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2024
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【連載】新体制特集 『Innovation』 第5回SH岡田一平主将

今シーズンのかじ取りを担うのは、SH岡田一平主将(スポ4=大阪・常翔学園)。2年時からスタメンの座を獲得し、常にチームを勝利へと導いてきた。主将として迎えるラストシーズン。チームが変革を断行しようとしているなかで、岡田はなにを思うのか。ざっくばらんにお話いただいた。
※この取材は3月3日に行われたものです。
 

「キャプテンを務める自覚はあった」

――オフの期間はどう過ごされましたか
(全国)大学選手権直後のオフはいろいろな思いを抱きつつ、試合の映像を見たりしました。それからはしっかりリフレッシュをして、次に向かっていこうと切り替えていました。2月のオフ期間はチームでどうやっていくかなどラグビーのことを考えたり、まだ明確にはなっていませんがこういう風にありたいという個人の目標を少しずつ立てたりして、あとはしっかりリフレッシュや、オフ明けの練習に向けてトレーニングしていました。他にはゼミ旅行でタイに行ってきました。昨日の夜中に帰ってきたんです(笑)。
――主将に就任してから1ヶ月近く経ったが慣れてきましたか
練習が始まってから少ししか経っていないので、実感はないです。ラグビー面ではいままで通り、自分の持っている知識を共有しています。昨季もリーダーシップを意識してやってきたこともあり、キャプテンを意識して練習に臨むというよりは、自分をさらに出せるように意識しています。
――就任の経緯を教えてください
まず監督(後藤禎和監督、平2社卒=東京・日比谷)から候補に上がっているという報告を受け、その後OBの方に話が行きそのままOBの方々から任命されました。
――主将をやりたいという気持ちはありましたか
新体制が始まる前から自分は委員をやっていましたし、キャプテンを務める自覚はありました。役職に就く心構えはあったので任命された時は、やるからにはしっかりやろうという覚悟がその場で固まりました。
――主将に決まって、親や周囲の反応はいかがでしたか
特にないです。親からはシンプルに一言、「頑張れ」という言葉をもらいました。まだ主将のことについては報告程度で、あまり話していません。
――部内でキャプテンと呼ばれたりするのでしょうか
自分のキャラクター的には主将のように見られる感じではないので(笑)、いままで通り接してくれています。特に違和感や変化も無いです。
――佐藤穣司副将(スポ4=山梨・日川)からいじられキャラで主将らしさは薄いと伺いましたが、主将になっても変わりませんか
キャプテンには厳しさの面などで色々なカラーがあると思うのですが、キャプテンだからということはあまり意識していないです。いままで通りみんなと同じ目線で接したいです。時には言い方を変えることもしようという気はありますが、特に大きく変化しなくてはと思うことは無いです。
――こういう主将でありたい、なりたいと考えていることはありますか
チーム作りのことでは、みんなが勝ちたいと思えるチームを作ることができる主将になりたいです。チームを勝たせないといけないし、チーム自身、選手自身が勝ちたいと思えるようなチーム作りをしたいです。
――主将になるにあたって、自身の何が評価されたと考えますか
任命を伝えられた場で後藤監督から直接言われたことは、「冷静なときの判断力、発信力」を評価して主将に選ばれました。特に強調されたのが「冷静なときの」ということで(笑)、常には冷静でいられなかった3年間が自分の課題だと受け止めました。
――主将としての責任を感じることはありますか
昨季までの3年間は勝てていなかったので、勝つために昨季の主将の大峯功三さん(平27スポ卒=福岡・東筑)とは色々な話をしました。主将の厳しさであったり気を使わなければいけないことであったり、さまざまな面で話を聞かされた時は責任を感じました。主将になるうえでどういうことに意識を持っていかなければならない、こういうところへの気配りが必要で目を持っていくべきかなどの話を聞きました。大峯さんにはことしコーチとして残ってもらうため、これからも話す機会はあると思うので色々と学んでいきたいです。
――副将にはFWから佐藤穣選手が選ばれましたが、どのような存在ですか
私生活でも練習の面でもとても真面目でしっかりしている人だと思います。自分は完ぺきではないので、サポート役というわけではないですが、そういった存在です。また、もっとこうした方が良いといったアドバイスもくれるし、きちんとした意見を持った人です。なおかつ私生活面では特に佐藤穣が自分よりも前に出て、色々と指導してくれるのでとても助かっています。
――お互いに役職が決まってから話したことはありますか
主務やその他スタッフのリーダーを含めてのミーティングは毎週行っています。
――そのとき話すことの内容を教えてください
チームが始動するまで、新体制では藤田(慶和副将、スポ4=東福岡)を含めどういうラグビーをしたいかという話をしました。チーム作り、寮生活、食事、コンディショニング、ウエイトトレーニング、スケジュールなども自分たちで話し合って決めます。私生活からラグビーのこと全部についてミーティングは行っています。
――見えてきた新体制、目標としての新体制は具体的にありますか
こういうラグビーをやる、こういうチームだというのはまだ分かりません。ラグビーでは基礎基本を積み重ね、土台のあるチームを作っていきたいと考えています。今シーズンは基礎基本を連続して、反復練習を続け、しっかりとした土台を作りたいです。私生活では、いままで通り規則正しい生活をして、寮をもっと綺麗にできないか考え、ファンの方々やコーチへのスタッフの挨拶などコミュニケーションの部分も立て直そうと話しています。こういったことの改善がこれからもどんどん出てくるのではないかと思っています。
――藤田選手も副将に選ばれましたが、どういう存在ですか
チームを離れることが多いのはすでに分かっていますし、現在も海外で頑張ってくれています。チームの中でも彼の活躍は刺激になるし、応援する反面で彼の何が良いか、特に同じポジションの人からしたらライバルになると思います。ことしはハングリーな選手が多いので、色々な見方があると思います。直接的に彼がチームに出来ることは少ないかもしれませんが、自分たちが多くのことを吸収していくことは出来ると思います。そういう面ではチームにとって必要であり、大事な存在であると思います。
 

