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Beat Up

2024

対法大戦観戦記

 すべてを懸けたオックスフォード大との激闘から一週間。春先から見せてきた破竹の勢いは完全に消え失せていた。
 まったく前に出ることのできないアタック。いいように走られるディフェンス。気迫十分で挑んできた相手の勢いの前に成す術もなく、開始20分であっさりと4トライを許してしまった。24点というあまりにも大きなビハインド。「今季初黒星か…」。会場全体がそんな空気に包まれた。傍から見ればワセダの劣勢は明らかだった。
 しかし、『ULTIMATE CRUSHER』たらんとするワセダフィフティーンの脳裏に「敗北」の2文字などよぎりもしなかった。「必ず逆転できる。反撃するぞ」。誰からともなく声を掛け合うと、ここから怒涛の反撃を開始。32分、40分と立て続けに2トライを返し、相手を射程圏に捕らえると、後半はいつもながらのショータイム。開始直後に2分にも及ぶ17次攻撃からNO8佐々木隆道(1年)がトライを挙げると、そのキックオフから今度は6次攻撃でノーホイッスルトライ。それまで後手を踏んでいた『ブレイクダウン』の攻防で相手を制圧し、20分で奪われた得点をわずか14分間で奪い返して見せた。
 その後7分にトライを許し、一時的にリードを奪い返されるが、逆に勢いは加速。「取られたら3倍にして返す」を地でいくかのように、CTB山下大悟(4年)、NO8佐々木、FB内藤晴児(3年)のトライで相手を一気に捻じ伏せた。
 0-24という崖っ淵の状況を打破したものは、間違いなく勝ち続けることで得てきた『自信』。「自分たちのラグビーができれば絶対に負けない」。チーム全員がこの思いを再認識した意義はとてつもなく大きいはずだ。<HP委員 疋田拡>

<清宮監督試合後のコメント>
「今週は難しい1週間だった。最初の20分でその部分がでた。モチベーションの問題ではないと思うが、とにかく動きが悪かった。やろうとしたことがまったくできていなかった。後半に点を取ったが決して誉められるものではない。後半になってボールがよくでるようになったのは、法政がラックでボールを抑えるプレーをしなくなったから。ハーフタイムに両監督とレフリーで話してペナルティーだと確認した。ボールを抑えるのと取りにいくのは違うから。ハーフタイムでは相手のディフェンスより前にでることを心がけろと指示した。そうしたらよくなった。現象としてはSHを田原に替えてリズムが変わったように見えるけれど、ビデオを見てみないと分からない。今日出た19人は誰が出てもチーム力は変わらない。先週とメンバーを少し替えたのは経験させるという意味もあった。今日(のチームの出来)はある程度仕方ない部分もあった。相手の実力も分かったしよかった。今日はいい経験。今後はああいう展開にならないように気をつけます」

<試合後、疲労感を滲ませた山下主将>
「今日は最初に受けてしまったところがあった。システムで勝てるだろうというのがあって、個々の激しさの部分で後手を踏んでしまった。後半はその点を修正できた。後半のボール継続が最低限のレベル。日頃からあれくらいやらないと。BKを絡めたプレー、ラインの深さ、浅さ、広さを自分たちで考えるという部分が不足していたので、ボール継続の激しさも含めて今日はいい勉強になった。相手が膝をついてプレーしていたからボールが出てこないという場面もあった。寝込むプレーをよしとされると厳しい。それは反則だから。これからはうまくレフリーとうまくコミュニケーションを取っていきたい。オックスフォードに向けてずっとやってきたから、モチベーションが難しい試合ではあった。取られてもやばいとはまったく思わなかった。こんなときもあるだろうなと思ってやっていた。前半の終わりの方はいい形でいけていたので。やっぱりワセダはチャレンジする気持ちを持たないとダメ。勝ち負けもつかないですし、今日の試合を経験できたのは大きい」

<後半から出場のSH田原耕太郎>
「前半は外から見ていて受けているし、ミスが多かった。練習でやっていることが出来ていないなと思っていた。後半はブレイクダウンで人をかけないで出して、リズムを変えようと思った。前半よりできたと思う。(後半一時逆転されても)焦りは全然なかった。トライはいつでも取れると思っていた。法政が弱くないことは分かっていたし、自分たちのやるべきことをやらないと今日のような展開になってしまう。いい経験になった。対抗戦では優勝はもちろん選手権につながる試合をしたい。昨年とは一味違うところを見せます」

<兄弟で4トライ。大活躍の内藤慎平>
「今日はトライは取りましたけど、自分の仕事はあまりしていないです。法政に勢いがあって、それを少し受けてしまった。ミスやターンオーバーが多くて継続できず、相手に前にでられてしまった。ワセダの形がまったくできていなかった。焦りとかは特になかった。24点取られて逆にやってやろうと思った。攻め続けて取れなかったわけではなかったし、攻めれば取れるだろうと。(兄弟での4トライは)見に来ていた母親が喜んでくれると思います。兄とは気まずいと周りには言われますけど、そんなに気まずくはないです(笑)。だからあんまり気まずい気まずいって言わないでください(笑)。ポジション争いは兄弟だからやりにくいということはない。自分は自分でできることをどれだけやれるかですから。前に強く勝負して一歩でも前に出られるようなプレーをしていきたいです。FBとしてチームに安定感を与えられるようにがんばって、早慶戦、早明戦に出たいです」

<大器の片鱗を見せた佐々木>
「今日は個人的にはノックオンをしないというのが目標だったからそれを達成できて満足です。ただ、チームとしてはダメでした。集中していなかった訳ではないですけど、相手の勢いに押されてしまった。ずっと法政ペースだったけど、いつか流れがくるからそれまでは我慢だと思った。前半の最後に晴児さんがスパーンと抜けたのが大きかった。ああいうプレーがひとつ出るだけで大分違う。実は試合のことはあんまり覚えてないんですよ。みんながボーっとしていたから盛り上げようと熱くなってました。ズルズルいくとまずいんで。(2トライについて)ワセダのNO8はあのくらいできて当たり前です。夏の京産大戦で経験しているから気持ちの問題ではなかったと思う。やっぱりディフェンスで受けるとダメ。今日はあの状況を打開できたのは大きい。いい経験になったと思う。まあ、ワセダはそれだけのチームですから」

<ラストイヤーにかけるフッカー阿部一樹>
「今日はやろうとしていたことができなかった。軽いプレーが多かった。点を取られても焦りはなかった。試合中に修正できたのは収穫。ただ、もっと早く修正できるようにしないと。スクラム、ラインアウトはとにかくセットが遅かった。ラインアウトも相手によってパターンを変えないといけない。後半はいい攻めができたと思う。今日はいい経験になった。今年こそ最後だし突っ走るだけ。セットプレーを意識して、プラスしてフィールドプレーもがんばりたい」