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2025
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春季大会 帝京大学戦/観戦記

灼熱の春を笑って終えた。関東大学春季大会最終節、早大・上井草グラウンドで行われた早大と帝京大の一戦は赤黒のジャージーが36-35と1点差の激戦を制した。

試合開始3分、ペナルティーゴールで先制に成功した早大は続く10分に待望のトライを上げる。帝京大相手に先制し、幸先良い立ち上がりを見せた早大だったが20分、22分に帝京大にインゴールを明け渡した。HO清水健伸(スポ3=東京・國學院久我山)が一矢報いるものの、さらに2トライを追加され17-28で前半を折り返した。

後半は立ち上がりにトライを奪われたがCTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)の復帰もあり、勢いづく早大。暑い中でも15人が走り続けた早大が38分についに逆転。1点のリードを守り切り、早大が春の帝京大から白星を上げた。

インゴールに走るNo.8城

大観衆の中、早大のキックオフで始まった春季大会最終戦。立ち上がりから中盤での激しい攻防となり強度を増していく。3分、帝京大のペナルティーでショットを選択した早大はSO服部亮太(スポ2=佐賀工)が中央に沈め、先制に成功した。

続く10分、帝京大アタックのミスに反応したCTB黒川和音(人4=茨城・茗渓学園)が素早くボールを奪うと一気に攻勢に出た早大。敵陣22メートルライン付近のラインアウトから帝京大の硬いディフェンスに苦戦しながらもフェーズを重ね、ラック際の隙を見逃さなかったNo.8城央祐(スポ2=神奈川・桐蔭学園)がインゴールに飛び込んだ。

15分に帝京大スクラムから反則を奪うなど、着実に勢いを増していく早大。

しかし、試合の流れに関係なく得点を奪ってくるのが王者・帝京大だ。20分、キックカウンターからインゴールを明け渡すと、続く22分にもトライ。10-14と、連続得点で逆転を許した。このまま差を広げられるかと思ったが、帝京大のブレイクダウンの反則からチャンスを得た早大はゴール前でFWにこだわったアタックを見せる。帝京大の強力なフィジカルに対しても前に出続け、ついにHO清水がインゴールをたたき割り、17-14とリードを得た。

だが、帝京大はやり返すようにFWのアタックで前半終了までに2トライを挙げ、17-28で前半の40分を終えた。

ディフェンスに仕掛けるFB植木

続くセカンドハーフは立ち上がりから帝京大が追加点。17-35と差を広げられ、不穏な空気が立ち込める。

しかしこの劣勢を打ち破ったのはFB植木太一(人2=神奈川・関東学院六浦)。6分、帝京大のハイボールキックが落下し、植木の前に転がるとドリブルでボールをインゴールまで運んでグラウンディング。22-35と反撃ののろしを上げた。

FL田中勇成(教4=東京・早実)の積極的なブレイクダウンのファイトで反則を奪うなど、着実に逆転の糸口をつかみ始める。17分には帝京大に自陣ゴール前まで攻め込まれるものの、昨季のような規律乱れぬディフェンスで帝京大のペナルティーを誘発し、難を逃れた。

主将のCTB野中がグラウンドに入り、勝利に向けてギアを上げた早大は27分、途中出場のFL久我真之介(文構2=東京・早実)が激しいタックルでキャリアーをタッチに押し出してラインアウトを獲得。2回のフェーズを重ね、一気に逆目に攻めた早大はSO田中大斗(教2=東京・早実)の内側から飛び込んできた植木がブレイク。持ち前の俊足でインゴールまで走りきった。キックも成功し、29-35と1トライ1ゴール差にまで詰め寄る。

31分、田中(大)のスティールで敵陣に入り込んだ早大はWTB池本晴人(社3=東京・早実)やCTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)などがゲインを奪いながら着実に帝京大を追い込んでいく。WTB鈴木寛大(スポ3=岡山・倉敷)のゲインでオフサイドを誘発すると、早大はゴール前でラインアウトモールを形成。右に大きく展開し、植木がインゴールに飛び込んだ。しかしボールをグラウンディングできず、惜しくも追加点とはならない。

しかしゴールラインドロップアウトをキャッチした清水が中央でラックを作ると、ボールを持ち出したのはSH糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)。ゴール中央に逆転を確信するトライを決め、キックも成功。36-35とついに逆転した。

試合時間は残り2分、王者・帝京大は意地を見せるような継続したアタックで早大陣内に襲い掛かる。しかし早大は昨季を彷彿とさせる我慢強いディフェンスでインゴールを守り抜き、最後はノックフォワード。ノーサイドの笛が鳴り、上井草グラウンドは歓声に包まれた。

試合後に勝利を喜ぶ選手たち

試合後は笑顔を爆発させ、うれし涙を流す選手も見られた早大。「目の前の一瞬一瞬を全員が全力で80分通してやり続けた結果」と野中が試合後に振り返ったように、リードしていた瞬間も気を抜かず、劣勢に立った瞬間も最後まで諦めずに戦い続けた早大が勝利を掴んだ。「明大、天理大とに2連敗していたので結果が求められる試合だったが、自分たちなら絶対勝てると思って2週間取り組んできた」(田中勇)。

春の努力を疑わず、最後まで自分たちを信じた結果と言えるだろう。自信をつける春になったが、早大の目標はここではない。全国大学選手権で優勝して、『荒ぶる』を歌う。

この勝利をきっかけに優勝できたと言えるように、早大は鍛錬の夏に臨む。

記事:村上結太 写真:安藤香穂、大林祐太(早稲田スポーツ新聞会)