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2024
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対関東学院大 春シーズン完走の先にあったもの


 もう後がない後半ロスタイム。自陣に攻め込まれた絶体絶命の苦境でNo8山下昂大が渾身のジャッカル、FB井口剛志のブレイクからWTB中靍隆彰のスピードで一気に敵陣へ。22mラインでペナルティをもらうと、すかさず速攻。再び井口がギャップを攻略し、WTB中濱寛造が歓喜のトライ! 絵に描いたような逆転サヨナラ。さすが絶対負けられない相手として激闘を繰り広げてきたワセダとカントー。これが国立でのファイナルならば、会場が揺れることは間違いなし! ……しかし、最高にドラマチックな展開にも、この日はとてもそんな気分になれなかった。「勝ったのはよくても…、春ずっと課題と言われてきたところは気になりますよね。選手が一番分かっていると思いますけど…」(主将・有田隆平)。
 試合を一言で表現すれば、ミスとため息に包まれ続けた80分。開始早々の2分、軽快な継続からサクッとトライを奪うと、その後も自慢のカウンターを軸に幾度となくラインブレイク。主導権をしっかり握り、試合を決めるのは時間の問題かのように思われた。ところが、そこ取っていれば~の場面でポロリ、そこ放っていれば~のところでファンブル。イーブンボールへの早さ(フランカー中村拓樹!)は見せるも、全体的にキレなく、もっさり。モタモタしている間、逆にカントーに個の力を見せつけられ失点すると、ゲームは意に反して拮抗した。次第に相手1人にきっちりと仕留められ、セットプレーも安定せず…。前半は1本を加えただけの12-7。当然ハーフタイムでは檄が飛んだ。
 迎えた後半、キックオフからの切り返しで「まさかの」ゴロパンを足にかけられる失態を犯す(12-14)と、状況はさらに悪化。直後のキックオフをミス。プロップ垣永真之介のチェンジアングルから大大大チャンスを迎えるも、最後はノックオン。スクラムアタックからCTB田邊秀樹が鋭く裏へ出るも、ボールは地面に。。。気候の問題はあったとしても、とにかくすべてのプレーがエラーで終わるような惨状。「今日はひとりひとりが自分に負けていた」(No8山下昂大)と言うように、相手うんぬんの前に、まずワセダとして~が問われているように思われた。観客席は異様な雰囲気。アカクロはこれでいいのか…。
 それでも、これ以下はないだろうとすら思える内容で勝てたのは、勝利への意欲と、この状況を楽しむ懐の深さと、『岡田ジャパン』にも負けない信念があったから。「ワセダのやろうとするラグビーを最後まで信じてやりきってくれた選手たちには感謝している。この春で作ろうと思っていた土台はできてきた。やろうとするラグビーを貫いたからこその最後のトライ。関東、何人倒れていたか。 あれがやりたいラグビーです」(辻監督)。勝敗を越えたところに、春総決算の「価値」があった。
 もちろん、ミスの多さを改善しなくてはいけないことは百も承知。数段高いレベルで走りきる力、フィジカル、己に克つ力etc まだまだやるべきことは山ほどある。こんなもので満足してはいられない。7月をいかに過ごすか。ここでチームとして変われるか。ついに帰ってくる主将を加え、また新たなスタート。そして…。何たる美しいストーリー、夏初戦は8月16日(月)・関東学院大戦―

<チーム合流へ! 基本スキルの徹底を誓う主将・有田隆平>
「まぁ、勝って春を締めることができたのはよかったと思います。今年1年間勝ち続けていこうと言っているなかで、こうして勝つことができたので。ただ、内容としては、選手が一番分かっていると思いますけど、ミスの部分ですよね。春にずっと言われてきたところが気になりました。今週はテーマに「圧倒」を掲げていたんですけど、それができず、まだまだ課題が多いなという印象です。アタックでは取りどころでミスを何本もしてしまう。ディフェンスに関しても、先週はできていたセットのところが今日はできていなくて、いかれてしまってたなと。7月の練習では、基本スキルのところからです。まぁ、今日出ていた選手たちが一番分かっていると思いますから」

<責任を痛感…体調不良も重なり?グッタリのゲームキャプテン山中亮平>
「完全に自分のミスです…。基本のところで集中できず、ゲームを壊してしまった面がありました。取られたうちの1本は僕のミスですし、ディフェンスに関しては集中していてよかったと思います。アタックはキャッチミスもありましたし、しかもチャンスどころでのミスが多くて、もっと集中してやっていかないと、この先負けてしまうと感じました。もっと練習しなくてはいけません。セットが崩れたところはもちろん、BKもハンドリングエラーが多かったので、その精度を上げていくことです。80分間、慌ててしまったようなところもありましたけど、相手のディフェンスもいいなか、最後の最後まで我慢して、ひっくり返すことができたのは、春やってきたことの成果を出せたということだと思います。夏合宿に向けて、ゲームで出た課題、基礎の部分、基本スキルを細かくやっていきます」

