2016.10.28
【監督コメント】対抗戦前半4試合を終えて
山下大悟新監督の下、新スローガン『Be the Chain』を掲げてスタートした今季の早稲田大学ラグビー蹴球部。ただ、春シーズンは厳しい現実が続きます。
初めて実施した網走合宿を経て、恒例の菅平合宿へ。夏のオフシーズンも返上して、改めてファンダメンタルスキルを徹底し、少しずつ自分たちのやりたいラグビーが形として見えてきました。
そして、関東対抗戦が開幕。昨年大敗(25対45)した筑波大学、今春、創部以来初の黒星(29対31)を喫した青山学院大学などを含む前半四試合を四連勝という形で終えた今、チームの現状を単刀直入に監督に聞きました。
【10月23日(日)青山学院大学戦 試合前、ウオーミングアップを厳しい視線で見守る山下監督】
Q:まず、先日の青山学院大学戦。春に負けた相手に雪辱を果たしましたね。
A:正直、春に負けたことはあまり意識をしていませんでした。ただ、スコアという意味では成長した姿を見せることができたと思います。
Q:今振り返って、春の敗因は何であったと分析していますか。
A:(5月15日の青山学院大学戦は)まだ、新チームでの試合が始まって2試合目ということもあって、自分たちが強みにしていきたいと思っていた部分が成長する前の段階でした。今振り返ると、まだまだチームディフェンスの整備ができていませんでした。単純にそれが敗因です。ただ、まだチームとして作り始めたばかりだったので、特に気にしていなかったですね。
Q:春崩されることが多かったチームディフェンスですが、特に筑波大学戦では、そのチームディフェンスが機能していたと思うのですが、監督としてどのように見ていますか?
A:もともと、昨年までの早稲田は、現代ラグビーのトレンドと異なるチームディフェンスをやっていました。春は、まずそこを刷新しようと着手しました。そして、チームディフェンスの基礎的な練習を繰り返しやっていくことで、ベース作りはできました。しかし、強みにまで昇華することまではできていませんでした。
そこで、改めて選手に対して、我慢するところ、チームディフェンスの出口(ターンオーバーを狙うところ)はここだよ、としっかりと提示をしました。筑波大学戦では、そこのところを選手たちが体現できたのかなと思います。ただ、まだまだ目指すところには届いていませんね(笑)
【10月2日(日)筑波大学戦 試合前のロッカールームで選手に檄を飛ばす山下監督】
Q:今回の青山学院大学戦では一年生がスタメンの過半数の8名も名を連ねました。意識的に若い選手を使っているのですか?
A:全く意図的でないですよ。学年関係なく、実力のみで、チームのカテゴリーを分けていますが、たまたま一年生が多かっただけです。FWの3列の選手については、怪我の影響で万全でない選手もいたので、次に実力のある選手を起用しているだけです。
Q:でも一年生がこれだけ試合に出て戦えているということは、春から意識してきた体作りに関して、トレーニングの成果が出ているということでしょうか?
A:そこを一番吸収しやすいのは一年生ですし、一番伸びシロがあるのは一年生なので、一年生の多くに成果が出ているのは間違いないですね。でも、まあ、まだまだ全然です(笑)。特にFWの選手は、もっと大きく強くなって欲しいですし、大きくなれる選手ばかりですので、鍛えていきますよ。
Q:そうした体作りの成果はスクラムにもいい影響を及ぼしていると思うのですが、監督から見て前半四試合のスクラムはどう評価していますか。
A:正直、スクラムに関しては夏から停滞していますね。まだ強みになりきっていないかなと。今年、学生たちに提示しているビクトリーチェーンで、「制圧」をテーマの一つとして掲げていて、空間的な制圧だったり、接点の制圧だったり。もちろん、当然スクラムに関しても、相手を支配して、完全にコントロールするということが、制圧すると言うことなので、それにはまだまだ程遠いですね。
Q:逆に試合を通じてスクラムに時間をかけ、テンポが上がらないのでは?という声も聞こえますが、どのように評価していますか?
A:テンポが上がらないかどうかは、ゲームマネジメントの中で、強弱をつけていけば良いので、全然問題に思っていません。試合の中でもスクラムを組んでいる時間は長くなりますが、そこを今年の早稲田は強みにしていきたいので、当然時間をかけていいと思います。BKもそれを楽しみながら、ボールが出たら一気に大胆にアタックをしかけて、そこでテンポを上げて行きたい。要は早稲田のテンポで試合をできるかどうかが、一番重要だと思っています。
Q:筑波大学戦を快勝した後、日本体育大学戦で思わぬ苦戦(45対40)となりました。多くのファンの方から不安の声が聞こえましたが、チームには何が起きていたのですか?
