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2023

【連載】新体制特集 『Innovation』 第1回後藤禎和監督

監督として自身4度目のシーズンに臨む後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)。帝京大一強時代を崩すためにも、早大をはじめとした他大学の強化が急務の大学ラグビー界のなかにあって、後藤監督は今季のスローガンに『Innovation』という言葉を掲げた。強い早大を取り戻すため、後藤監督が求める変革とは。
※この取材は3月3日に行われたものです。
 

「ここで大きく変わらなければいけない」

――昨シーズンを振り返ってみていかがでしたか
さらに前の垣永(真之介元主将、平26スポ卒=現サントリー)の代に比べて、特にFWのメンバーが大きく変わって、戦力的に厳しくなるだろうというのは前提というか想定できていたので、そのFWの部分において1年間でどれだけ鍛えられるかというところでした。最終的にはなんとか、少なくとも帝京大以外のチームとは戦えるレベルまでいけたかなという手応えはありました。逆にBKには前年度のメンバーがたくさん残っていたので自分としてはシーズンの終盤には手応えをつかんでいたのだけれども、最後の3試合を見れば分かる通り、精度のところ、特にBKとラインアウトの部分の精度が上げきれなかった。そこにはいろんな要因があって、別に集中して練習に取り組んでいないということはないんだけど、なんとなく選手が腹に落ちないままやっていたりとか、そういった内面的な部分でチームを最後まとめきることができなかったというような感じです。
――最後まで精度を高めきることができなかった要因というのは具体的には何だったのでしょうか
さっき内面的な部分と言ったのだけれど、ちょっとうまく説明できない部分もあるね。別にそういった課題に気付いていなかったというわけではなくて、抽象的な言い方で申し訳ないけど、自分なりのやり方でそこを払拭して、チームをまとめられるようにしようとはしていたんだけど、最後のところでそこが皮むけきれなかったということかな。
――今季は監督として自身4度目のシーズンとなりますが、これまでと比べて心境の変化などはありますか
自分でも昨シーズンの初めから公言していたことなんだけど、昨シーズンで結果が出なければ最後という覚悟で臨んでいたので、ああいう形(全国大学選手権セカンドステージ敗退)で終わってしまった以上、負けた瞬間では間違いなくけじめをつけるという気でいました。でも一方で自分が監督になった時、次に監督が変わるときにはスムーズな形で次の体制につなごうということも決意していたので、あの時点ではそれが現実的に不可能だったのは十分理解していたし、ワセダの環境、戦力、選手の状況含めて、ここ数年でもおそらく一番しんどい、昨季よりもさらに今季しんどい。そんな状況の中で、OB会のほうからも打診されたし、自分でもいろいろ考えて、自分がやるべきだと決断しました。そう決めた以上は、(全国)大学選手権優勝を目指してやれるだけのことをやる。それだけではなくてテーマに変革を掲げたのだけど、ここで大きく変わらなければいけない、自分自身の価値観も含めて極端に変えていって、チャレンジしていかなければいけないというところですかね。
――帝京大や東海大などは結果がどうであれ監督が変わらない一方、早大などの伝統校では短い期間で変わってしまうと思うのですが、やはり長く監督としてやれるほうが一貫した指導ができるというような思いはあるのでしょうか
その部分は間違いないです。でも、ワセダの場合はひとりの監督が長くやるというのは個人的にはあまり望ましくないと思います。というのも、監督が変わったときの変動がその監督をやっていた期間が長ければ長いほど大きくなってしまうからね。
――早大の変化ということで、今後も後藤監督が長く指揮を執るということもあるのでしょうか
自分としては、今季は今季で一年勝負ということでやっているし、過去三年間やってきた中で、中長期的な視点に立った何かをやってこなかったというのは全くなくて、自分なりにこの二年間である程度その先につながるような構造的な部分の改革を手掛けてきたつもりです。それがことし若干芽吹きつつある。たとえば早実高をはじめとした付属校や係属校との連携であったり、ことしは一般入試で比較的能力の高い選手がたくさん合格してくれたりということだったり。そういった部分をこの一年でもっと劇的に、選手たち自身が感じられるくらいの変化を生み出していけたらなと。もちろんことし勝つためにやるんだけれども、その先、たとえば創部100周年などに向けどんどん右肩上がりになっていけるような、そういう一年にしたいと思っています。それをことし一年である程度作り上げられれば、さっき言ったように監督が変わってもスムーズに体制交代できるような流れを作れれば、監督が変わったからといって極端にチームが変動するということは防げると思います。
――後藤監督がやりたいことが少しずつ形になってきている実感はあるのでしょうか
もちろん。さっき言ったような様々な場面で形になってきているのでは、と思います。
――昨年のことに話が戻ってしまうのですが、監督として今までの2シーズンと比べて昨シーズンはどんなシーズンだったでしょうか
やりたいラグビーというか、チームプレー自体は年を重ねるごとに成熟度は高まってきていると思うんだけど、その反面、選手のポテンシャル、層の厚さという部分ではちょっとどんどん右肩下がりになってきている部分があって。そこはもうチームプレーの習熟度、成熟度の部分で上回っていこうと思っていたね。またさっきの繰り返しになっちゃうんだけど、ある程度夏くらいまで手応えを感じていたものの、最後そこの部分が内面的な要因で崩れてしまったね。
 

