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【監督コメント】2016年度シーズンを終えて

【監督コメント】2016年度シーズンを終えて
 
関東大学対抗戦を6勝1敗で2位通過、大学選手権ではシードを獲得したにもかかわらず準々決勝敗退という結果に終わった2016年度シーズン。
「BE THE CHAIN」のスローガンを掲げ、戦術面だけでなくアシックスをはじめとするパートナーシップの締結・フルタイムコーチ大幅増員やクラウドファンディングによるファンのコミュニティ化など様々な改革を行ってきた山下監督。
今回は、就任1年目のシーズンを振り返ってもらう。

――監督一年目の昨シーズン、まずはプレー面について振り返っていかがでしたか
 大きな軸を三つ(スクラム・チームディフェンス・ブレイクダウン)立てて進んでいったんですけど、その土台作りという点で、出来た点出来なかった点があります。特にチームディフェンスはまだまだ脆弱な印象です 。
自分が予想していた通りの部分、予想を上回った部分、下回った部分とそれぞれありました。総じて地力がまだ足りないと感じています。 
 
――昨季のファーストミーティングで示したロードマップを改めて教えてください
 春はアタックには手を付けず、チームの軸になる部分の土台作りに専念するということで、ファンダメンタルなところから、手取り足取りスタートさせました。夏は帝京大との試合を組んでいたので、その試合をターニングポイントにして昇っていくということを(2016年)2月29日のファーストミーティングで選手たちに提示しました。大まかには予想通り、想定通りに進みました。大きな軸をシーズン通してぶらさなかった分、自分たちが何をやっているかがわからなくなることはなかったですし、迷う部分はなかったですね。

――試合後、よく「アップデート」という言葉を使っていましたが、常に細かいところの更新はしていたのでしょうか
 そうですね。春シーズンが終わった段階で一度しっかりとレビューをして、その中でアップデートした部分や選手たちに答えを提示した部分もありました。網走合宿以降、ブロックトレーニングからランダムトレーニングをメインにして練習の方法も変えたことで、力は付けていけたと思います。
――春シーズンは土台作りの時期だったということですが、具体的にはどんなことをしていたのでしょうか
 身体づくりの部分ではアセスメントのチェックから入って、ケガをしている部分も治したりだとか細かなチェックをしながら、S&Cのプログラムや栄養プログラムの実行、スキルのところはファンダメンタルなことしかやっていないですね。
  とにかく選手がハイパフォーマンスを発揮できるよう、それぞれの各パーツがユニットとして機能するようにプログラムを回し始め、コーディネートの質を高めていきました。 

――レスリングやスプリントトレーニングも取り入れていましたが、その成果はどう感じていますか
 選手たちもみんな一生懸命取り組んでくれましたし、それぞれ時間をかなりかけて取り組んでいました。ただ、レスリングをラグビーのタックルに生かす、という目的でやっていたんですけど、あまりにもレスリングをラグビーのタックルに応用しようとしすぎてしまっていましたね。レスリングはレスリングで、もう少し競技自体の特性を学ぶ、という風にすれば良かったなという反省はあります。スピードトレーニングに関しても、体のコントロールに対する意識がまだ脆弱だったこともあって、感覚的なところで得られるものが少なかったかなと。レスリングにしろスピードトレーニングにしろ、すごくいいものをやっていたとは思うんですけど、もう少しコアなところに特化してやれば良かったです。ラグビーに応用させようとしすぎてしまって、レスリングや陸上トレーニングのベーシックな部分に欠けたまま進めてしまったという反省点はありますね。

――春は結果が出ないシーズンでした。ファンやOBからのプレッシャーは感じていましたか
 いや、プレッシャーはなかったです。みなさんいろいろとご意見ご感想を言ってくださいますが、それは全て愛情の裏返しだと思っていますので。どんなことでも自分の中で咀嚼して、次への一歩に活かしていました。

