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早稲田スポーツ新体制特集「原点へ」【第1回】後藤禎和監督

早稲田スポーツ新体制特集

【第1回】後藤禎和監督
『自律の先に』

 

 連載第1回目は監督として2年目を迎える後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)。昨シーズンは、度重なる逆転負けを喫し技術面だけでなくメンタル面での課題も露呈した。この課題にどうメスを入れていくのか。真価が問われる今シーズンに懸ける思いを伺った。

※この取材は2月21日に行ったものです。

 

精神的な脆さ

 

――まずは昨年を振り返っていただきたいのですが、監督になられて1年目のシーズンは率直にいかがでしたか。

後藤:いろいろと大変なことがあったなと。素直な気持ちです。

――関東大学対抗戦では度重なる逆転負けを喫して、監督も「精神的な脆さ」をよく口にしていましたが、メンタル面に関してはいかがでしたか。

後藤:メンタル面に関して強いか弱いかでいえば、間違いなく強くなかったと言わざるを得ません。その反面監督として強固な自信を持ってグラウンドに送り出せなかったことが自分自身の反省点として捉えています。

――自信の回復に関して、どのように改善していくおつもりですか。

後藤:昨年に関しては、勝つことで自信を取り戻していこうという方針でした。春は幸い勝ち続けることができましたが、夏に帝京大に大敗して、対抗戦でも筑波大戦や帝京大戦などのターニングポイントになるべき試合で取りきれずに自信を取り戻すことができませんでした。ことしは2年目ということで、昨季の戦い方をベースにしたチーム作りができるので、春シーズンは昨年以上の厳しいトレーニングを積んで、私生活も含めてその中で自信を植え付けていきます。

――昨シーズンは終盤に入って多数のケガ人が出てきて、チームにも悪影響を及ぼしたと思いますが、ケガを防止するための新しい取り組みなどは行うつもりですか。

後藤:科学的なアプローチを行っていくつもりです。まずはケガをさせない、あるいは1回ケガした人間を再発させないということを絶対目標にして、ケガをしないためにはどういったトレーニングが必要なのかということで、専門的な知識も持つ人間をコーチとして入れます。また、そしてそのためのセッションの時間を、年間を通して入れていくつもりです。

――シーズン当初からテーマとして掲げていた「数とスピードで勝つラグビー」の完成度についてはどう評価していますか。

後藤:全国大学選手権の準決勝(対帝京大)に関して言えば、コンタクトの要素を取り除いたときに、持久力の競争などのレベルでいえば、ワセダも決して低いレベルではなかったと思います。やはりラグビーはコンタクトスポーツなので、ぶつかり合って寝て転んで起き上がって走るという体力が求められるので、そうなったときに平均体重の差が10キロ以上あるのはどの格闘技においてもそうですが、非常に厳しかったです。よってトータルの意味での体力というのは帝京大に至らなかったと評価しています。

――フィジカルの差がやはり大きかったですか。

後藤:大きかったですね。まあフィジカルの面で上回ることは時間的にもなかったので、フィジカル面で不利に立つのは想定していましたが、にしても土台の部分をもっと詰めておけばと思いました。

――監督が思い描くラグビー理想図を、選手はどれくらい理解していたと評価していますか。

後藤:やはりプレッシャーがかかった状態で精度高くできてなんぼなので、理解度に関しても浸透しきれなかったと思っています。準決勝だけを見る限りではそう評価せざるを得ないですね。

――理解度に関しての改善策は。

後藤:2年目なので、春の間に完全に浸透しきらせたいです。その上で、春シーズン最後の帝京大戦をバロメーターとして、今後その幹を太くしていくのか、それとも変える部分を変えていくのか、そういった見極めをしていきたいです。

 

とにかく「数で勝つ」

――主将を垣永選手に指名した理由を教えてください
後藤:1年生からずっと見ていますが、しんどいときに一番大きな声を出してまわりを引っ張っていくシーンがすごく印象的なので、僕の中では垣永でした。

――垣永主将にはどのような言葉をかけましたか。
後藤:とにかくリーダーシップを期待しますと。

――2月19日から正式に再始動ということですが、ファーストミーティングでは選手にどのようなことをお話しされたのでしょうか。

後藤:フィジカルの部分に関しては勝ちきるというよりは追いつくだけ追いついて、ではどこで勝ちきるかというと昨年から言っている「数で勝つ」。「数で勝つ」というのは単純に走り勝つという意味ではなく、常に人数が上回っている状態で局面を迎えることです。そのためには単純に走るだけでなく、フィジカルの部分も必要だし、すぐ立ち上がって次のプレーに動き出すという意識のところもすべてひっくるめて必要になってきます。この「数で勝つ」というところを改めて強調しました。

