リベンジを果たすことは容易いことではない。一度負けた相手に対し、上回る成長速度で鍛錬を積み、呑み込むほどの熱意で戦う他に道はない。3週間前に12-36で帝京大に敗戦した早大Bは関東大学ジュニア選手権決勝にて、この難題に臨んだ。
試合が行われたのは早大のホーム、上井草グラウンド。3週間前は帝京大・百草グラウンドでの完全アウェイな雰囲気だったからこそ、今試合はより一層グラウンドに『One Shot』コールがこだました。前半はブレイクダウンとスクラムで圧力を受け、自陣でのプレーが続いた早大B。帝京大Bの猛攻を3トライに抑えながら、少ないチャンスで1トライ1ゴール1PGを奪い取り、前半の40分を10-19で終えた。続く後半は立ち上がりで早大Bが試合を支配。帝京大Bが修正する前に2トライを挙げ、逆転に成功。ゲームの要所で粘りのディフェンスを見せた早大Bはここから帝京大Bに並ばれることはあっても、リードは許さない。CTB金子礼人(法4=福岡・西南学院)の値千金のトライで一歩前進した早大Bはタックルで帝京大Bを押さえつけ、16年ぶりにジュニア選手権のタイトルを獲得した。

帝京大Bのキックオフで始まった決勝戦。いきなりSO田中大斗(教2=東京・早実)が強烈なタックルを受けるなど、立ち上がりから激しさを見せた。自陣でボールを継続した早大Bは圧力を受け、ボールをロストすると帝京大B FWにインゴールを叩き割られ、5分に先制を許した。続く12分、劣勢を強いられていたスクラムからのアタックで数的優位を作られると、最後は右隅にトライを許し、スコアは0-14となった。ブレイクダウンでも苦戦していた早大Bは帝京大Bのスティールに反撃の芽を摘まれ、思うように敵陣に入りこむことができない。しかし、24分、HO杉村利朗(社2=東福岡)のビッグタックルからターンオーバーに成功するとFB島田隼成(スポ2=福岡・修猷館)がラインブレイク。最後はフォローに走っていた金子がゴール中央にグラウンディングした。
7-14と早めに点差を縮めた早大Bだったが29分、自陣深くのマイボールスクラムで一気にプッシュされ、ボールを奪われてしまう。狭いサイドを縦に速いアタックで突かれてまたも失点。7-19と思うように帝京大Bの背中を捉えられない中、今試合で大きな役割を担ったのは田中(大斗)の正確無比なプレースキック。40分にWTB西浦岳優(社2=東福岡)のブレイクからいいかたちのアタックを展開すると、帝京大Bはたまらずペナルティー。前半ラストプレーで田中(大斗)が確実に3点を奪い、9点差で前半の40分を終えた。

続く後半は早大Bにとって理想的な立ち上がりだったと言える。キックオフで敵陣深くに入りこんだ早大Bはいきなりブレイクダウンで圧力をかけ、帝京大Bに長い笛が吹かれた。2分にゴール前でモールを組むと、コラプシングの反則を誘発。再び落ち着いてモールを形成するため、ボールをタッチに蹴り出すと思われていたが田中(大斗)が選択したのは速攻。反応が遅れたディフェンスの隙を突き、自らインゴールに飛び込んだ。
さらに4分、LO萩原武大(スポ4=茨城・茗渓学園)とPR山口湧太郎(スポ4=神奈川・桐蔭学園)の好タックルで攻撃権を奪い、そのまま敵陣でのアタックを継続。帝京大Bのハイタックルなどで着実に前進した早大Bは多層的なアタックラインで見事に数的優位を作り出し、WTB鈴木寛大(スポ3=岡山・倉敷)がゴール左隅に飛び込んだ。後半の立ち上がりで早くも逆転に成功し、スコアは24-19。ようやく今試合初めてのリードを生み出した。
8分には帝京大Bがノットストレートの反則を犯すなど、セットプレーでの精彩を欠き始める。主導権を握りつつあった早大Bだったが、2連続のペナルティーでチャンスを取りこぼすと17分に失点。24-24と帝京大Bに並ばれた。グラウンド内に立ち込める悪い雰囲気を断ち切ったのは途中出場の4年生、両PRの勝矢紘史(スポ4=長崎北陽台)と成戸風太(スポ4=埼玉・川越東)だ。敵陣深い位置の相手ボールスクラムで反則を奪うと、FWが喜びを爆発させる。田中(大斗)が冷静にHポール中央にキックを沈め、またもリードした早大B。1トライで逆転されてしまう点数の中、どちらが次のトライを奪うかがこの試合での重要な局面であったことは間違いない。
26分、前半苦戦していたブレイクダウンで帝京大Bを圧倒。ゴール前ラインアウトというチャンスで早大Bが選んだのは西浦の奇襲。鋭角に走り込んだ西浦が守備をかき乱すと、最後は金子がタックラーを引きずりながらインゴールに手を伸ばし、値千金の5点を挙げた。34-24、10点差で試合時間残り10分の最終局面へと突入。点差を一刻も早く縮めようとボールを継続する帝京大Bにディフェンスを乱され、中央にトライを許す。
3点差という緊張状態の中、光ったのは早大Bの圧巻のタックルだった。自陣22メートルラインを挟むかたちでの守備が続いたが、崩れることがなかった。全員が立ち続け、15人でトライラインを守り切った一連のプレーはまさに『早稲田プライド』を体現していた。自らの手で優勝を手繰り寄せた早大Bが、16年ぶりにジュニア選手権を制してみせた。

勝利を決定づけた試合終盤のディフェンスについて、「全員きつかった中で、プライドを持って守り切ることができた」と振り返ったのはゲームキャプテンの萩原。Bチームを主戦場とし、思うようにAチームでの活躍の舞台に立つことができなかった苦労人はノーサイドの笛が鳴ると同時に膝から崩れ落ち、涙を見せた。
早大Bは11月の初めに帝京大に4連敗を喫し、自信を失いかけていたチームに勢いを与えるタイトルをもたらした。ジュニア選手権はいよいよ閉幕し、関東大学対抗戦も残り一試合。全国大学選手権に向け、シーズンは佳境を迎える。ジュニア選手権で戦っていた選手たちの目標は今大会のタイトルではなく、『赤黒』を着て戦うことに他ならない。関東の大学で最も強いBチームであることを証明した早大B。来週の早明戦で勝利し、早大が関東で最も強い大学であることを証明する。そして、大学選手権で日本一であることを証明するために、彼らは『赤黒』を狙い続け、チームを進化させるだろう。
記事:村上結太 写真:清水浬央(早稲田スポーツ新聞会)
