最後の最後は、どこかで見たようにFWが慎重に慎重にボールを守り、誰にも触れられない真横にタッチ―。ボーナスポイントを犠牲に、万が一の敗北を消し去る超現実路線。ジュニア選手権第3戦・対東海大。『豊田組』セカンドチームは、理想と現実の間で揺れながら、キッチリ勝利を物にした。
この日の白装束・ワセダは入りからなかなかのグッドパフォーマンス。SH榎本光祐がテンポよく、早く、長いパスを放り、自慢のBKがガンガン前へ。フランカー中村拓樹(後半途中交代もこの日は抜群!)、ロック岩井哲史、No8佐藤大志ら勤勉なFW陣がこれに呼応し、実にワセダらしい高速アタックを展開した。5分、ゴール前ラインアウトからこの日抜群の存在感を見せたCTB坂井克行(相当なワクワク感!)がノータッチであっさりトライ。キックオフ、自陣アタック、中盤アタック、その後もチームスローガンどおり『Dynamic Challenge』の連続で、一方的に攻め立てた。「前半15分くらいまではすごくよくて、これはいける!と思いきや…」(ロック岩井哲史)。「自陣に入られるイメージがまったくなかったんですけど…」(プロップ山岸大介)。
しかし、入りからの圧倒ムード一転、17分裏へのキックを処理したSH榎本が横走りの間にインゴールで捕まると、ボールまでこぼしまさかの失点。攻め続けながら時間の問題と思われた次の一本がなかなかでず、最初の自陣でミスからトライを奪われる…。あらゆる局面で相手を上回りながら、それをスコアに反映させられず、これを機にいつしかゲームは拮抗した。
ここからは常に先手先手を取り、主導権こそ渡さなかったものの、ガクッときたのか、ミスとペナルティを連発。このパス一本が通っていれば…。ここでクリーンボールが出ていれば…。19-12で迎えた後半5分には幻のトライ(ビューティフルアタックで試合を決め、ボーナスポイントをゲット!と思いきや無情にもスローフォワード…)。どこか噛み合わないまま時間が過ぎ去り、徐々に「圧倒」から「まず勝利」にターゲットは切り替えられた。素晴らしい入りがウソのよう。ミスするうちに堅くなりすぎてしまったか。「今日はファーストからよかったし、最初の最初はいいチャレンジをしていたけれど、途中から普通にやってしまったのが、こういうスコアになってしまった要因。学生たちにはミスがあっても守るのではなくて、チャレンジして流れを掴むということを勉強して欲しいなと。もったいない試合だった」(中竹監督)。改めて…、今年のスローガンは誰が何と言おうとも、『Dynamic Challenge』!
「慣れないことをしてしまった」「いらないペナルティが多かった」等々、試合後選手たちからは反省の声が次々挙がったものの、最後は現実路線に切り替えながら、ベリーグッドチーム・東海大を下したことは確かな成長。「帝京ウィーク」を前に最低限のノルマは果たした。あとは大一番をどのように戦うか。「今日の試合をこれからに生かしていって欲しい。夏にCDは完敗しているからそのリベンジ。もちろんABも強い気持ちで臨む」(中竹監督)…。ついに迎える11月第一週。やるか、やられるか。いよいよ『豊田組』の真価が問われる―
<改めてチャレンジの重要性を訴える中竹監督>
「今日はファーストからよかったし、最初の最初はいいチャレンジをしていたけれど、途中から普通にやってしまったのが、こういうスコアになってしまった要因。学生たちにはミスがあっても守るのではなくて、チャレンジして流れを掴むということを勉強して欲しいなと。もったいない試合だった。もっとチャレンジして欲しかった。それができないのは、よくも悪くも今のBの実力なんだと思う。スキル的にもそうだし、接戦でこそチャレンジしていくこと。それを次以降の対戦に生かしていって欲しい。来週は帝京ABCD戦。夏にCDは完敗しているからそのリベンジ。もちろんABも強い気持ちで臨む」
<4年の意地! 久々のFBで輝きを放ち続けた佐藤晴紀>
