今春、新たに35人の稲穂の戦士たちが、早大ラグビー蹴球部の門を叩いた。花園を制した王者から地方の進学校出身者、さらには2年生での入部者まで、その顔ぶれは多彩だ。迎えるのは、宿命のライバル・明大。高校日本代表を多数擁するエリート集団であり、今も昔もこの両校の構図は変わらない。新人早慶戦に続く新戦力たちの真価が問われる戦い。その舞台は明大・八幡山グラウンド。現在地を測る意味でも重要な一戦が幕を開けた。
明大新人のキックオフで始まった試合。早大新人は自陣からも果敢に攻め込み、早大としてのプライドを随所に体現する。だが、その前に立ちはだかったのは明大新人の分厚い防御。立て続けにトライを奪われ、前半を12-35で折り返す。
後半に入っても、明大新人の勢いは衰えず。着実に差を広げられていく。それでも、終盤に意地のトライをもぎ取った早大新人。しかし、最後は明大新人にダメ押しのトライを許し、19-85でノーサイド。新人戦とはいえ、ライバルとの間にある大きな壁を痛感する試合となった。

明大新人のキックオフで試合の幕が開いた。照りつける灼熱の太陽にも負けない、熱戦の火ぶたが切られる。早大新人はSO山口滉太郎(教1=東京・早実)のロングキックを軸に試合を組み立てる。序盤は互いに蹴り合う展開が続いたが、FB小野晏瑚(スポ1=徳島・城東)が相手の背後に巧みにボールを転がし、プレッシャーをかけてミスを誘発。
前半5分、敵陣ゴール前でマイボールスクラムを獲得した。山口とFL小林商太郎(教1=東京・早大学院)が起点を作り、SH川端隆馬(スポ1=大阪桐蔭)がディフェンスの隙を見逃さずラックサイドを突く。そのままインゴールに飛び込んで先制トライ。山口が左隅からの難しいコンバージョンを冷静に沈め、スコアを7-0とした。
勢いに乗る早大新人は自陣ゴール前でも粘り強くディフェンス。WTB佐藤世那(スポ1=神奈川・桐蔭学園)が相手のボールをもぎ取り、FL佐藤一道(商1=東京・早実)からパスを受けたCTB松本桂太(スポ1=神奈川・桐蔭学園)がサイドライン際を一気に駆け上がる。しかし、明大新人の堅守に阻まれ、惜しくもペナルティー。直後のラインアウトからフェーズを重ねられ、失点を許した。
さらに16分、スクラムでのプレッシャーから明大新人にトライを奪われ、逆転を許す。反撃の狼煙を上げたい早大新人は、再びディフェンスから流れをつかみにかかる。鋭いタックルで相手の前進を食い止めると、ラック際でボールを奪取。川端が空いたスペースを見逃さずランを選択し、大きくゲイン。一度はボールを失うも、PR石原遼(スポ1=神奈川・桐蔭学園)がラックサイドを駆け上がり、巧みなキックで50-22を成功させる。大柄な体からは想像できない器用さを光らせた。
前半26分、直後のラインアウトからLO宮川侑大(スポ1=富山・砺波)が起点を作り、松本がディフェンスをこじ開けてオフロードパス。CTB若林海翔(社1=東海大大阪仰星)につながると、そのままインゴールに飛び込みトライ。スコアは12-14、粘りを見せる。だがその後、明大の自慢のスクラムに苦しめられ、セットプレーから再び失点。さらにラインアウトからの内返しで連続トライを許し、前半は12-35で折り返す。

後半に入ると、明大新人の勢いはさらに加速する。開始わずか1分でトライを奪われると、そこから立て続けに5トライを献上。フォワードの圧力とバックスのスキルが融合した、明大の真骨頂を見せつけられる形となった。点差は大きく開く。それでも、早大の若き戦士たちは、簡単に心を折られることはない。入部から約3ヶ月、譲れない稲穂の誇りをみせるために。
後半30分、失点直後のキックオフから15人全員が前線に出て圧力をかけ、スティールで相手の反則を誘発。SO古瀬莊(スポ1=静岡聖光学院)のキックで一気に敵陣ゴール前へと陣地を進める。直後のラインアウト。モールでじわじわと押し込み、川端が逆目に展開すると、ボールは佐藤(世)へ。細かくステップを刻みながらディフェンスを切り裂き、ゴールラインをこじ開けた。古瀬が難しい角度からのコンバージョンをドロップキックで決め、スコアは19-73。意地の反撃で一矢報いる。だが、試合終了間際にも明大新人の猛攻は止まらず、ダメ押しのトライを奪われる。
最終スコアは19-85。
宿敵・明大との一戦は、立ちはだかる壁の高さを突きつけられる結果となった。

入部から3ヶ月。早大の新入生たちの前に立ちはだかったのは、あまりにも高く、そして分厚いライバルの壁だった。新人早慶戦、そしてこの新人早明戦。連敗を喫したことで、いま彼らはライバルとの間に広がる差を痛感する。だが、これは単なる敗北ではない。ここから始まる、新たな出発点だ。「4年生になった時につなげられる負けにしなければならない」(石原)。
この悔しさを糧に、日々の鍛錬を重ねる。最後に笑うために。
この高くそびえる壁を、全員で乗り越えてみせる。
記事:大林祐太、写真 村上結太、髙木颯人(早稲田スポーツ新聞会)