「練習以外でのコミュニケーションでもっと共有するべきだった」

――昨シーズンを振り返っていかがですか
もっと縦の関係であったり、学年内の関係であったり、ラグビーの練習以外でのコミュニケーションでもっと共有するべきだったと反省しています。この反省はこれからに生かすべき事だと思います。
――戦っていて手応えはありましたか
練習が少なかったと言ったらそれまでなのですが、映像を見ている限りではチャンスどころを見極められていないと思います。もっと回せればといったところが見えたので、これから練習を重ねればそこにボールを運べる、トライまで運べるラインをつなげることができると思います。もっとこうすればといったことについてビデオを見ながら頭の中でトライを取るための動きを共有して、次に生かす準備をしています。
――岡田選手自身は春、夏とAチームでの出番が少なく苦しんだシーズンだったのではないでしょうか
いまは主将になったからにはゲームに出ることが必然であり、試合に出ないといけないと自分にもプレッシャーをかけています。主将になったからといって試合に出られるわけでないということは後藤監督にも言われましたし、自分からも他の選手にそういった話をしました。競争のあるチームは強くなると思っているので、他のSHの選手たちともっと競争し、トップリーグなど色々な人のプレーを吸収してレベルアップしたいと思っています。
――一時期Aチームで出場できなかった理由について、自己分析はされましたか
冷静でいられなかったり、的確な状況判断力が欠けていたりという部分がありました。それらが完全に改善されて昨シーズンに臨むことはできませんでしたが、ことしはとにかくチャンスやスペースのあるところを見極めてボールをしっかり運べるようにプレーしていきたいです。
――昨季の対抗戦、大学選手権はスタメンでしたが、2年生の時と比べて感じる自身の成長を教えてください
一番はやはりチームのリーダーとして動かなければならないという意識で、スクラムの時やトライを取った時、もしくは奪われた時などプレーとプレーの間にSHとして自分はどういう声をかけるべきか考えるようになりました。あとは次の指示やアイデアを布巻さん(布巻峻介、平27スポ卒=現パナソニック)や大峯さん、小倉さん(小倉順平、平27スポ卒=現NTTコミュニケ―ションズ)に話しかけたり、FWに要望や指示を出したりといったように、どんな意見を出せば良いかというところをSHとして考えて指示できたことは、2年生の時に比べたら成長したのではないかなと思います。
 