<仕事キッチリ! 随所に存在感を見せたロック岩井哲史>
「ホント勝ってよかったです。ひどい試合だったというか…、スクラム何本組んだことか。80分のうちの相当をスクラムに取られてしまい、FWもミスして、BKもミスして、自分たちのラグビーをする前にミスで自滅という感じです。最後は2点差でしたし、ここが1番楽しいところだろうと。FW8人でこの状況を楽しまずしていつ楽しむんだと言いながらプレーしてました。その結果が、最後に繋がったんだと思います。ジャッカルよかったですか?、1人目がしっかりと入れていたので、2人目として絡むことができました。関東を相手にインゴールを背負った状況でも、ショートサイドをしっかり止めて、ターンオーバーできたのは、課題、課題と言われてきたところからは一歩前進だと思います。ブレイクダウンに関しては、関東はブローが強かったです。そこにファーストで受けてしまったところがありました。相手がそこに懸けてくると分かっているなか、受けてしまったのは課題です。ラインアウトは…、関東はホントしたたかと言うか、修正しようと思ったんですけど…、そこは僕の責任です。今年は走ると決めたので、80分体力を持たせるために7月も走ります。そして、セット、フェーズでのミスが多いので、そこをひとつひとつしっかりとやって夏を迎えたいと思います」

<危険信号? チャンスでの精度を問題視するNo8山下昂大>
「勝つことができて、結果だけがよかったという感じです。まったく継続することができませんでした。雨が降ったとしても、こういう天候になったとしても、ドンドンボールを回して、攻めていこうという意識はあったんですけど、継続する率が低かったですし、FWの動きだしもまったくで…。ミスの多さに関しては、もちろん暑さもありますけど、そこはイコールコンディション。今日も走ると決めていたなかで、ひとりひとりが自分たちに負けていたということだと思います。ブレイクダウンで負けて、動けないという面もありました。何より問題なのはチャンスでのミスです。そこをしっかりやっていかないと、今年1年苦しむことになると思います。僕も迷惑を掛けてましたけど、今日は片手でヒットしたときに汗で滑って~ということが多かったです。7月はもう一度基本に立ち返って、動き出し、低さ、順目への走り。ワセダとしてやるべきことを徹底していきます。そこができれば絶対に勝てると思いますので。最後はやっぱり負けたくないという気持ちでプレーしてました。個人的にもチームに迷惑を掛け続けていたので、このまま終わったら後悔すると。関東は強いと分かっていたなか、こういう試合を経験して、今日は勉強になりました。これを無駄にせず、最後には勝つ。赤黒、『荒ぶる』を掴み取るようがんばります」

<春完走!次なるステージを見据えるFB井口剛志>
「勝ててよかったというのが、まず思うところです。春走ってきたなか、最後にああいった形でトライを取って勝てたことは、一番の成果だと思います。辻さんが言われていたように、ワセダラグビーのスタイルができつつあると感じました。フィールドでの気持ちは至って冷静でした。ミスは多かったですけど、バタバタしていたというのはまったくないです。周りからはそう見えたところがあるかもしれないですが。ミスに関しては…、んー、課題ですね。この春はまったく違うタイプのチームと試合をしてきたんですけど、自らのスタイルを貫きつつ、自分たちで形を変えていくラグビーの習得が必要だと思います。今日は我慢で勝利を掴んだことは間違いないです。7月は2週間のオフを挟んでからの練習になりますけど、オンオフを切り替えて、気持ちを作って、体を作って、やることを明確にした上で大切に時間を過ごしたいと思います」

*夏合宿におけるシニアチームの試合は、現在のところ8月16日(月)・関東学院大AB、21日(土)・法大AB、25日(水)・対関西学院大、対天理大、29日(日)・帝京大ABを予定しております。その他、詳細につきましては決まり次第お知らせ致します。


前半
 2分 早大 G前Pから速攻→ラック→12のキックパスで山下トライ G山中失敗5-0

11分 関東 LOから継続→13にディフェンスを外され7トライ G成功5-7

18分 早大 4のTOから9裏キック→中靍がさらに足にかけトライ G山中成功12-7

後半
30秒 関東 KO確保→山中のゴロパンをチャージされトライ G成功12-14

42分 早大 22m右Pから速攻→15が裏に出て中濱トライ G山中失敗17-14