――そういった中でもチームの軸はぶらしていませんでした
 そうですね。チームの根本的な強さを中・長期的に考えたときに、ハイパフォーマンスユニットのプログラムの実行と、スキル面ではスクラム・チームディフェンス・ブレイクダウンというラグビーの王道の部分、この三点は絶対に外せないことです。そこを抜きにして小手先だけで一つの試合に勝てたとしても、積み上がってはいかないと思います。グラウンド内だけでなくグラウンド外の環境も含めて、中・長期でクラブを強くしていこうとしているので、軸はぶらさずに今後もやっていきます。
――中・長期的なプログラムということですが、どのくらい先までを見据えているのでしょうか
 10~15年はしっかりとシステムとして回っていくようにしたいと思っています。グラウンド外のことから言うと、クラブとしてのしっかりとしたビジネスモデルをつくりたいです。もちろん、常にマイナーチェンジおよびアップデートはしながらやっていきます。 
 グラウンド内に関しても、体づくりを土台とした選手育成のプログラムをしっかり回していかないと、他大学にはとてもじゃないですけど太刀打ちできないと思っています。それを試行錯誤しながら20年以上もの歳月をかけて同じ監督がしっかりとプログラムとして回しているのが、帝京大さんや東海大さんですね。そういう大学と勝負していくためには、育成プログラムの確立というのは欠かせないと思います。各学年各選手でハイパフォーマンスを発揮するためにどういうことをしていくのか、しっかりと確立していきます。

――夏には網走合宿も菅平合宿前に行いましたが、その意図と成果を教えてください
 春の反省も踏まえたうえで、夏の帝京大戦をきっかけとしてチームとして昇っていくための準備として網走に行きました。具体的なタスクとしては、アタックと、フィットネスやストレングスの部分も含めたコンディショニングですね。選抜メンバーで行きましたが、水谷市長はじめ網走市の方々の多大なるご支援の下いい環境の中でとても充実した合宿ができました。

――選抜メンバー以外の選手たちは上井草でどのようなトレーニングをしていたのでしょうか
 銘苅信吾ジュニアコーチを中心に、厳しい練習をやっていました。残念ながら網走合宿に行けなかった選手たちは、試合を多く予定していた菅平合宿に向けて、自分がどういう風に成長していく合宿にしたいのかを考えながら、いい練習ができていたと聞いています。

――菅平合宿は例年に比べると短い期間に多くの試合を組み込んでいました
 そうですね。菅平には試合をしにいきました。特にメインの帝京大戦で、定点観測として、自分たちの立ち位置を確認しようと思っていました。あと、最後に組んだ東海大さんとの試合は、セットプレーが強い相手に対してどうFWで戦うか、という目的でやりました。ただ、8日間で3試合という短期間で多くの試合をする合宿だったので、コンディショニングという観点から選手の出場時間は最大でも160分と決めていました。

――そこで得られたものはどういったものがありましたか
 FWの近場でのブレイクダウンは差し込めていましたしスペースも取れてターンオーバーも多々ありましたので手応えはつかめました。あと、スクラムとモールですね。帝京大戦ではゴール前のスクラムでスクラムトライも取れましたし、東海大戦ではモールで2つのトライを取れたので。ただ、帝京大戦はボールを外に振られたときのディフェンスが良くなかったのと、22m近辺でのアタックを整備していなかった分、手詰まりになってしまいました。そこは反省点としてありました。

