しんどい試合になってしまいました。BKは…、若かったです。リアルに若いですから…」(CTB田邊秀樹)。前半11分あっさりトライを挙げたところまではOKも、ディフェンスミスから失点すると(人数は揃っていただけに…)、そこからはガマン、自分たちとの戦い…。
 最大の得点源・モールをうまい具合に対応されると、タテなしのBKもまったくゲインすることができない初めての経験。帝京の意思統一された芸術的ゴリゴリにも晒され続け、ボールを持てない時間が次第に増えた。どこかで見たぞ、この形。強烈な風下、募るイライラ、薄くなる得点の匂い…。どうするワセダ、ハマるとはこのことか…。
 しかし、この未体験ゾーンでもブレずに、信念を持って戦いきれるのが『権丈組』の真骨頂。「1点差でも何でも、とにかく勝てばいい」という前日の発言そのまま、7点を守りきることにスイッチを切り替え、この1年の拘りで勝負した。「僕たちはディフェンスのチーム。途中、昨年の決勝を思い出す瞬間もありましたけど、全員が前を見て、顔を上げてしっかりと戦い抜いた。チームとして、成長できたところだと思います」(No8豊田将万)…。権丈が、豊田が、要所でグッドタックル、エクセレントジャッカルを連発。BKも1年生CTB宮澤正利を中心に迷うことなく前に出続け、決して綻びを見せなかった。拠りどころのモールは不発でも、もうひとつの芯・ディフェンスで勝つ!
 そして、五郎丸への強い想いが何より赤黒を突き動かしていた。権丈、畠山、三井、豊田、田邊、中濱etc…。五郎丸がそれぞれの寄せ書きに添えた言葉の最後には、必ずこう記されていた。「あと1試合、みんなと一緒にラグビーがしたい」―。「ずっと体を張って守ってきてくれた、自分たちに安心を与えてくれていた存在。逆境でしたけど、五郎が寄せ書きに書いてくれた言葉を胸に、今日はずっと戦ってました…」(副将・畠山健介)。どんなに追い込まれようとも、どんなに苦しかろうとも、ここで負けるわけにはいかなかった。
 ガマンにガマンを重ね、チーム結成以来の危機を乗り越えた『権丈組』は、ついにあの舞台に立つ権利を獲得。「いやぁ、勝ってよかったです。BK、若かったですね。権丈からは、次は頼みますよって」(副将・五郎丸歩)…。「昨年の決勝からスタートして、やっとあの舞台で戦えるなと。今日のようなロースコアゲーム、競った試合だけ唯一経験していなかったので、これですべての準備が整いました。自信を持ってあとはやるだけです。暴れてやります」(主将・権丈太郎)…。あの日の屈辱は今でも忘れることができない。このチームは決勝のためだけに戦ってきたと言っても過言ではない。「そのとき」まで、泣いても笑ってもあと10日。Judgementday。ついに『権丈組』が『荒ぶる』を手に入れる―


<納得の勝利! 学生たちのタフさを称える中竹監督>
「今日は『権丈組』始まって以来、1番大事な試合になるという話をしていたし、スローガンにも『責任』という言葉を掲げて臨みました。ひとりひとりが責任を果たして、勝つ。春からAチームを支えてきたメンバー、リーダーがいないなか、このカベを乗り越えていきたいと。今日の帝京は戦い方が徹底していた。近場近場にワセダは苦しめられたし、点数も取れず、初めてのロースコアゲーム。取るべきところでのミス、イージーミス、繋ぎの部分…。ディフェンスも前に出る意識はあったけれど、飛び込んでしまっていて、帝京のやりたい地域でラグビーをしてしまいました。ただ、色々な経験をして、ここを乗り越えられたということは、前向きに感じています。五郎丸に関しては、本人も出たいという気持ちがあって、実際準備もしてはいました。五郎丸、有田、長尾、3人ともメディカルからはOKが出ましたけど、今日は自分が万全な選手を22人選びました。エリア、時間を考えながら、ここで何をするか、どうするかは、これまで五郎丸がやってきたこと。点差がついた状態であれば、誰にでもできるようなことですけど、今日のような緊迫したなかで自信を持ってやることはなかなか難しい。今日は今までにない展開で、学生たちも辛かったと思うけれど、よく乗り越えてくれた。こういうときのことも考えて、シーズンの初めでは五郎丸を途中で下げて、田邊、山中にこうするんだよということはやってきたけれど、やっぱり難しいことですね(笑)。今日彼らは自信と反省を得たと思います。自信ということで言えば、後半思い切りタッチに出すのか、ハイパン上げるのかの決断。FWが走れない状態だとチェイスがいなくなってダメになる。そういったことを感じながら、どこかで勝負もしないといけない。今日は行ってはいけない場面でカウンターに行ってしまったり、もっともっと判断のところを学んでいって欲しい。ただ、自分たちで決めたことを責任を持ってやる、やり通す。例えば、捕まっても絶対にボールはだすんだという気持ち。責任を持って、思い切ったプレーをした点については、褒めてあげたいし、自信を持ってくれると思う。帝京は分析の面、前回対戦したときとは特に変わった印象はないけれど、方向は一緒でより強固になったというイメージ。今日はやることが徹底されていた。いいチームだと感じたし、ブレないチームだなと思いました。ワセダとしては、その展開に付き合ってしまったのは反省です。慶應、明治、帝京は対抗戦で本気でワセダに勝ちにきて完敗。そこから目の色を変えてきていて、どのチームも相当な成長を見せていると思う。慶應もガラッと戦い方を変えていて、本来の姿に戻っている。まだ分析はしていないけれど、ワセダとしては相手に合わせることなく、これまでどおり、当初のプランどおり戦っていくだけです。今日の経験はチームにとってものすごく大きい」

