『早慶戦』はまだ終わってはいなかった。6日経ってもあの熱は失われてはいなかった。ジュニア選手権準決勝・対慶大。大きな使命を背負い戦った『早田組』セカンドチームは、苦しみながら、痛みながら、意地とベースで永遠のライバルを乗り越えた。「Aが勝ち切れずに迎えたなか、今日はBがワセダの代表としてしっかりと戦ってくれた。ワセダとして、1つのマスト事項を遂行できたと思う」(中竹監督)―
試合は秩父宮の興奮をそのまま持ってきたかのように、キックオフからいきなり1分45秒、計11フェーズに及ぶドツキ合い。ロック星野泰佑のクリーンキャッチからワセダが怒涛のアタックを見せれば、慶應も切れることのない勤勉なディフェンスで必死の応戦。11月23日の構図が上井草でも再現され、この時点で、思い通りにいかないことは容易に想像できた。
攻めて、攻めて、攻めて、ずっーと敵陣に居続けながら取りきれずに迎えた23分、相手左WTBのカウンターに60メートル走りきられる失態を犯し0-5。「単純なタックルミスとコミュニケーションミス。あそこはしっかりと止めないといけなかった。あれが自分たちの甘いところ」(ゲームキャプテン・和田卓也)。せっかくいい形できていたのに、あのときと同じ過ち…。ビッグゲームでは、どう考えても致命的…。しかし、この日のワセダには、断固たる決意と、これに動じぬしっかりとしたベースがあった。ペネトレーターとして、ハイパンキャッチャーとして、出色のデキを見せた星野を軸に再び前に出ると、33分結束示すモールで同点。さらにロスタイムに入った42分、一度はイージーミスで攻撃権を失いながら、渾身のスクラムプッシュ&鋭い出足で勝ち越しトライ。「今日は理屈ではなく、個々がしっかりと勝負をして、倒れず、ブレイクダウンも激しく、何度もターンオーバーしてくれた。これはワセダとして、これからもしっかりと続けていかなくてはいけない」(中竹監督)。それぞれが目の前の敵、己との戦いに没頭し、11月23日の一歩先、リードを奪って前半を折り返した。
その熱、その勢いを絶やすことなく迎えた後半も、ベースの勝負、まず敵陣、ノーペナルティをさらに徹底。崩せそうで崩せない、3次、4次以降、かなりの確率でミスを犯しながらも、スクラム(後半12分からは伊藤、上田のルーキーコンビが揃い踏み!)、モール、ブレイクダウンでプレッシャーを掛け続け、地域と主導権は渡さなかった。勝利はすぐそこ。最後の一手をいつ、どう打つか。感覚はそう、2年前の決勝戦…。
そして、待ち焦がれた「そのとき」が訪れたのは、リミットが差し迫った27分。『モラリスト』の一撃。この日も的確な判断を見せ続けたSO吉井耕平のパスを受けると、BKバリのステップで相手の裏へ。タックルを受けながらもゾンビのように甦り、そのままインゴールへと飛び込んだ。それまでフィールドに立つ誰よりも仕事をしてきたNo1モラリストが、最後に主役に躍り出る。何とも美しいストーリー。それは慶應のひたむきさ、一体感を、ワセダの意地とプライドが上回った瞬間だった。「タックルのパックも外れたので、もう一度行ってやろうと。慶應は崩しても運動力が多く、ディフェンスが沸いてきた。それで取りきれないというシーンが何度もあった。ワセダの3列としても、今日は負けずに走ったとは思います…」(フランカー・清登明)。
苦しみ、もがき、チームとして多くの課題を出しながら、我慢とベース、個の勝負で、無事決勝の舞台に到達。これでまた全員で頂上へとアタックできる。誰しもが赤黒と『荒ぶる』へ向け戦える。この毎年当たり前のように続けてきたルーティンの価値は計り知れない。「大切なのは、今日のメンバーがジュニア選手権の決勝を見てがんばるのではなく、早明戦に出ること、Aで出るのを一番に考えられるかということ。今年は最後までメンバーを固定せずに、個の成長を重視していくし、小さくまとまることなく、このチームでまとまることなく勝負していく」(中竹監督)。「今日勝てたことは大きい。ジュニア選手権で優勝できないと『荒ぶる』もない。しっかりとリベンジします」(ゲームキャプテン・和田卓也)。さぁ、舞台は整った。『早田組』、『Explosion』まであとひとつ!