――菅平合宿を終えて、関東大学対抗戦(対抗戦)にはどのように入っていこうと思っていたのでしょうか
 本当はもう一度合宿をしようかなと思っていたんですけど、9月のはじめに清宮さんのご厚意でヤマハ発動機と上井草で試合をやらせてもらえることになったので、まずはそこに向けて準備しようと思っていました。自分たちよりも強い相手にチャレンジする、ということを開幕戦前の大きなターゲットでしたね。その2週間後に対抗戦の開幕を迎えて、その次に筑波大との試合がありました。菅平から下りてきて、その筑波大戦までの5週間ということで、前半の3週間はもう一度自分たちの強みに立ち返ってやっていって、次の2週間では、筑波大さんをしっかりと分析して練習していく、というプランニングでした。
――9月に行ったヤマハ発動機との練習試合を含め、サントリーとの合同練習なども行っていました。その意図は何だったのでしょうか
 自分たちの日常を壊して、強い相手にチャレンジするということですね。自分たちのファンダメンタルなスキルがどれだけ通用するのかも試そうと思っていました。そのチームにスコアで勝つということよりも、自分たちが強みにしていかなければいけない部分大きな軸のところでどれだけできるかというところです。そこを選手たちに体感してほしいと思い、組ませていただきました。
――それでも、9月のヤマハ発動機戦では12-19とスコア的にも接戦でした
 そうですね。前半20分くらいまでに3本のトライを立て続けに取られてしまって、少し諦めてしまうようなシーンもあったんですけど、そこで黒木(健人副将、教3=宮崎・高鍋)がいいディフェンスをして、BKのサインプレーでトライを取ったんですね。そこで首の皮一枚繋いで、慣れてきて徐々に自分たちのプレーが発揮できるようになりました。 
 いま考えると、帝京大戦も最初は同じ展開だったなと。地力の差があったとしても、ゴール前スクラムの場面や、ラインアウトモールの場面というような勝負のアヤを取れていれば、とは思いますね。まだまだ地力がないのでそこを上げていくのは必須ですが、昨年のチームの力ではそこを取れた試合では良いゲームが出来、そこを取れないと大敗してしまうというブレ幅が大きなチームでした。ヤマハ戦はその意味でそのアヤを取れた試合でした。  
 ただ総じて言えることは、まだまだ地力が足りないということですね。

――対抗戦の中で日体大には45-40という薄氷の勝利でした。その試合を振り返っていかがですか
 筑波大戦後の一か月は次のターゲットの帝京大学戦に向けて身体づくりにもう一度取り組みました。ですので、チーム練習はほとんどしていません。大きなものを得たかったので、この期間をそのようにしました。そんなに気にしてはいませんでしたが、やはりいま振り返るとブレ幅の大きさを表していた試合でした。
――帝京大戦は大敗となってしまいました
 スコアが絶対なので言い訳になってしまうんですけど、帝京大戦では自分たちの力の差以上の大敗を喫してしまいました。自分たちの強みを出す、相手の強みを出させない、帝京戦に向けてアタックで更新したものをしっかりと出す、という三つの軸で試合に臨みました。 
 しかしながら更新したアタックの精度が低く、それによって相手に強みを出させてしまって、それがスコアにつながってしまいました。その結果、自分たちの強みとしてきた部分が弱く見えてしまった、ということだと思います。そういったことも選手にはミーティングでフィードバックしましたし、何十回と試合を見返しましたけど、結論はそこでしたね。

――監督としてもショッキングな敗戦となったのではないでしょうか
 結果自体にショックだったというよりも、自分の甘さに対して辟易としていたという感じですね。正々堂々戦うことを誓いますと言って、これだけやったのなら大丈夫だ、と思って試合に臨んでいました。でも、試合を分析してみると、帝京大がやってきたことというのは慶大戦と全然違ったんですね。何が言いたいかというと、もちろん地力という部分は必要なんですけど、その上で相手を分析して一発の勝負に勝つ、ということが何よりも大事だと思うんです。そこに対するアプローチが甘かった。その自分の甘さに対して後悔しました。

