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Beat Up

2024

対リコー戦・観戦記

 満員の秩父宮を包み込む大ワセダコール。点差が離れても、勝敗が決しても赤黒への声援は80分間止むことはなかった。この大声援こそワセダが愛されていたことの証。『ラグビーを通じて世の中に夢と希望を与える』。就任以来、清宮監督が掲げるファーストミッションはラストダンスでも実践された。
 乾坤一擲のガチンコ勝負。勝利を意識させる時間は確かに存在した。ワールドクラスの本物・FBオズボーン、NO8フェヌキタウにこそ崩されたものの、一度ボールを手にすれば、ワセダの生命線『高速アタック』が炸裂。前半21分、30分(故意のオフサイドによる認定トライ)とトライを挙げ、互角の勝負を演じて見せた。特にフランカー・羽生が挙げた21分のそれは今シーズンのベストトライとも言うべき特筆もの。ペナルティーからの素早い仕掛け、FWによるラインブレイク、涌き出るサポート。そこにはワセダのエッセンスすべてが凝縮されていた。「取られたら取り返す」。思惑通りの展開。確かな手応え。果てなく遠いと思われた社会人からの勝利が手の届くところにちらついた。
 惜しむらくは学生相手では顔を見せないファーストタックルの甘さと、後半開始直後の集中力の欠如。リコーの先輩・小森も「あれっという感じだった」と振りかえったように、僅か8分間の間に3トライを献上。勝利への野望は瞬く間に打ち砕かれた。赤黒を襲う絶望感…。
 それでも攻める姿勢が失われることはなかった。「うちが31点も取られることはなかなかない。学生とは思えない素晴らしいものだった」と敵方・山品主将も舌を巻いたアタックは、最後までその威力を発揮。華麗なBK展開から3トライを奪い返し、学生王者として、何よりワセダとしての存在感は示された。
 社会人撃破まで視野に入れたチームスローガン『ULTIMATE CRUSH』の完遂こそならなかったが、『山下組』の歩んできたビクトリーロードの輝きは決して失われることはない。聖地・東伏見との別れ。新天地・上井草への移転。13年ぶりの大学日本一、『荒ぶる』。新たなる歴史の創造者・『山下組』のこの1年に大きな拍手を…。<HP委員・疋田拡>

 <清宮監督試合後のコメント>
「お客さんからの拍手は今日だけではなくて、今シーズンのワセダに対して頂いたものだと感じている。日本選手権の意義についてよく聞かれるが、ノーサイドの瞬間やってよかった、いい試合だったと思った。失点に関してはポジショニングが悪いというのが原因だった。リコーもベストメンバーで来たし、時期的にも難しい。試験期間には公式戦は入れないで欲しい。(大学選手権)準決勝、決勝位のチーム力、状態なら社会人相手でも勝負になるというのが試合をしてみての手応え。まぁ女々しいからこういう話は辞めにしましょう(笑)。社会人も仕事しているわけだし…。31点取れたのは十分。ただ、攻めた時にもっとトライを取らないとダメだった。ワセダのミスもあるし、ボールをコントロールさせない腕力の強さが相手にあった。BKでもっと何とかできるようにしないとダメだと感じた。今シーズンは大学日本一になったし、よかったんじゃないかな。十分。(4年生には)13年ぶりに優勝した偉大な4年生お疲れ様と言ってあげたい。最高の同期になって欲しい」

<1年間チームを引っ張りつづけた山下主将>
「優勝してから2週間位は13年ぶりの優勝の余韻に浸っていた部分もあったけれど、最後の2週間は気持ちを入れてやってきた。赤黒を着る以上は勝たないといけないので、今日はいい試合だったとは思わない。同じ土俵で戦うわけで、僕たちの努力が足りなかったという感じです。後半の最初にトライを取られたのが痛かった。47点取られた辺りで勝負あったという感じ。相手のシンビンもFWの選手ということもあって、それほど影響がなかった。社会人はスイープも激しく、コンタクトも強かった。大学選手権の時と今とを比べて力がどうというのは正直個人差もあるし分からないけれど、チームとしての精度は落ちていたとは思う。昨シーズンの日本選手権と比べては接点の部分は今年の方がよかった。うまく当たれなくてもボールが出せた。今日は相手の反則が異様に多かったですが…。僕個人のプレーとしては全然ダメですね。今日の負けはものすごく悔しい。負けてしまったけれど、このレベルを体感できたことは来年に繋がるし、ここに勝つことを目標にして練習していけば、もっと強くなれると思う」

<副将・上村康太>
「4年間最高の仲間とラグビーができてよかった。今日は楽しむというよりも疲れた。コンタクトを連続しているうちに体力を奪われた。もっと球を出せればトライも取れたと思う。ブレイクダウンでやられて、ワセダがやりたいことを相手にやられてしまった。多くのファンの方の声援は本当にありがたかった。感謝の一言。力になった。4年生として下級生に伝えるべきことは伝えられたと思う。これからも伝統としてそれを受け継いでいってほしい。試合後バックスタンドに挨拶に行った時、自分の赤黒の胸のエンブレムを見て、もうこのジャージーを着ることができないと思うと涙がでてきた」

