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2024

【招待試合/オール石川戦観戦記】


止まっていた赤黒の時間、未来に向かって動き出す。

昭和23年(1948年)。まだ戦争の爪痕が残る時代に、早稲田は石川県で合宿を行なった。まだ食糧の乏しい時代にあって歓待を受け、現在につながる早稲田ラグビー復活の礎になったと伝えられている。

それから70余年、縁のある石川県ラグビーフットボール協会の70周年記念試合として、オール早稲田がオール石川と対戦した。

オール早稲田(以下早稲田)のキックオフで始まった試合は、気持ちがほとばしるオール石川(以下石川)の激しい守備の前になかなか得点を奪えない展開に。10分、15分とゴール前まで攻め込むものの、タッチに押し出されたりミスでチャンスを逸してしまう。

しかし、19分に待望の得点が生まれる。敵陣ゴール前の早稲田ボールスクラムで相手からペナルティを奪うと、早稲田は再びスクラムを選択。このスクラムを力強く押し込むとそのままNO8田中がトライ。SO横山のゴールも成功し、早稲田が7点リードとなる。

追加点は25分。相手の反則からゴール前ラインアウトのチャンスを得た早稲田は、ここで相手の意表をつくスペシャルサインを使ってHO原が鮮やかに左隅に飛び込む。難しい角度のキックを横山が再び決め、リードを14点に広げる。

35分にはPR小林のキレのある突破から、LO桑田にオフロードでつなぎさらに前進。ラックからクイックで出たボールを受けたFB河瀬が、圧巻のカットインで華麗にディフェンスを破りトライを奪う(横山のゴール成功)。

前半終了間際、田中のジャッカルからカウンターを試みた早稲田だったが、パスのタイミングを相手に読まれインターセプトされてしまう。キャプテンCTB長田が30m以上追いかける猛烈なバッキングアップで止めるものの、ラックから素早く出されて石川がトライ(ゴール失敗)。

前半最後にトライを奪ったことで勢いの出た石川は、後半猛攻をしかけることになる。

10分、反則から22m内への侵入を許した早稲田は、ラインアウトから相手CTBに突破を許しトライを奪われる。ゴールも成功し、石川はますます追い上げムードに。

続く21分には、再び反則からゴール前ラインアウトのピンチを迎え、ラックサイドをFWに押し込まれ連続でトライを奪われる(ゴール失敗)。

21−17と4点差に迫られた早稲田は、流れを変えるためNO8に権丈を投入する。

権丈の体を張ったプレーとパッションで勢いを取り戻した早稲田は、25分、相手の反則からゴール前ラインアウトのチャンスをつかむ。モールは止められるものの、展開して長田→河瀬の鮮やかなアングルチェンジでしとめる(横山のゴール成功)。

リードを11点に広げた早稲田だが、30分に石川SOにパスダミーからの突破を許す。なんとか止めるものの、最後はラックサイドを飛び込まれてしまう。ゴールも成功し、28−24と再び4点差に。

36分、敵陣ゴール前で反則を獲得した早稲田は、終始優勢だったスクラムを選択。このスクラムでも前に出続け、うまくボールをコントロールした権丈がトライ。コーチのトライに選手たちは大いに沸き立つ(横山のゴール成功)。

ただ、諦めない石川が39分にこぼれ球を拾ってトライ。ゴールも成功して、35−31とワントライで逆転できるところまで食らいつく。

しかし、最後に勝負を決めたのは4年生の力だった。

ラストプレーの早稲田キックオフ、競り合ってこぼれたボールを途中出場のHO宮武がセービングで確保すると、継続されたボールは河瀬に。大きく弧を描くように相手を抜き去った河瀬がラストパスを途中出場のWTB米田に通すと、相手タックルを食らいながらも右隅に勝利を確定させるジャンピングトライ。難しい角度のキックを横山が決めて42−31。白熱した展開に、集まった2000人あまりの観客から大きな拍手が送られたところでノーサイドを迎えた。

チームを率いた大田尾監督
昨年の12月26日に忘れることのできない敗戦を喫したことで、この試合に懸ける思いがより大きくなりました。もちろんチーム長田の結果が変わることはないですが、4年生を中心としたチームで試合をし、少しでも笑顔になって卒業してほしいなと。そして、OBと現役の選手にも力を貸してもらうことで、早稲田の歴史をつなぐこともできたんじゃないかと感じています。改めてオールはいいなと思いました。

オール早稲田のキャプテンを務めた長田智希
明治に負けて、赤黒の時間が止まったように感じていました。今回はオールという形ではありますが、同期の仲間とこうして赤黒を着て試合をし、勝てたことで、止まっていた時計が動き出したような気がします。これで大学生活にひと区切りついたので、新しい環境でより高みを目指してがんばります。

激しいタックルで体を張った長尾岳人
この試合で僕も引退です。赤黒で現役と一緒に最後の試合を戦えて、とてもよかったです。試合前は緊張していましたが、勝ててよかったです。

テンポあるさばきを見せた西田剛
赤黒を着たことで、いい意味の緊張感を持って試合ができました。4年生の記念すべき試合に出させてもらって光栄です。

責任感のあるプレーを示した荻野岳志
7年ぶりでしたが、赤黒、北風、気持ちが引き締まる感覚を思い出しました。4年生はラグビーをやる人やめる人いろいろいると思いますが、この縁を大事にしたいと思います。

ゴール成功率100%で勝利に大きく貢献した横山陽介
勝ててよかったです。そして、とにかく楽しかった。赤黒を着て、試合前に北風を歌って、現役の最後の試合を一緒にやれるなんてとてもいい感じでした。僕もプレーヤーは引退し、4月からは新しい環境でチャレンジします。

愚直に体を当て続けた坪郷智輝
赤黒を着て試合に出ることができて幸せでした。また、試合を通じて現役・四年生・OBがひとつになれたと感じています。僕にとってこの経験は一生モノです。

新しい道に進む権丈太郎AC
教え子と同じグラウンドに立てて不思議な気分でした。こんな機会をいただけて、ただただ感謝。自身のプレーについては、怪我せずトライも取らせてもらったので100点です(笑)。本当に幸せな3年間でした。

試合前にはスタッフ陣とリザーブ選手によるラグビークリニックが行われ、幼児から中学生までの多くのお子さんがラグビーを楽しみました。

試合前日の練習は鶴来高校さんに用具を貸していただき実施しました。オリジナルロゴ入りボール。
















写真:鳥越裕貴・ラグビー蹴球部広報チーム
文:ラグビー蹴球部広報チーム