<ついに『あの』舞台へ! 責任の勝利を喜ぶ主将・権丈太郎>
「今日は五郎丸というリーダーがいない、ケガ人も多い、フルメンバーにはほど遠い試合。出るメンバーには、俺たちにしか、この22人にしかできないんだ、責任を果たそうと言って臨みました。BKは若かったので、FWで圧倒しようと。ブレイクダウンは優勢だと思ってましたけど、取るべきところでモールで取れず、リズムに乗れず、自陣で戦う時間が長くなってしまいました。けど、抜かれるところはないし、大丈夫だろうって。昨年の決勝からスタートして、やっとあの舞台で戦えるという感じです。今日のようなロースコアゲーム、競った試合だけ唯一経験していなかったので、これですべての準備が整いました。自信を持ってあとはやるだけです。いつもは五郎丸がサインを出したり、この時間はああしよう、こうしようとやっていたんですけど、今日は司令塔がいなくなって、田邊、三井さん、山中にそれを任せて臨んだんですけど、ミスチョイスがあったり、なかなかいつものようにはいきませんでした。五郎丸がいればゲインできていたところもあった。前進する機会がなかなかなくて、いつもと違う展開になったんだと思います。それ以上に、精神的支柱、安心を与えてくれる存在がいないことは大きかったなと。五郎丸がいないことで、プレッシャーも感じてましたし、いつもの力が出せなかったですけど、ここを乗り越えたことで、次はしっかりと戦っていけると思います。テーマであった責任については…、それぞれが果たせたからこそ、今日こうして勝つことができました。サイドを行かれていたところ(この日唯一の穴?)は、スクラム自体は勝ってたんですけど、あそこは堀江がすごかったです。堀江にはファンクションの後、もう慶應を圧倒してくれと言われました。実際グラウンドでプレーしている感覚としては…、ちょっと攻められていないなぁと。前半などは敵陣ではやれてましたけど、1発で取ろうとし過ぎて外外、タテるプレーができず、相手にハマッてしまったなと。いらないオフロードが多くて、そこで相手にとられてしまったり。モールで取れなかったのも大きかったです。ちょっと相手の入りに受けてしまったところがありましたし、勝っているのにこっちが勝手に出てしまったり、反省が多いです。ただ、押してはいたので、後半もそこでもっと勝負してやろうって。リズム自体は悪かったですけど、前半も勝って終わってましたし、不安はなかったです。後半も相手はやることがなくて、近場しかこなかった。守っていて絶対に大丈夫だって。五郎丸とは…、まだ特に話してないですけど(笑)、これでしっかり繫げたと思います。今日の一勝は本当に大きいです。やっとここまで来ることができた。この一戦のためだけに今年1年やってきたので、やっと思い切って試合ができるという感じです。今日ですべてを経験して、もう何があっても怖くない。あとは暴れてやるだけです」

<五郎丸からのメッセージを胸に戦い抜いた副将・畠山健介>
「いやぁ、本当にタイトな試合でした…。勝ててよかったです。何て言うんでしょう、ターンオーバーはするけれど、全体的にエリアが取れてなくて、取れたとしても、ターンオーバーされて、ペナルティ取られて、もどされる悪循環。しんどい展開でしたけど、自滅という感じでした。やっぱりまだ若い証拠なんだと思います。特にBKは。FWでプレッシャーはかけられていたと思いますけど、エリアを取ること、プレー選択の部分がうまくいかず、コントロールしきれなかったという感じでした。スクラムに関しては、最初は押せていましたけど、後半は相手に対応されてしまったというか、思いどおりにはいかなかったです…。五郎丸とは個人的にはそんなに話してはないですけど、ずっと体を張って守ってきてくれた、自分たちに安心を与えてくれていた存在。今日は逆境、タイトな展開で勝てたことは本当に大きいと思います。五郎が寄せ書きに書いてくれた言葉を胸に、今日はずっと戦ってました。『荒ぶる』まであとひとつ。泣いても笑っても最後の試合。笑って終わりたいですし、決勝という舞台で勝つことがワセダの、『権丈組』の証明。もうすべてを出しきって勝つだけです」