「今日はキックオフからチャレンジしていい形、圧倒できていましたけど、取った後にミスして取られて、全体的に簡単な細かいミスを繰り返して、ペースが向こうにいってしまったという感じです。特に後半は敵陣に行きたかったんですけど、HB団とのコミュニケーションがうまく取れずに、ペナルティも重なってずっと自陣。ブレイクダウンも圧倒できていたので、取りどころで取っていれば…という試合でした。もっと点数を取らないといけない展開。それで苦しくなりましたし、リズムも出ませんでした。最後はセットも安定せず、苦しかったです。後手後手な感じで。自分のプレーに関しては…、持ち味である強さは出せたのかなと思います。今日はまずはディフェンスがテーマ。ディフェンスをしっかりして、ターンオーバーからのアタックをもっとしたかったです。もっとディフェンスで前に出ないといけませんでした。次またすぐに帝京戦がありますけど、前半のあの勢いが続けば、点数も取って、いい形で勝てると思うので、まず些細なミスを失くすところから意識してやっていきます。もちろんジュニア選手権も大事ですけど、あくまでも目指すものはAチーム。これから上に絡んでいけるように、自分にできることを精一杯やっていきます」
<試合後は反省… 課題を認識し更なる飛躍を誓うプロップ山岸大介>
「今日はちょっとミスとブレイクダウンのペナルティが多かったなという感じです。それで後ろに下げられて、敵陣から自陣に返されて、またペナルティ。そんな流れで前に出ることができませんでした。入りはすごくよくて、20分くらいは自陣に入られるイメージがまったくなかったんですけど…。また夏合宿のときのように、ターンオーバーされたときのディフェンスへの意識の切り替えが統一できてなかったんだと思います。スクラムは何て言うんでしょう…、2年の夏以降1番をやっていなくて久々に1番としてフル出場、前半はいい形で組めていたんですけど、後半は相手の3番にうまく組まれてしまいました。そこで修正できなかったのが自分の課題です。そこはもっともっと練習していかないとダメだなと。最後は点数が詰まりましたけど、慶應戦のときのような感じはなかったですし、トライを取られることはないだろうと、落ち着いてできていたとは思います。はじめは取れていたセットが途中から不安定になってしまったのは課題です。まだまだ修正する力が足りないんだなと。Aチームであればそこはしっかり対応していたはずですから。マルチリーダー制ができていない証拠だと思います。どうするのか、全員がしっかり考えられるようにならないといけないです。来年4年になる自分たちの学年が今引っ張らないと、来年いきなりやろうとしても無理だと思うので、上の人たちに頼るのではなく、自分たちがやる。そういう意識でないとこれから先も勝てないと思うので、3年生全員でもっともっとしっかり意識してやっていきます」
<ジュニア落ちで開眼? その持ち味を存分に発揮したロック岩井哲史>
「今日は前半15分くらいまではすごくよくて、これはいける!と思いきや接戦をしてしまっていたという感じです。前半の途中からいつの間にかそんな風になっていて、後半はディフェンスが多くて、アタックの時間がほとんどありませんでした。時間の使い方も意思疎通があまりできていなくて、どこかチグハグな感じというか、そこは課題だと思います。そういう展開を招いてしまった1番の要因は、ミスとペナルティ。ずっと攻めているのに取りきれなかったのが1番きつかったです。トライもターンオーバーからのもの(2本目のトライもノックオンが起点)でしたし。前半はBKも前に出てくれて、むしろ出すぎてFWセットできないくらい行ってくれて、接点もしっかりしていてよかったんですけど…。途中からはセットも乱れてしまいました。ゴール前のピンチ(後半20分)を防げたのはよかったですけど、守って時間を使おうとしすぎたというか、中盤もモール。自分としては普通に攻めて、気づいたら時間が過ぎていたという形がいいと思っていたんですけど、慣れないことをしてバタバタしてしまったという感じです。途中からフランカーに回されたとき(中村が退いたことでスクランブル)は、さすがにビビりました…。先週まで一度ジュニアに落ちていたんですけど、そこで周りにランナーが少なかったこともあってか、自分自身ボールをもらう感覚が戻ってきたと思います。ワセダのロックに求められているのは明らかに運動量だと思うので、これからもそこを追及していきたいです。最近は小島さんのコンタクトフィットネスをやっているんですけど、それをやり続けていたら走れるようになってきたというか、成果が出ているので、これからもやり続けるしかないと思っています」
<フランカー中村拓樹、攻守にグッドパフォーマンス!>