――そんな試合の後には早慶戦、早明戦が控えていました。それらの試合に対してはどうやって調整していったのでしょうか
 早慶戦、早明戦というのはワセダとして戦う場でもありますし、そこに対してしっかりといい準備をして、男になる、ということがその後のチーム力に大きく影響してくると思います。何が何でも試合に勝って、乗り越えるということが重要になってくると思います。早慶戦は帝京戦直後の試合だったので、チームディフェンスの部分で甘いところがありました。ただ大敗後にもかかわらず選手たちはよくやったと思います。選手たちには何が何でも勝て、ということを伝えていました。慶大も明大と帝京大を相手にいい試合をしていたので、世間の論調としては慶大が有利でしたね。それでも勝てたのは軸をぶらさずに選手がそれを信じてしっかりとやったからでしょう。
 
――それぞれどんな試合だったのでしょうか
 早慶戦は根性勝ちでしたね。ファーストタックルは甘かったですし課題の多い試合でした。早明戦では、チームディフェンスのスペーシングの部分を修正できました。自分たちのかたちが一定程度出せたのかなと。スクラムでも認定トライを取れて、ブレイクダウンも良かったですね。そういう意味では、早明戦のほうが手応えがありました。

――全国大学選手権の初戦に向けて、いい内容で対抗戦を終えられたように感じました
 そうですね。早明戦は内容も良かったですし、2週間空くことでしっかりと準備もできました。ただ、対戦相手が同志社さんに決まって、鬼門だなと感じていました。花園での同志社さんは全然違いますので。 
 それに向けてしっかりと対策をして、万全の準備をして臨んだんですけど。アウェーだとか、最初に連続でトライを取られてしまったことだとか、先ほど申し上げたような勝負のアヤというものは来ていながら、そこを取り切れるだけの地力がまだなかったということですね。

――やはり関西の会場で関西のチームと試合をする、ということは大きな影響があるのでしょうか
 選手たちは、想定以上のプレッシャーを感じていたと思います。自分たちのホームでワセダを迎え撃つという構図の同大にとって、それは男になる舞台なんです。ワセダにとっては早慶戦や早明戦のようなものなんです。そういった状況になるということは選手たちにも事前に何度も伝えてはいましたし、その上で準備をしていました。あと、早明戦が終わった段階で、ブレイクダウン周りの反則について少し注意を受けていました。アゲインストな状況でペナルティーをしてしまうと相手のペースになってしまうので、そこに対してはかなりセンシティブになり、しっかりとルールに則ったプレーを練習していました。ただ、その裏腹で、選手たちのアグレッシブさを欠いてしまった要因になってしまったのかなとも感じています。

――一年間を通じた強化プログラムの出来はどうでしたか
 中・長期的な強化を見据えて強化プログラムもビジネスモデルもつくっていかなければならないのはもちろんです。ただこのクラブにとっては、一年一年が勝負ということもまったくもって忘れてはいません。日本一になるかならないか、が全てです。そういった意味では不甲斐ないですし、応援、サポートしてくださった皆さんの期待に添えなかったことは非常に申し訳なく感じています。  
 ただ、しっかりと種をまいていますし、この一年間の成果に上積みしていけるという点で、2年目のほうがさらにプログラムの成果が出せると確信しています。一日一日、着実に続けていき、土台を強固なものにしつつ、さらにより良いものして、次の一年でも勝負をかけていきます。

――『スクラム・チームディフェンス・ブレイクダウン』という三つの柱について、その強化具合はどう評価していますか
 まだまだ発展途上ですね。特にチームディフェンスに関しては、最も改善しなければならない点だと思います。失点も多いですし、システムはもちろん、選手たちのディフェンスに対する意欲という部分もしっかりと見直していきたいです。サントリー時代からエディーもよく言っていますし、他競技になりますがバイエルンミュンヘンのグラルディオラも同じように言ってますが、チームディフェンスにおいて重要なことはシステムルールの構築と理解、あとは相手のボールを必ず奪い返すんだという強い意志とハードワークだと言っています。帝京さん東海さんのスタッツと比較しても選手の意欲の差があることは明白です。ここはアプローチも変えますが、選手にもより強い意志を求めていきます。 
 ブレイクダウンに関しては、チームディフェンスにも紐づいていきますが、ディフェンス時のブレイクダウンでもっとアグレッシブにやっていきたいなと。目的はボールを取ることなんですけど、手段が目的になってしまっているので。よりアグレッシブに選手たちがブレイクダウンに向かえるように、選手の判断力も高まるような方法を提示し、しつこくやっていきたいと思います。

