それはある意味歴史の動いた、大きな大きな敗戦だった。初めての事態に頭が真っ白になった。崖っぷちも崖っぷち、勝利以外は死を意味するジュニア選手権・ファーストフェーズ最終戦。こんなときこそ力を発揮するのがワセダの伝統も…。長年築き上げてきたものが、ついに音を立てて崩れ落ちた。
試合を大きく動かしたのは、開始早々、自陣ペナルティから仕掛けに行ってのターンオーバー(ミス)。相手を振りまわしにいくところが一転、ゴール前に閉じ込められFWゴリゴリの力技。続くキックオフの攻防からSO吉井耕平が判断よく抜け出しトライを返すも、ビッシリ人数が揃い、かつノット10もない状況でのハリー、ここは行くと全員で決めていたにも関わらず犯したミスは、対帝京を考えると、あまりにも痛かった。判断、スキル、コンセンサス。「強気にということで、自陣からもガンガン行ったんですけど、そこで帝京に煽られてしまいました。自分たちに流れを持ってくるべきプレーで、逆に帝京に持っていかれてしまったのが今日のすべてです。強気で行くと決めていたので、行った選択自体は間違ってなかったと思いますけど、結果としては…」(FB飯田貴也)。
試合を振り出しに戻し、さぁここからリスタート!というところでも、同じような状況の連続(継続)。自陣から仕掛けに行ってターンオーバー、ペナルティ、ゴール前ゴリゴリシチュエーション。FWが何とか抵抗を見せるも、消耗した挙句ズシリと来るトライ。生命線・ブレイクダウンも反応の鈍さに帝京の執拗な横やりが重なり、完全に制圧された。自陣からの揺さぶりを交えつつ、メリハリをつけ主導権を握った11月3日の赤黒とは大違い。
そして、12-19と何とか勝負できる態勢で迎えた後半、キックオフレシーブから繰り出した一手も、何かに吸い寄せられるように「継続」。行くのであれば、あってはならぬターンオーバー。そのままズルズル下げられ、ゲームは決した。その後の展開は言わずもがな。こんなときこそ、ワセダに必要なのは狂った人間。前半終盤からハイパント、ロングキックを交え、流れを掴みかけていただけに、VTRを巻き戻したかのような失点は、グサリときた。
これで、ジュニア選手権が現行制度になって(2002年)以降=『清宮ワセダ』以降初めてとなるファーストフェーズでの敗退。もうひとつの大学選手権として12月の終わりまでチーム一丸、下が上に挑み続ける。明確なターゲットのもと、4年があがき、下級生がついていくというルーティンはここで崩れた。それでも、ワセダとしてここで立ち止まってはいられない。次なる手をどう打つのか。今までになかった状況でこそ、こんなときだからこそ、組織としての真価が問われる。「ブレイクダウンが勝負を分けると改めて痛感しました。ここでもう一度、全員で勝ちに拘らなくてはいけないと思います」(主将・有田隆平)。どんな感情に苛まれても…、これからもシーズンは続いていく―
<強気の攻めもひとつひとつの精度を悔やむFB飯田貴也>
「今日は強気にということで、自陣からもガンガン行ったんですけど、そこで帝京に煽られてしまいました。自分たちに流れを持ってくるべきプレーで、逆に帝京に持っていかれてしまったのが今日のすべてです。前半頭、自陣のペナルティからハリーでいってターンオーバーされた場面だったり。強気で行くと決めていたので、行った選択自体は間違ってなかったと思いますけど、結果としては…。ひとつひとつのボールキャリア、スイープ、寝方、リリース、ひとつひとつのプレーで帝京のフィジカルに対してどう精度を上げていけるか。今日はそこで負けていました。ワセダとしては、アタックで何十次でも継続してトライを取ってやろうという気持ちがあったんですけど、2次、3次でターンオーバーを喰らって、手詰まり感があって…。継続できないなと。この状況は自分たちで立て直していくしかないので、しっかりと受け止めて、ズルズルいかないように4年生としてやっていきます」
<FWとしての後悔もここからの飛躍を誓うフッカー須藤拓輝>
「試合前にペナルティをしたら負ける、そこだけは絶対に注意しようと話していたんですけど、いいタックル、いいディフェンスをしているなかで、ペナルティを犯してしまって、帝京に前に出られて、セットで圧力を掛けられて、FWでやられてしまうという場面が多かったです。その意味で今日はFWの責任だと思います。スクラムに関しては、相手ボールはプレッシャーを掛けられた場面もありますけど、ゴール前やここという勝負どころでプレッシャーを掛けられてしまいました…。大きな課題です。帝京のスクラムは重いという感じでした。今日はいいタックルができてもターンオーバーまで行けず、ペナルティ、アタックになってもパスミスで自陣。ブレイクダウンも前に出られたときはよかったですけど、アタックではタックルにかえされてターンオーバー。2人目の寄りが遅かったのも要因だと思います。今日こういう結果になってしまいましたが、もちろん平一さんを抜いてAで試合に出ることが目標ですし、そのためにジュニア選手権で出た課題を克服していきます」
前半
5分 帝京 速攻を仕掛けたところのTOからFWで攻められトライ G失敗 0-5
7分 早大 キックカウンタから継続→9・10裏に出て大塚トライ G田邊成功 7-5
15分 帝京 5mSからサイドを突かれトライ G成功 7-12
20分 帝京 22mSから継続→前に出られて9・10・13・11トライ G成功 7-19
36分 早大 キックの応酬→9・10・原田がDFを交わしトライ G田邊失敗 12-19
後半
1分 帝京 TOからモール→FWのゴリゴリでトライ G失敗 12-24
19分 帝京 Sのこぼれ球を拾われ9・21・12トライ G成功 12-31
30分 帝京 5mS→サイドアタック→FWのゴリゴリでトライ G成功 12-38
32分 早大 22mPから速攻→20・21・田邊トライ G田邊成功 19-38