これまであと１歩のところで優勝を逃してきた東日本大学セブンズ。春から全開の『大田尾組』が赤黒パワーでついに栄冠を勝ち取った。
　１回戦・山梨学院大戦、準々決勝・慶大戦をともに３１－７とスコア上は圧倒したものの、その内容はお粗末そのもの。まったく確保できないキックオフにリズムのないアタック。プレート優勝を果たしたジャパンセブンズとは似ても似つかぬ低調ぶりに、不穏な空気が漂った。
　「このままではまずい」。誰もが危機感を持って迎えた準決勝。帝京大、法大から勝利を挙げ、一躍優勝候補に踊り出た流通経済大を前に、ついにワセダが本気になった。ジャパンセブンズで初めて使用し、未だ負けなしのセカンドジャージを脱ぎ捨て、決勝戦のためにとっておいたファーストジャージーを着用。「赤黒を背負うプライドを持て」（今泉監督）。ワセダの象徴、誇り高きエンジと黒のジャージーが選手たちを蘇らせた。
　「めちゃくちゃ集中してましたから」（大田尾主将）と言う通り、それまでの２試合ではほとんど取ることのできなかったキックオフをことごとく確保。開始３３秒の山岡正典（４年）を皮切りに、怒涛のトライラッシュを展開した。後藤翔太（３年）を中心としたスピード感溢れるアタックは上井草グラウンドで練習してきた形そのもの。ついに本領を発揮した赤黒軍団が、ボールをほとんど触らせない完璧な試合運びで完膚なきまでに相手を叩きのめした。

　極限の集中で「大一番」を制すると、大東大との決勝戦は「勢いで勝負」（大田尾主将）。「もうワセダとはやりたないと言う位、外人に刺さったれや！」。佐々木隆道（２年）の号令の下、開始からビッグヒットを連発し、トンガパワーに真っ向から立ち向かった。粘り強いディフェンスから一瞬のスキを突き、前半をリードして折り返すと（１４－７）、後半も残る気力を振り絞り勇敢なディフェンス。裏に抜け出した外国人選手に後藤が飛びつくなど、崩されても最後の一線だけは根性で守り切った。
　そして我慢に我慢を重ねた終了間際に、正木健介、山田智久の４年生コンビがキレキレのステップから立て続けにトライをゲット。最後の最後に４年生がゲームを決め、ワセダに歓喜をもたらした。ついに手に入れた大学セブンズ初タイトル。「仲間が見ている中みんなよくやった。この勢いで１５人制もやってやろうぜ」（今泉監督）。新たな自信を手にしたワセダ。その『進化』はまだまだ終わらない。＜ＨＰ委員　疋田拡＞

＜苦節３年、ついにセブンズタイトルを手に入れた今泉（今日だけは敢えて）監督＞
「１年目は自分もセブンズのコーチングがあまりうまくできなくて、結果がでなかったけれど、選手と共に成長して優勝を勝ち取ることができた。今年はグリップディフェンスができるようになったのが大きい。同じ７人のはずなのに何でワセダはこんなにいるのと思わせることができたと思う。試合ごとに行ったビデオミーティングも大きかった。ワセダの学生のいいところはみんなまじめなところで、こうしろと言ったことがすぐに修正できた。本当に変わったと思う。今日も最初はどうなることかと思った。小吹もだんだんチームにフィットしてきてよかったと思う。学生のおかげでセブンズのコーチングに自信が持てるようになった。今年負けたのは三洋とヤマハだけだし、よくやったと思う。できれば本気の関東学院と対戦したかった」

＜１年ぶりの赤黒、ついに帰ってきたスピードスター・小吹和也＞「今日は久しぶりの赤黒で楽しかった。ケガも完全に治ったし、やっと戻ってきたという思いだった。コンタクトも初めは怖かったけど、今はもう平気です。今日は初めの方はどんどんいけたけれど、途中からは抜ききれなかった。１５人制でも最後に勝負できるかできないかが大事だから、そこを意識していきたい。ケガをしている間は本当に辛かった。昨年は環境もすごくよくなって大事な年だったのにチャンスを逃してしまってとても悔しかった。隆道、市村、青木、今年はジャガー（松本）も試合に出ているから自分も負けられないと思っていた。出ているのはみんなＦＷだし、ＢＫも誰かいないといけないと。昨年悔しい思いをした分、今年はＡチームで活躍したい。ポジション争いは厳しいけど、やりがいもある。スピードはもちろん、自分としてはＦＢで勝負していきたいので、ディフェンスでもしっかりアピールできるようにしていきたい。今日は兄貴（法大・祐介）と対戦したかったんですけどね。大学選手権の楽しみにしておきます（笑）。今日は最後ヘロヘロでした」

１回戦　ＶＳ山梨学院大（３１－７）
先発：正木健介（１Ｔ）、山岡正典（１Ｔ）、佐々木隆道、後藤翔太（１Ｇ）、大田尾竜彦（３Ｇ）、小吹和也（１Ｔ）、山田智久（１Ｔ）
交替：今村雄太（１年、←正木）、矢富勇毅（１年、←後藤）、菊池和気（３年、１Ｇ、←大田尾）