<苦しみながら最後まで気持ちでプレーしきったフッカー臼井陽亮>
「今日はしんどかったです…。スコア的にもこういう試合は初めてで。権丈を中心に、みんな絶対に負けないという気持ちを持っていた。強気でプレーし続けたのが勝因だと思います。意地、強気、絶対に勝つんだという気持ちがワセダの方が強かったから勝つことができた。ディフェンスは…、FWとしては本当にいい勉強になりました。自分たちが拘ってきた部分でペナルティを取られて、うまくリズムに乗ることができませんでした。後半はその部分の見極めがしっかりできて、コミュニケーションも取ることができて、自分たちの形でディフェンスすることができたかなと。ペナルティさえしなければ大丈夫だって。モールに関しては、拘るべきところで拘りきれなかったのが課題です。帝京は下に寝ているプレーヤー、オフサイドの位置にいるプレーヤーがレフリーとうまくコミュニケーションを取りながら入ってきた。ワセダはそれに対応できず…。前半も個々が、モールの中心の人間が負けてました。自分たちの形でできなかったということです。何はともあれ、これでやっと決勝まで来ることができた。決勝で負けて、そこからスタートしたチームという意味では、ようやく目標としてきた場所に立てる。今日勝ったことに満足せず、絶対に勝ちます。今日チームとして得たことは…、五郎丸が抜けてチームの軸がいないなか、自分たちで勝つことができて、自信をつけさせてもらったということと、やっぱりブレイクダウンで劣勢に立つとチームとして機能しなくなるということだと思います。決勝では慶應をぶちのめします!」

<殊勲のディフェンス! 最後までその責務をまっとうしたNo8豊田将万>
「いやぁ、苦しかったです…。接点で負けている部分もありましたけど、要所では勝っていたのが勝因だと思います。僕たちももちろんですけど、帝京もブレイクダウンにすごく拘ってきてました。ペナルティを取られてしまうところもありましたけど、接点で引かずに戦いきったことがよかったと思います。後半はもうとりあえず敵陣に行って。FWはディフェンスで耐える。僕たちはディフェンスのチーム。自信を持って戦ってはいましたが、今年1番辛かった試合です…。途中、昨年の決勝を思い出す瞬間もありましたけど、全員が前を見て、顔を上げてしっかりと戦い抜いた。チームとして、成長できたところだと思います。帝京は固まりが強くて、前にきていて、すごくいいモールだと感じました。ワセダとしては、モールでもっといきたかったんですけど。勝負どころでのジャッカルは…、あれはもう羽生さんの練習のおかげです。五郎丸さんにはああしろこうしろとは特に言われてなかったですけど、3年だけどお前はリーダーなんだから、思い切りやってこいと。実は僕、五郎さんが後ろにいない試合、初めてだったんです。いつも後ろから安心感をもらっていて、今日も不安なところがありましたけど、これまでとは逆、前で自分ががんばることで、後ろの人たちに安心感を与えられればと思ってました。試合後には、やっと決勝の舞台に来たねって。今年は昨年のあの決勝からスタートしたチーム。ようやく原点に帰ってくることができた。あの日の想いを忘れずに、思い切って最高のプレーをしたいと思っています。今日は最後まで我慢したことと、気持ちが切れなかったことが勝因です」

<試合後には涙… 我慢に我慢を重ね続けたCTB田邊秀樹>
「ホンマにしんどかったです…。とりあえず今日は勝つことだけを考えてました。五郎さんがいないなか、こういう形で終われない、終わらせるわけにはいかないと。勝てて本当によかったです。あの涙は、負けたら合わせる顔がないという気持ち、勝ててよかったという気持ちで…、泣いてしまいました。五郎さんとは終わった後、ゲームメイクのところでこうした方がよかった、ああした方がよかったんじゃないという話をしました。敵陣に行ければ怖くないと思っていたんですけど、ペナルティで下げられてしまったり、ポンポン繋ぎすぎてのミスなど、前半は風上を生かしきれなかったなと。前半もう2,3本取っていれば、楽というか、全然違う展開だったと思います。天候を生かしきれず、しんどい試合になってしまいました。BKは…、若かったです(ちなみに『ベストペネトレーター』は早田健二!)。リアルに若いですからね…。ディフェンスしていても、最後まで怖くはなかったですけど、点差が点差だっただけに、しんどい展開ではありました。アタックで取れないもどかしさからイライラしてしまって、焦ってしまった面もあったと思います。山中も宮澤も、よく我慢してくれました。僕たちにとってはいい経験です。まぁ勝ったから言えるんですけど(笑)。今日は…、何て言うんでしょう。とにかく勝てたことが1番大きいです。あとは、BKは思い切りやってミスしても、FWがカバーしてくれるということ。縮こまらず、思い切りやればいい、心配ないということが改めて分かりました。決勝に関しては、もう勝てれば何でもいいと思ってます。慶應とは1回やっていて、向こうも色々と考えてくるでしょうし、WTBはまだ寛造か渉太さんか分からないですけど、コミュニケーションを取って、またしっかり山田さんを止めたいです。慶應はBKがいいですけど、自分たちも負けてない。BKで勝ちたいと思ってます」

<五郎丸歩、仲間たちの戦いに何を思う…>