「強ければ強いほど倒し甲斐はある」

――倒さなくてはならない帝京大についてのいまの印象はいかがでしょうか
このあいだの日本選手権なんかを見る限りちょっと突き抜けた感はあって、まあそれだけ徹底していい環境の中ですごく努力した結果があの試合だと思いますね。強ければ強いほど倒し甲斐はあると思います。(編注:日本選手権で帝京大はトップリーグ相手に勝利を収めている)
――先日行われたファーストミーティングではどんなお話をされたのでしょうか
さっき言った変革ということをテーマに掲げて、じゃあどこを変えていくのか、グラウンドだけじゃなくて私生活の部分など大きな項目を挙げていきました。要は帝京大だったりトップリーグのチームだったりが徹底して、言葉悪くすると徹底して管理された状態でやっている部分をまずは我々もやっていかなければいけない。でも最後には自分の意思、判断によってプレーなり生活なりをしていけるようにならなければいけないと思います。
――そのミーティングでの選手たちの様子はいかがでしたか
ずっとやっていたし、2週間しか休みにしていないので、特にあのミーティングだからどうこうというのはなくて、新しいチームになって練習を再開した時から集中力高く努力しているので、それを一年間続けてくれればなと思います。
――ミーティングの際に『Innovation』ということも掲げられたと思うのですが、具体的にはどういった部分を『Innovation』していくのでしょうか
まずメディカルの部分で、これはワセダクラブとの連携になるんだけど、簡単にいうと治療院、町にある整骨院といった感じで、治療だけじゃなくてリハビリや予防療法、動作トレーニングなどを、トップレベルに近いスポーツに従事した人たちのノウハウを、そのまま一般の人たちに提供していく形のコンディショニングセンターを6月に立ち上げます。そことの連携で、コンディショニングセンターの先生にグラウンドまですぐ近くだから来てもらったり、多少実費の部分も出てくるけど選手にも通ってもらったりして、自分のコンディションを管理しやすい状態にするというのがまず一点。二つ目はS&C、ストレングスとコンディショニングのコーチに従来のパートタイムではなくてフルタイムのコーチを置いて、選手のコンディショニングの部分を含めたトータルのコーディネートをやっていくということ。三つ目はそれに付随してGPSとか分析ソフトとかに躊躇なくお金をかけて最新のものを取り入れていくということと、スポットコーチなんかも積極的に取り入れていく。あとは食事の部分で足りない分は部の強化費を充当して体を大きくしていくというのが主な部分ですかね。
――岡田一平選手(スポ4=大阪・常翔学園)を主将に任命した理由を教えてください
俺ひとりで選んだわけではなくて、基本的にワセダでの主将決めっていうのは卒業していく前年の4年生の推薦が大きいんだけど、それで昨季の4年生から岡田を推薦したいということがあって。まあいずれにしても主将をやるのは二人、三人のうちの誰かという風に限られてくると思っていたし、人間的にはまず岡田で間違いないとずっと思っていたので。それはどういうところかっていうと、やはり試合中のほかのメンバーに対する発信力。わりと劣勢な局面の中でも決して下を向かずに強気でいい言葉を吐き続けられる。そこがキャプテンにふさわしいかなと。反面プレー面がちょっと不安定なところがあるかな。そこは別にキャプテンだからっていうのではなくて、正当にほかのメンバーと勝負してくれれば、という感じですね。
――佐藤穣司選手(スポ4=山梨・日川)に話を伺ったところ、「自分が監督を続投したら岡田をキャプテンにするつもりだ」という風におっしゃっていたとのことですが、やはり卒業する4年生から岡田選手と言われれば迷いはなかったのですか
迷いがないと言い切ったら嘘になりますけど。まあさっき言った岡田の人間性というか人間力とかそういったところでは間違いないと思います。
――岡田選手に期待することは発信力ということでしょうか
岡田だけではなくて常々キャプテンに期待することは劣勢なときに絶対に強気でプレーを続けられるということですね。
――岡田選手に掛けた言葉はなにかありますか
これでレギュラー決まったわけじゃないよ。それがまず最初ですね。
――副将の佐藤穣副将、藤田慶和副将(スポ4=東福岡)に期待することは何ですか
まあ穣司は(岡田主将と)ポジションも近いですし、FWのリーダーということですべての面において文字通り岡田のサポートですよね。それときちんとFWをまとめて欲しいなと。あとは個人的な課題でもあるんだけど、特に試合の厳しい局面で、あいつ自身がもっといろんな意味で厳しくなって、厳しいプレーを率先してやっていってほしいなと。藤田は当分チームにいないから、まずはW杯でジャパンのレギュラーとして活躍してくれと。それを体現すること自体が間違いなくチームにいい影響をもたらしてくれると思うので。
――長い期間チームを離れる藤田選手を副将にすることに迷いなどはなかったのでしょうか
藤田はそういう立場にいてもいろいろ発信してくるので、そういった意味では副将というポストに置いたほうがチームに対する影響力もわりとスムーズにいくんじゃないかなと。良くも悪くもあいつが発信してくる内容をチームとして受け止めるということができると思うけどね。
――その他にも委員として、浅見晋吾選手(スポ4=神奈川・桐蔭学園)、桑野詠真選手(スポ3=福岡・筑紫)、加藤広人選手(スポ2=秋田工)が選ばれましたがそれにかんしてはいかがですか
それは学生が決めたことだから基本的には毎年口出しはしてないです。それぞれそういうポストに就くっていうことはきちんと責任感を持ってそれなりのリーダーシップ、そこのポジションのリーダーシップを発揮してもらいたいなと思います。
――今季は昨年よりも新チームの始動が早かったと思いますが、新チームになってから今までの期間はどのように練習に取り組んできたのでしょうか
例年通りこの時期は体作りと、昨年の課題だった精度を高めるために、基本プレー、基本スキルの反復ですね。
――オフ明けの3月はどのような練習をされるのでしょうか
これまでやってきた精度を高めるための練習。その継続です。
 