――選手の反応はいかがでしたか。
後藤:負けたあとのアンケートでは「帝京大に勝っているところがない」という意見が多くて、それでも本気で勝ちたいかどうか、帝京大に勝たなければいけないというのは現時点で強くて大きい相手に勝たなければいけないということで、はたしてその覚悟はあるのか。という問いかけをしたところ、彼らは十分に期待通りの反応を示してくれました。

――原田選手(季郎、教=福岡・筑紫)と中鶴選手(隆彰、スポ=福岡・西南学院)が抜けて、BKの決定力が少し気になりますが、監督はどのように思っていますか。

後藤:最後出ていた荻野(岳志、先理2=神奈川・柏陽)も遜色ないレベルに育ってきていますし、藤田(慶和、スポ1=東福岡)も戻ってくるので、WTBだけでなく、バックスリーの決定力というところでは、これからの鍛錬次第で、十分に他と太刀打ちできるくらいのレベルになると思います。

――スクラムに関して言えば、上田前主将(竜太郎、スポ=東福岡)の穴は大きいかと思いますが、監督はどのように見ていますか。

後藤:昨年までBでやっていた大瀧(祐司、文3=神奈川・横浜緑ヶ丘)に関しても去年1年間ですごく強くなっているので、上田の全盛時の破壊力はないけれども、十分強いスクラムが現時点でも組めると思います。

 

「死ぬほど考えて、死ぬほど努力する」

――春シーズンが始まるまでのこの期間はどのようなことを重点的にやっていくおつもりですか。

後藤:繰り返しになるけど、体作り、まずはサイズアップ。そしてケガを予防するためのコーディネーショントレーニング。この2つに一番時間を割いていきます。

――キーマンになる選手を挙げていただけるとすれば、どなたですか。

後藤:去年のもう一つの課題であったゲームマネジメントでいうと、小倉(順平、スポ2=神奈川・桐蔭学園)あるいは間島(陸、商3=東京・早大学院)。この2人には期待していきたいですね。

――多くの主力が残る帝京大の存在に関しては。

後藤:主力が残ろうが残るまいが、育成システムもしっかりしているので向こうのレベルは数年間変わらないと思います。環境面の差はあるのだけれども、自分たちにできることを知恵と工夫を駆使してやって、追いつけることは追いついて、向こうにはない強みを構築していきます。

――新チームになって『自律』という言葉をよく使われますが、『自律』を重要視する理由を教えてください。

後藤:精神面の弱さにも間違いなくつながっていると思いますが、ここ数年間トレーニングだけでなく私生活の過ごし方に甘い部分があって、ワセダのラグビー蹴球部としてどうあるべきかを考え直しました。ただ単に大人が頭ごなしにあれダメこれダメと押さえつけて管理していくのではなく、自分たち自身でどうあるべきかを考えて、もちろんこちらもアプローチはしていきますが、最終的には自分たちで何が適切なのかを考えて、自分たちで自分たちを律していく。そのような集団にすべく『自律』を重要視しています。

――監督として2年目のシーズンに懸ける思いを教えて下さい

後藤:中長期的に手掛けていかなければならない課題があって、それは1年というスパンではなくてある程度長いスパンをかけてOB会も含めた組織全体で手掛けていくつもりです。それにしてもやはり毎年求められているのは日本一なので、私自身も最後のつもりで、覚悟を持って臨みます。

――最後に応援してくださるファンへひと言お願いします。

後藤:去年は常々絶対勝つと公言していたものの、あのような結果になって大変ふがいない気持ちなのですが、昔からのワセダの伝統である自分たちより強い相手にどうやって勝つかということを死ぬほど考えて、そのために死ぬほど努力して、レギュラーだけでなく、全員がチャレンジし続けることができる取り組みをこの1年間していきます。

――ありがとうございました。

(取材・編集 早稲田スポーツ新聞会 坂田謙一)

◆後藤禎和(ごとう・さだかず)
1967(昭42)年生まれ。東京・日比谷高出身。90(平2)年社会科学部卒。現役時代のポジションはロック。卒業後はヤマハ発動機に入社し、同ラグビー部に所属。00年より早稲田大学ラグビー蹴球部FWコーチを務め、12年に監督に就任。迷わず色紙に書いた言葉は『自律』の二文字。精神面から鍛え直し、必ずや日本一へ導きます。

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