<サイドアタックの鬼・高森雅和>
「今日はラインアウトが取れなかったことが悔しい。取るべきところで取れなかったのはラインアウトリーダーとしての僕の責任。これまではアタックで他の奴がいい球を出してくれて、自分が突破することができたけれど、今日はそこができなかった。自分もスイープをしにいかなければならない場面が多かった。今まで周りがいかによかったのかが、改めて分かった。4年間本当にいい仲間とラグビーができた。入学した時はロックになるとも、レギュラーになれるとも思わなかったけれど、最後には全部の試合に出ることができてよかった。ファンの方の応援はとても力になった。後輩のロックは普通にやれば僕なんか余裕で超えられると思う。いいプレーヤー。悩むことも色々とあると思うけれど、いいプレーをしていって欲しい。明日からまたトレーニングを始めます。僕のラグビー人生は今日始まったばかりです。赤黒が着られなくなるのは寂しいけれど、仕方ないです」

<炎のタックラー・羽生憲久>
「赤黒を着るのが最後だと思うと寂しい。ラスト1年間は残された時間を一生懸命生きようと思ってやってきた。今日負けてしまったのは本当に悔しい。もっとできたと思う。あまり満足はしてません。ファンの声援はとてもありがたかった。こんなに応援してもらえるのは一生に一回だと思います(笑)。僕自身はどうだったか分からないけれど、ワセダの3列は日本一でなければダメ。前5人がスクラムがんばってくれるから、3列はタックルとフィールドプレーでがんばらないといけない。自分のプレーは後輩に伝えられたと思う。いい選手が一杯いるので今後も楽しみです」

<学生最強プロップ・大江菊臣>
「まだ終わったという感覚はない。スクラムはあれだけいければよかったと思う。試合には負けてしまったけれど、スクラムでは勝った。常に下からの突き上げを気にしながらレギュラーを死守し続けて、今はホッとしている。2年間遠回りしてワセダに入ったかいがあった。後輩にはスクラムで絶対に負けるなと言いたい」

<5年目の正直・阿部一樹>
「試合後の円陣で大悟も言っていたように負けは負け。やっぱり勝ちたかった。今日は今までで一番と言えるようないいプレーもあったし、自信のつくプレーができた。パフォーマンスとしては合格点だと思う。今年1年本当にあっという間だった。夢中で駆け抜けた1年だった。もう赤黒が着れないと思うと寂しい。留年して部に残って本当によかった。みんなに感謝している。特に同期のみんな(左京組)には今年1年暖かく見守ってくれてありがとうと言いたい。決勝の日にみんなに書いてもらった色紙は一生忘れない。後輩にもラグビーが好きならがんばれと言ってあげたい」

<魅惑のパサー・田原耕太郎>
「これで最後だと思うとやっぱり寂しい。今年は本当に最高の年だった。チームに残ってよかった。今日の試合はもっとトライが取れたし、抑えられたと思う。タックルで1発で止めるという部分が足りなかった。月田さんとの対決はあまり気にならなかった(笑)。ハーフはワセダの生命線だから後輩にもがんばって欲しい。自分の技術はしっかりと伝えた。完璧ですよ(笑)」

<トライゲッター・仲山聡>
「4年間終わったなぁという感じ。そう思うと悲しくなってくる。試合後に流れている音楽もヤらしい感じで余計寂しくなった(笑)。『荒ぶる』を歌うこともできたし、充実した1年だったと思う。来年はバックスリーももっと高いレベルでの激戦になると思うから、切磋琢磨してがんばって欲しい。やっぱり一緒に練習してきた奴等にレギュラーになって欲しい。後輩には僕よりスゴイ奴が一杯いますよ」

<不動の司令塔・大田尾竜彦>
「このチームはみんなよく走るし、強いしとてもいいチームだった。今日で終わってしまうのは残念だけれど、やっぱり時期的に難しい面があった。社会人は正面でぶつかった時に強かったけれど、アタックは通用していたと思う。ゴール前ペナルティーからサインプレーで取ったトライは、山岡が余っているのが視界の端に一瞬見えたのでパスを放った。いいトライだったと思う。来年はとにかくタックル。ファーストタックルでもっと相手を止められるようなチームにしたい。頭にあるのはそこだけ。他の部分では社会人相手でも十分に通用したと思う」

<必殺仕事人・川上力也>
「今日はワセダのやりたかったことが最終的にはできなかった。ディフェンスもできなかったし、負けるべくして負けた感じ。自分は8月からの半シーズンしかやっていないので、偉そうなことは言えないけれど、あらゆる面で今年は進歩できたと思う。ひとりひとりの激しさが特に伸びた。自分としては色々と悩むこともあったけれど、優勝できてよかった。強くなった部分はもちろん、勝てなかった時にもいい部分はたくさんあったので、来年うまく継承していきたい。特に大事にしたいのはラグビー以外の面、モラルの部分。戦術とかは清宮さんがいるし崩れることはないと思うので、モラルとかそういう面から崩れないようにしていきたい。今思うと4年生は偉大な人たちだった」

<後輩との対戦に感無量!99年度主将・小森允紘>
「今年のワセダは本当に強かったと思う。今日も強かった。もっと競った試合になると思っていた。後半の最初に何故切れてしまったのか不思議。あそこはもったいなかった。自分がキャプテンの時の1年生が優勝してくれたのは本当にうれしいし、今日は対戦できて幸せだった。ラグビーをやっていてよかったなぁと思えた試合だった」