――スクラムに関して、試合を重ねるにつれてレフェリングとの兼ね合いも難しくなっていったように感じました
 そうですね。セットプレーが強くならないと話にならないということは明白なので、どこのチームも力を入れてくると思います。そういった中で、レフェリーもそこは勉強していると思います。ただ、それまでのチームにおけるスクラムの位置づけや対戦相手との力関係を踏まえたうえで、積極さを削ぐようなことはしてほしくないですね。もちろん、それがイリーガルなものであってはいけないので、我々としてはルールに則ったうえで正々堂々とやっていきたいと思います。

――今季からフルタイムコーチを多く取り入れました。来年も同じようなメンバーでやっていくのでしょうか
 基本的にはそうですね。スタッフはみんなハードワーカーばかりです。もっともっとの欲求が非常に高く良いユニットになっています。ただ当然ながら結果を出すための集団です。自分たちの足りないところを補ったりする意味で、新しいタスクを担当する人に来てもらうかもしれません。

――チーム内で、ラグビーに対する考え方や態度も大きく変わった一年だった印象ですが、振り返っていかがですか
 僕の中では当たり前の、最低限の基準を選手たちに提示しただけです。当然、このクラブにいる人間はラグビーが一番だろうし、日本一にならなければいけないということが一番だと思います。これが青春のすべてなんですよ。そうでなければならないと思いますし、その上での選手たちの基準というものをただ示しただけです。特別なことをやったつもりはないですね。このクラブの中でそれが当たり前になりつつあるのかな、という実感はあります。頑張っているんだから認めてください、という選手はいなくなりましたね。ただ、もっともっとやっていかなきゃいけないものだと思います。そういうことを追求していくことによって、心もつくられていくんだと思います。

――今季は戦力面のところで、FW前5人のうち4人が抜けてしまいます。それについてはいかがですか
 それらのポジションに関しても、2番手、3番手の選手たちも育ってきています。問題視していません。体づくりのプログラムも回していますし、それができていればどんどん昨年以上の選手が出てくるとは思いますね。  
 鶴川は残っているので、中心になって頑張ってくれるでしょう。

――新入生はFWが多く入部してくるそうですが
 そうですね。今年のリクルートではFWの選手を主に獲得したかったので素晴らしい結果だと思います。当然ですがそれぞれに特徴があって、素晴らしい選手たちだと思います。まずは昨年実施した1年生用の体づくりをしていって、戦える体をつくっていきたいと思います。岸岡がいい例で、入部して3か月くらいで11キロ増えて除脂肪体重で8.5kgほど増えて スピードも落ちなかったですから。彼のポテンシャルもあるんでしょうけど、ああいった土台作りがあったからこそですね。春から一度もケガをしませんでした。そうなれるように、最初のところはしっかりやって、一年目からどんどん活躍してくれればと思いますね。

――食事も大きく変えましたが、それも影響しているのでしょうか
 食事環境を変えたということは大きいでしょうね。どんなものを、どんな量、どのタイミングで、というところがすごく良くなりましたね。

――食事の面も含め、多くのパートナー企業と共に歩んだ一年間でしたが、振り返っていかがですか
 アシックスさん、共立メンテナンスさん、新潟県さんなど、様々な企業、行政、団体様に日本一に向けたサポートをしていただきました。その成果は選手の体づくりのところでも出ています。あと、ケガも少なかったですね。そういう意味ではアシックスさんのプロダクトも素晴らしいんだと思います。クラウドファンディングもやらせてもらって、そのお金は網走の合宿費に充当させていただきました。それによっていい夏合宿を迎えることができて、とても感謝しています。多大なるサポートをしてくださる各企業の方々にも感謝していますし、クラウドファンディングにご協力してくださったファンの方々にも深く感謝しています。

