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Beat Up

2024

対帝京大B戦(Jr選手権)・観戦記


 「色々あったけど…、正直ホッとした…」。重圧から解き放たれた虚脱感。久方ぶりに訪れた安らぎの時。キャプテン・正木健介の表情が『激動の3ヶ月』すべてを物語っていた。万感のタイトル奪取…
 「このタイトル絶対に獲るぞ。一番大事なのはハートだ。気持ちで勝ってこい」(清宮監督)。連覇の懸かった大一番。ワセダを支えたのは、周到に準備されたゲームプランでも、確固たる自信でもなく、勝ちへのこだわり、受け継がれる熱いハート。「ワセダは気持ちで勝つチーム」。いつの時代も変わらない、不変の真理を見事に体現して見せた。
 チームを率いる正木健介、そして全部員の思いを乗せ、万全のスタートダッシュ。開始4分、ゴール前ラインアウトからの仕掛けでSO安藤栄次(3年)が判断よくインゴールへ飛び込むと、多彩な攻めで相手を翻弄。ペナルティーからの速攻、フランカー東条雄介(1年)のビッグゲイン(この日の東条はキレキレ)、相手の穴を見逃さず、WTB菅野朋幸(1年)を走らせた司令塔・安藤の的確なキック…。細かいミスも「気持ちで」カバーし、最高の形で前半を折り返した(28-7)。
 しかし、連覇への重圧か、「ペナルティーが多くて、苦しかった」(安藤)と言う様に、後半に入ると状況が一変。開始早々、相手のミスに乗じてCTB菊池和気(3年)がトライを挙げたものの、その後の10分間で3トライを献上し、瞬く間に9点差(35-26)に迫られてしまう。執拗なゴリゴリに押し込まれるFW、マイボールラインアウトの喪失…。11月9日の悪夢の再来、一転不穏な空気が立ち込めた。
 「やっぱり最後は4年生ががんばらないと…」。この苦境でチームを救ったのが、途中出場の4年生フッカー竹本佳正。42-26として迎えた土壇場31分、2人を交わしウラに出たSO安藤を抜群のコース取りでフォローすると、インゴールへ歓喜のダイブ。「あれはいいトライだった。褒めてあげてください」(副将・川上力也)。ケガで戦列を離れていた鬱憤、そして何より4年の意地が詰まった会心のトライで、至上命題・Jr選手権2連覇を決定付けた。
 「お前ら優勝なんだから胸を張れ、もっと喜んでいいんだぞ」。7分ものロスタイムの末、2つのトライを許したことへの後ろめたさから感情を表に出さない選手たち…。しかし、狙って獲ったビッグタイトル、満面の笑みで迎える指揮官の一言で喜びを爆発させた。
熱狂のスタンドから沸き起こる大『奇人』コール(正木の愛称は『奇人』)。繰り返される歓喜の胴上げ。12月23日、ちょっぴり早いクリスマスプレゼントに『チームワセダ』がひとつになった。
 2度の敗北、不調のどん底、幾多の困難を乗り越え、掴み取った一足早い『V2』の称号。残るターゲットは、もちろん大学選手権対関東学院大。乾坤一擲、一撃必殺、『大田尾ワセダ』は狙った獲物は逃がさない…<早大ラグビー蹴球部広報 疋田拡>


<終わりよければすべてよし ゲームキャプテン・正木健介>
「色々あったけど、優勝できて嬉しい。今日の試合でもチームとして足りないところはたくさんあったけれど、とにかく勝つことが大切だったからよしとしたい。今日はみんな気持ちが入っていた。圧勝続きだった昨年と違って、2回負けたり、いい形で勝てなくて悩んだ時期もあったけど、今週はずっといい練習が出来ていたので、迷いもなく、自信を持って試合に臨めた。ダメなところもあったけれど、最後は4年生もがんばったし、この優勝はキャプテン冥利に尽きる。まだ実感がないというか、嬉しさがそれほど沸いてこないです。終わって正直ホッとしました(笑)。色々とありましたけど、終わりよければすべてよし、劇的な優勝でよかったということで(笑)。ワセダにとってもいい優勝だったと思う。あとは赤黒を目指して全力でがんばるだけです。とにかくもう最後なので」

<途中出場でダメ押しのトライを決めたフッカー竹本佳正>
「トライは狙ってました。SO周辺を攻めようという話をしていたので、まぁプラン通りです。いいところで取れた。(11月16日の)関東戦でメンバーに入ったのにケガで出られなくなってしまった上に、3日前までDチームだったので、今日は気合が入っていた。FWに4年生が自分しかいなかったので、とにかく引っ張ろうと。後半はかなりボールに絡んでいたのに、取りきれなかった。最後までこだわりを持つことが大事。そうしないと結局は継続されてしまう。その辺が課題なんだと思う。ラインアウトもなくて、スクラムもチームとしてイマイチで、自分のプレーに満足はできなかったけれど、勝てたことは素直に嬉しい。最後は相当きつかったですけど(笑)。もう本当に最後だし、4年生が意地を見せないといけないと思っている。自分としても最後まで赤黒にこだわっていきたいし、他の4年生もまだまだこれからだと思っているはず。やっぱり最後は4年生ががんばらないと」


<7本のコンバージョンすべてを成功させたSO安藤栄次>
「今日のゲームはしんどかったです。ずっと下のチームにいて、鬱憤も溜まっていたし、不甲斐ない自分にイライラしていた。今日はいいプレーもあったけれど、もっとCTBとかをうまく使ってBKを動かしたかった。その辺がまだまだです。後半はペナルティーが多くて苦しかったけど、勝ててよかった。これから上を目指してがんばりたいです」

<『ガッツ』溢れるプレーで攻守に奮闘したフランカー東条雄介>
「今日はケガ明けということもあってあまり走れず、悔いが残る。周りが言うほどタックルにいけたという感じはない。自分のミスタックルからトライされてしまったし、もっとできたはず。アタックはサボっていたらボールが来た(笑)。正木さんへのラストパスももう1本通っていたら最高だったんですけどね。試合後に後藤さん(コーチ)から気の抜けている場面があるからもっと集中しろと注意された。そこが自分の課題。今はケガ人も多くて、自分にとってはチャンスだと思うので、とにかくがんばりたい。他の一年にも負けたくないですから。今日は相当辛かったですけど、勝ててよかった。一年目から優勝を経験できたことは自分にとってプラスになると思う」