「覚悟はできている」

――今季のスローガンである『Innovation』に込める思いを聞かせてください
いままでのワセダ、自分が入学してからのワセダでは勝てないです。いままでの努力の延長だけでは帝京大に勝ち、大学日本一にはなれないと思ったので、なにかもっと大きな変化を求めてこのテーマにしたのだと思います。
――『Innovation』という言葉を出されたのは後藤監督ですか
そうですね、その言葉を出したのは監督からです。
――大きな変化を求めてという話しですが、現時点で何か変化したことは具体的にありますか
ことしの新体制ではコーチの部分で、S&Cコーチというトレーニングとコンディショニングのスタッフに新しく入ってきてもらいました。またメディカルの部分で新しい先生に来ていただきました。他にもスケジュールの変更や寮の食事の改善や見直しの他、コーチでもスポットコーチを呼んだりするなど周りの状況が大きく変わったかと思います。
――その他ファーストミーティングで話されたことなどありますか
先程述べたことと重なるのですが、昨季のビデオから改善できた点をまとめたビデオを作ってもらって、それをみんなで見ました。大きくスペースに回せたところやもっとスキルがあったらできたことなど全てをまとめたものを見て、自分たちで改善点を自覚することに時間を使いました。
――部員が多いこともあり、『Innovation』という言葉を共有するのに、コミュニケーションは下級生まできちんと取るのに苦労はありませんか
そうですね、全体ミーティングは1年生から4年生まで全員出席のもと行われています。チームがあれば学年もバラバラでいるので4年生が主体となってまず共有し、そこから下級生にも共有しています。そのためには4年生がしっかりとこれからの体制や方針を共有しなければならないと思います。また自分からももっと1年生にもコミュニケーションを取ることを意識していくので大丈夫です。
――新4年生に期待したいことはどういったことですか
昨季の4年生で特にFWの主力メンバーが抜けてしまいチームのメンバーがガラッと変わったので、ものすごくハングリーに練習に取り組んで欲しいと思っています。昨季から自分たちの代はハングリーにコーチに質問したり、分からないことも聞いたり、トップリーグの人に質問したりとハングリーになっていたと思うので、それをこれからも継続してもっともっとハングリーにして欲しいと思います。また先程述べたようにチーム方針などの共有をしてもらい、しっかりと理解を持って取り組んでもらえたら良いと思っています。
――下級生にはどんなことを求めていきたいですか
学年は関係ないと思うので、同様に意欲を持ってもっとハングリーにして欲しいです。もちろんチーム方針やその他多くのことに理解をもって取り組んで欲しいです。
――岡田選手にとっては入学時から後藤監督のもとでやってきていると思いますが、1年時から4年目までを比べて印象の変化はありましたか
1年生の最初の時は監督自身が持つ雰囲気で怖いと思うことはありましたが、1年生の途中からは監督の人間性や性格なども分かってきたのでそこからは印象は変わっていないです。
――主将に就任してから後藤監督と話す機会は増えましたか
はい、とても増えました。これからももっと自分から話そうと思っていますし、特に話しかけることに抵抗などはないです。
――この1年間チームを引っ張る立場として、チームの理想像はありますか
もちろん毎年ワセダは大学日本一を狙わないといけないと思いますが、ことしは本当に浮足立たずに一戦一戦を全力で勝ちにいきます。一戦一戦をしっかり試合前から分析し、準備して一試合を大事にしていきたいです。
――予餞会でも『何事にも一生懸命に取り組むチーム』とお話しされていましたが、やはりそういったところにつながってくるのでしょうか
そうですね、一生懸命やらないと結果につながらないと思いますし、次の試合にも響いてくるものがあるので、とにかく一生懸命に取り組むことが大切だと思います。
――ことしのワセダが勝つためにチームとして一番必要なことはなんですか
基礎基本です。これが何よりも大事なことだと思います。
――スタメンが半数以上変わることになると思いますが、FW陣についてどのような印象をお持ちですか
現時点で、昨年のスクラムから佐藤さん(佐藤勇人、平27スポ卒=現NTTコミュニケーションズ)が抜けてウエイト的にもパワーが劣る部分があると思います。いまはそこを補い、さらにそれ以上のものを得るためにウエイトトレーニングをしたり、食事の部分でも体を大きくしようとフロントローの選手も意欲を持って取り組んだりしているので、そこの伸びしろを期待しています。
――反面BKについてはどのような印象をお持ちですか
BKはもっとトライを取りきるためのスキルを基礎からやり直したその上で、フォーメーションだったりサインプレーだったりが成り立つと思います。いまは長いパスも正確に放り、どんなボールでも取れるようにといった基礎的なところから取り組んでいけば、自分たちBKの持っているものはどんどん引き出していけてレベルアップできると考えています。
――両WTBは昨年から顔ぶれが変わりますが、決定力の部分についてはどう考えていますか
本田宗詩(スポ3=福岡)をはじめ、まだまだスピードある選手がWTBにいます。他にもCTBであったらまだ誰になるか分かりませんが凄く競争率の高いポジションです。WTBもCTBも自分のポジションであるSHも含め、BKは競争率が高いので、選手同士で高め合えることができれば、例えばWTBでは荻野さん(荻野岳志、平27先理卒=神奈川・柏陽)や深津さん(深津健吾、平27スポ卒=現リコー)よりもレベルアップできるということに期待したいです。
――今季のチームの中で期待している選手やキーマンになる選手がいましたら教えてください
難しい質問ですね…。ここの成長が大事だなと思っているのは、SOの浅見(晋吾、スポ4=神奈川・桐蔭学園)と横山(陽介 スポ2=神奈川・桐蔭学園)のところです。どちらがAチームのスタメンとして出るかというのは彼ら次第だと思っていますが、自分のプレーにも直結するかなと思っていて、2人とは練習中を含め多くコミュニケーションをとっていますし、常に一緒にボールを使うようにしています。
――自身にとってライバルとなる選手はいますか
ワセダのSHの選手は良い選手が多いので全員がライバルになると思っています。
――今シーズンにかける意気込みを聞かせてください
ことしは例年よりももっと厳しい1年になると思っています。その覚悟はできていると思うので、勝つためにはまず基礎や土台作り、体作りからしっかりやらないといけないと思っています。
――応援してくださるファンの皆様へ一言お願いします
応援してくださるファンの方もたくさんいてすごく力になり、うれしく思っています。ことしも応援してくださるファンの方々にもっと楽しくラグビーを観て応援してもらえ、興奮するようなワクワクするようなラグビーをしていきたいです!
――ありがとうございました!
(取材・編集 菅原拓人、中澤奈々)

 
岡田一平(おかだ・いっぺい)
1994年(平6)2月16日生まれのO型。166センチ、77キロ。大阪・常翔学園高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはSH。色紙には昨年と同じく『創意工夫』と書いてくれた岡田選手。主将という肩書になっても、変わらぬ岡田選手らしいプレーでチームを引っ張っていきます!