――来年もこういった取り組みは継続、発展させていくのでしょうか
 そうですね。1月23日に早稲田大学の井深大記念ホールでスポーツ科学学術院の平田竹男先生と中村好男先生に座長になっていただき、早稲田大学の鎌田総長と株式会社アシックスのCEOである尾山社長様、スポーツ庁の民間担当参与の由良参事官にご登壇いただき、「大学スポーツの未来を考える」という題目でシンポジウムを行わせていただきました。アメリカのNCAAのようなシステムを参考にしながら国、行政、大学、民間が一体となって日本のカレッジスポーツを明るくしていくと。
  今後、日本版のNCAAというようなものをやっていくために、早稲田大学ラグビー蹴球部がモデルケースとなり、しっかりとしたビジネスモデルを持ってやっていくということが、スポーツの未来にとっても非常に重要だとご登壇していただきました皆様にも激励いただきましたし、そう思っております。2018年に我々ラグビー蹴球部は創部100周年を迎えますし、2019年にはラグビーW杯日本大会、2020年には東京オリンピック・パラリンピックというスポーツのゴールデンイヤーを迎えるうえで、カレッジスポーツを含めた日本のスポーツが飛躍する機会だと思います。そういう背景もありますし、自分たちから発信していろいろな人たちとつながって、一緒に日本一を目指していく、ということに意味があると思います。今後も、皆様の賛同を得ながら目標を達成してくと共に、しっかりとした中・長期的なビジネスモデルもつくっていきます。そういう風にやっていくことがカレッジスポーツおよび早稲田大学のためにも、もっと言えばラグビーおよびスポーツの普及にもなると思っています。ファンの皆様に喜んでいただくためにも頑張っていきたいと思います。

――早大の場合、数年で監督が代わってしまう現状があるかと思います。それについてはどう感じていますか
 正直に言って、厳しいところはありますね。最低でも5年は必要です。結果を出すために5年が必要だということではなく、ほかの面からです。とくにリクルートに関して各高校の監督さんとの信頼関係が重要になります。短期で監督が代わるような大学に手塩にかけた生徒さんをなかなか送り込んでくれません。また、今やっているようにビジネスモデルを作ってやっていくとなると、厳しいです。大学ラグビー界の他大学を見ても、長期政権の監督さんが十数年かけて結果を残しています。青山学院の駅伝の原監督も十数年やられております。種目は違いますがお会いできる機会が多々あると思いますので、機会を設けて原監督にお話を伺いたいです。

――最後に、ファンの皆さんに向けて一言お願いします
 今シーズン、多大なるご支援とご声援をいただきまして、誠にありがとうございました。結果が出ず、不甲斐ないシーズンに終わってしまったことはすべて私の責任ですので、申し訳なく思っています。選手たちは主将の桑野をはじめ、4年生が中心に頑張ってくれたと思っています。そんな彼らを勝たせてあげられなかったということに、本当に責任を感じていますし、自分自身にも憤りを感じています。ただ、グラウンド外の環境も整備しましたし、ハイパフォーマンスユニットの実行、その中での各プログラムの実行により着実に成果が出ております。また選手のマインドも日々の自分との向き合いにより、良いものになってきております。しっかりとした土台はできつつあります。2年目に向けて、その土台をさらに強固なものにしていきたいです。選手の特性やキャラクターも認識していますので、より大胆に、最初から走っていけるのではないかと思っています。今年のチームに期待しか持っていません。しっかりとした絵を描いてやっていきたいと思っています。当然目標は大学日本一です。今後も適宜、情報発信等各媒体上で発信させていただきます。 
今後も引き続き温かいご支援、ご声援のほど何卒よろしくお願いいたします。