A:夏合宿が終わって、筑波大学戦をターゲットとして、夏に自分たちが掴んだきっかけを強固なものにしていこうと、筑波大学戦までの5週間を過ごしました。特に初戦の成蹊大学戦までの期間には、ヤマハBとの試合を入れましたし、筑波大学戦の直前にはサントリーへ合同練習に行き、自分たちより強い相手と身体をぶつけてきました。なんでそんなことをしたかと言うと、よりハードな環境に身を置くことで、自分たちの強みを磨き、アタックの精度を高めたかったからです。
【9月3日(土)ヤマハB戦 12-17という接戦に一定の手応えを感じる山下監督と熱い言葉をかける清宮監督】
筑波大学戦で一定程度の成果も出ました。しかしながら、次のターゲットの帝京大学を考えた時に、もう一段レベルアップしなければいけない。自分たちがなんとなく慣れてきたものを、一度ぶち壊さないと行けないというか、リスクを背負わないといけない、そうしないと本当のチャレンジができないのではと思うようになりました。実際、筑波大学との試合を見返しても、帝京大学が相手だったらこれは返されるだろうな、と思うシーンが何度かありました。そもそも帝京大学に関しては、個々の身体の大きさでは負けるので、身体を強くしなければならないし、同時に早稲田としてはより鋭さを求めないといけない、と日頃から思っています。ただ鋭さばかり求めていても、ベースの強さがないと、絵に描いた餅になってしまうので、しっかりと戦える強さを求めなければならない。
そうすると、筑波大学との試合が終わった後のこの期間に、もう一度しっかりとベースを作らないといけないと思いました。日体戦、青学戦がありましたが、次に得たいものを得るために、この三週間はリスクを負って、メインに掲げたテーマである『フィジカル』に特化したプログラムを作って取組みました。もちろん、時間が限られている中で、これもやりたい、あれもやりたいってやっているとどうしてもぶれるので、この間、チーム練習はほとんどやっていません。なので、ある程度(日本体育大学戦は)良いゲームは出来ないだろうな、というか、しょうがないだろうなと思いましたが、予想以上に悪かったですね。
それを踏まえて、青山学院大学戦までの一週間は、基本的なプログラムは変えないものの、試合直前の2日間だけ少しチーム練習を入れて迎えました。でも大きなところではプログラムは全く変えてないので、ここで良く乗り越えたなと思いますし、ここから先に得るものは大きいと感じています。
それに、筑波大学戦で“自分たちが思っているより強い自分”と、日本体育大学戦で“自分たちが思っているよりも弱い自分”を認識することが出来た。その振れ幅が大きかったんですけど、でも、その振れ幅が大きい自分たちがいる、と言うことを認識出来たのがすごく良くて、だからこそ、これからどうしていかなければいけないのか、一歩一歩踏みしめて歩んでいかなければならない、ということをチーム全体で確認することが出来ました。そういう意味では良い経験をしたなと感じています。
Q:これから帝京大学、慶應義塾大学、明治大学と上位校との試合が続きますが。どのように戦っていく予定ですか。
A:自分たちが拘っている部分を徹底的にやって、その強みを前面に出すこと。相手を分析して、相手の強みを出させないこと。そして、帝京大学戦までの2週間で、新しく更新したものを自分たちのものにして、しっかりと発揮すること。その三点に尽きますね。これからの三試合に関してはこれです。
Q: 成蹊大戦、青山学院大戦とセカンドジャージでの試合となりました。ファーストジャージ以上に今までにないデザインだと思いますが、どのような思いで制作されたのですか。
A:セカンドジャージを制作するにあたり、今年のスローガンである『Be the Chain』という言葉の持つ意味をより表すようなデザイン、『鎖』そのものをモチーフにしたデザインにしたかったですし、やっぱりデザインオフィスnendoの佐藤オオキさんにデザインしてもらっていて、よりインパクトのあるものにしたいと思っていました。早稲田大学ラグビー蹴球部は、「早稲田のラグビーを通じて、世の中の人々に夢と希望と感動を与える」ということをミッションに掲げていますが、やはり多くの人たちに見てもらわないと意味がないと思っています。それは同時に、魅せ方にも拘りを持つことだと感じていて、ジャージひとつとっても、賛否あるとは思いますが、それに対して議論が行われること自体がすごく意義深いものだと思っています。しっかりと発信していく上で、ディテールからバックグラウンドまで、すべてをしっかりと感じてもらえるようなものを作りたいなと思って、こういうセカンドジャージにしました。
【9月17日(土)成蹊大学戦 試合後、より鎖のインパクトを強めたセカンドジャージを着て選手全員で記念撮影】
Q:最後に応援して下さっているファンの方々へ向けて、メッセージをお願いします。
A:今年は『Be the Chain』というスローガンを掲げ、ファンの方々やOB、パートナー企業の皆様など、様々な方々と一緒に強く繋がることで、一緒になって日本一への道を歩んでいけたらと思っています。同時に、一緒にこのチームの成長過程を自分のチームとして楽しんでいただきたいと思っています。
特にこれから三試合、大きな試合が続きますが、成長過程を一緒に楽しんでいただくために、今回のようにこちらからも、どのように時間を過ごしていくかなど、しっかりとお伝えしていこうと思っています。そして、その結果としての成果が出ているかを、是非グラウンドに足を運んでいただき、温かく見守っていただければ大変嬉しいですね。
引き続き、応援のほど、よろしくお願いします。
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