「必ずワセダを強くする」

――4月から春シーズンが始まると思うのですが、それまでにどのようにチームをどのように作っていきたいですか
今やっていることを継続していく。春の試合が始まるからそこに向けてきっちり仕上げるとかっていうのはことしに関してはあまり考えてないね。最後の秋、冬に確実にチームのピークが来るような仕上げかたをことしはしていくつもりです。
――あまり春の結果には固執しないということですか
そうだね。春の結果どうこうというよりも、大事なのは秋、冬に向けたチームづくりだと思っています。
――昨年のメンバーが多く抜けて、スタメンの半数以上が変わることになると思うのですがその点に関してはいかがですか
だから厳しいって言ってるんですよ(笑)。ただ、今度一般入試で入ってくる1年生も久々にすごくいい選手が合格していて、久々にワセダらしいそれなりに期待できる選手が入ってきてくれるので、ここ数年ではたぶん一番かなと。いまの時点ではね。そういった新しい戦力を交えて、必然的に競争は激しくなると思うので、そういうところで(チームを)活性化して、今の時点では予期できないような成長をしてくれる。それが思い描く理想のイメージかな。
――特にフロントローが大きくメンバーが変わると思いますがスクラムについてはどのようにお考えですか
そこはもう鍛えまくるしかないね。鍛えまくることによってあるところまでは確実に引っ張り上げられるから。あとはさっき言った競争と、選手自身がどこまで強くなりたいか。そこに懸けるしかないと思います。
――昨シーズン苦しんだラインアウトの部分についてはいかがですか
ことしに関しては現時点で昨シーズンよりはまともになっていると思います(笑)。
――いま見えている新チームの強みなどはありますか
帝京大に勝つということを目標にしている以上、軽はずみにそれは言える段階でもレベルでもないので、まずは6月の最初の帝京大戦で実際に戦ってみないと何とも言えないね。いまそこに向けてやっていることは、体を大きくして強くして、基本プレーの精度を上げてミスをなくすっていうところで。その試合で実際に体を当ててみた時点でちょっと見えてくるものがあると思うから。
――新チームのキーマンを挙げるとしたらだれになるのでしょうか
さっきから言っているフロントローの三人、そして9番、10番でしょうね。
――昨シーズンAチームとして出場していた新4年生が少なかったと思うのですが、新4年生に期待することなどはありますか
昨シーズン試合に出ていなかったというのは関係ないね。逆に言えば4年生だけでなく、チャンスが誰にでもあると。まあ経験不足なのは最初はしょうがないよ。
――最後にファンの方々に一言お願いします
昨年はすごく不本意な、不甲斐ない結果に終わったのですごく申し訳ないなという風に思っていますし、昨季の東海大戦からいまのこの数か月間のワセダがここ数年の中でも底の状態なので、いきなり急成長とはいかなくともちょっとずつ右肩上がりで、必ずワセダを強くするので。そこを見ていてください。
――ありがとうございました!
(取材・編集 進藤翔太)

後藤禎和(ごとう・さだかず)
1967(昭42)年生まれ。東京・日比谷高出身。90(平2)年社会科学部卒。現役時代のポジションはロック。卒業後はヤマハ発動機に入社し、同ラグビー部に所属。00年より早稲田大学ラグビー蹴球部FWコーチを務め、12年に監督に就任。色紙に書いた『変革』の文字のごとく、監督として大きな改革を断行していきます。