<マスト遂行! 慶應撃破に手応えを感じる中竹監督>
「今日はもう勝てばいいと言って送り出したゲーム。言いたいこと、課題はたくさんあるけれど、今日出たいいプレーを前向きに捉えて、決勝に繋げていきたい。今日は理屈ではなく、個々がしっかりと勝負をして、倒れず、ブレイクダウンも激しく、何度もターンオーバーしてくれた。これはワセダとして、これからもしっかりと続けていかなくてはいけない。大切なのは、今日のメンバーがジュニア選手権の決勝を見てがんばるのではなく、早明戦に出ること、Aで出るのを一番に考えられるかということ。今年は最後までメンバーを固定せずに、個の成長を重視していくし、小さくまとまることなく、このチームでまとまることなく、勝負していく。今日はベースの部分で勝った試合。ディフェンス、ディフェンスブレイクダウン、1対1で勝負して勝った。戦い方だったり、色々と課題はあったけれど、そういう意味ではいい試合だったと言える。11月23日にAが勝ち切れずに迎えたなか、今日はBがワセダの代表としてしっかりと戦ってくれた。ワセダとして、1つのマスト事項を遂行できたと思います」
<リベンジへ! 悲壮な決意を口にするゲームキャプテン・和田卓也>
「今日はどんな内容でも、とにかく勝つことを一番の目標にしていたので、よかったです。ベースで勝ったと言える試合でした。自分たちで決めたスローガン、『クリーンアウト』をみなしっかりと体現してくれましたし、相手ボールのブレイクダウンに対してもプレッシャーを掛けることができてよかったです。点数が取れなかったことについては…、試合前からあまり取れないだろうなというイメージはありました。もっともっと両WTBを走らせたかったです。今日のCTBはふたりともタテに強い選手。ゲームコントロール、ラインコントロールを吉井、飯田に任せ切りになってしまったので、そこはBの課題かなと思います。ブレイクダウンに関しては、みな気合い入ってました。立つ意識を強く持って練習してきましたし、それが試合でも出せたなと。トライを取られてしまったのは、単純なタックルミスとコミュニケーションが取れなかったところ。しっかりとコミュニケーションを取っていれば、止められる部分なので、そこは決勝に向けて、レベルアップ、修正しなくてはいけません。Aチームがトライ数で負けていたこともあって、今日はBにとって大きなチャンスでした。帝京戦も同じようなシチュエーションで負けてしまっていたので、今日勝てたことは大きいと思います。もうこのメンバーで試合ができるのは、あと1試合しかないので、最高のゲームをしたいですし、ジュニア選手権で優勝できないと『荒ぶる』もない。帝京はファーストフェーズでも負けている相手なので、しっかりとリベンジします」
<シーズンベスト? 出色のデキで勝利をもたらしたロック星野泰佑>
「先週の早慶戦でAがああいった試合をしてしまい、ここで慶應を勢いづかせるわけにはいかない。ワセダとしては絶対に勝たなくてはいけない試合でした。まず、勝つことができて本当によかったです。テーマとして掲げた『クリーンアウト』をきちんとできたことが、大きかったと思います。いきなりのキックオフが大きかった?、もう今日はキックオフからいってやろうと思っていたので(笑)。練習でやってきたことを出すことができた。自分を勢いづかせる、チームを勢いづかせるプレーをしようと意識していたのでよかったです。来週には早明戦もあるので、セレクションマッチのつもりで。この試合に懸けてました。今の自分にできること。チームから求められていることをしっかりやろうと。キックオフから敵陣に居続けることができましたし、前に出るプレーもできてよかったです。ブレイクダウンは、Bにしては珍しく(笑)、よかったと思います。でも、これが帝京相手に通用するのか。帝京はブレイクダウンの厳しいチームですから。今日の反省をしっかりして、また決勝に臨みたいと思います。残りのシーズン、自分が出るのか出ないのかは、監督が決めること。とにかくひとつひとつの試合で、自分にできることをやりきって、しっかりアピールできれば、自ずと結果はついてくると思ってます。やるべきことは、明確になっているので、あとはやるだけ。次もがんばります」
<走って捌く!クライマックスへ向け更なる精進を誓うSH櫻井朋広>
「勝つことができてよかったとは思いますけど…、チームとしては慶應の方が走れていましたし、低いタックルになかなか前に出られず、苦しい試合でした。個人としても、狙うべきところで行ってしまったり、判断ミスがたくさんあってスコアできなかったので、もう一度自分自身反省しなくてはいけないと思います。次はしっかりとイメージを持てるように。今日は僕がテンポを作ってトライを取らなくてはいけなかった。僕のプレーひとつでトライにならないシーンがいくつもあった。そこはもう一度やり直して、BKとしていい形で取りきれるようにしていきたいです。ブレイクダウンに関しては、よかったと思います。きれいに球が見えていましたし、みんなしっかりと相手を剥いでいく意識もありました。今日はディフェンスとブレイクダウンで勝った試合だと思います。一人ひとりがしっかりと前に出ることで、勝つことができました。決勝戦に向けては、チームとしてもっともっとディフェンスでプレッシャーを懸けて、ワセダらしいラグビーをするためにもっともっと全体が走ること。個人的には、まだ試合が終わって納得できる形ではないので、しっかり終わった後納得できるように、1日1日大切にして臨みたいと思います」
<獅子奮迅!『モラリスト』ぶりを如何なく発揮したフランカー清登明>
「負けたら終わり、今日は勝つことが第一で、手堅い試合になってしまったかなと思います。試合内容としては…、あまりよくなかったですけど、FWがしっかりとボールを出せて、敵陣にも長く居れたので、展開的にはいけるという感覚でした。ブレイクダウンに関しては、相手が常に絡みにきていたので、1人目がしっかり立って、2人目が剥がしていこうと。そこはいい意識で対抗できました。ディフェンスブレイクダウンは、ジャッカルを狙っても慶應はうまいので…、みんなでしっかりとコンセンサスを取ってできたのが、ターンオーバーに繋がったんだと思います。トライはたまたまです(笑)。前が空いたので行っただけ。タックルのパックも外れたので、もう一度行ってやろうと。立つ意識で取ることができて、よかったです。慶應は崩しても運動力が多く、ディフェンスが沸いてきた。それで取りきれないというシーンが何度もあった。ワセダとしては、一人ひとりがもっと強いプレーをして、更に早い展開で、相手がセットし切る前に取るのが理想です。バッキングで追いつけないところもありましたけど、ワセダの3列としても、今日は負けずに走ったとは思います。決勝の相手である帝京は一度負けている相手。ブレイクダウンが強いことは分かっていますし、そこさえしっかりとできれば勝てる。FWで勝ちたいと思います」
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