実にシンプルである。勝った方が優勝。両チームとも5勝1敗と手負いの状態の中、負ければ4位まで転落する危険性も抱えている例年にない混戦模様。そんな早明戦にふさわしい緊張感のある舞台で雌雄を決するときが来た。まさに天王山と言える一戦の前に、昨季の激戦や今季のこれまでの両チームの戦績を振り返る。

まずは昨季、2024年12月1日に行われた第100回早明戦。堅守速攻で得点を重ねた早大は27-24という3点差のリードを保ち、最終局面を迎えた。紫紺のジャージにゴール目前まで攻め込まれたものの、最後は意地のディフェンスを象徴するようなタックルでタッチに押し出し、17年ぶりの対抗戦全勝優勝を掴み取って見せたのだった。

対抗戦で輝かしい成績を収めたものの、全国大学選手権では決勝で敗戦。その悔しさを胸に『One Shot』というスローガンを掲げ、ここまで戦ってきたチーム野中。対抗戦では帝京大に5点差で惜敗したものの、その他の試合では盤石の強さを見せつけてきた。特に前節の慶大戦ではスクラムでタイガージャージを粉砕。49-21で伝統の一戦を勝利し、1敗を守ったまま最終節を迎える。

一方の明大も早大と同じく1敗の状態。しかし、その道は険しいものだった。初戦の筑波大、セットプレーでかき乱されると自分たちの得意のかたちを思うように作ることができず、12年ぶりの敗戦を喫した。さらに慶大戦では試合終盤までもつれ込む接戦に。24-22と肉薄しながらもなんとか白星をつかんだ。明大らしい圧倒的なパワーをここまで思うように発揮できていない今季だったが、前節の帝京大戦は『何かが変わった』一戦であったことは間違いない。セットプレーで真紅のジャージを追い詰めると、ノータイムでの認定トライで劇的な逆転勝利。両校、5勝1敗だが勝ち点は早大が32で明大が30。その2の差はこれまでの道のりの違いを顕著に表すものなのだ。

今季の早明戦はいったいどんな試合展開になるのだろうか。春シーズンに岐阜で行われたこのカードは12-45で早大が力負けを喫した。後半に勢いを増した明大を抑えきれず、現在までのチーム野中で最も点差をつけられて敗北した一戦であった。HO清水健伸(スポ3=東京・國學院久我山)が今季最も印象に残っている試合として挙げるほどリベンジに燃えている。多くのトライが生まれたゲームだったが、今週末はそのようにいかないだろう。緊張感のある一戦らしく、締まった我慢比べのようなロースコアな展開となることが予想される。
そんな中で勝負のカギを握るのは何といってもプレースキックだろう。クロスゲームでこそ2点、3点が効いてくることは間違いない。両校、キッカーを担うのはキャプテン。12番を背負うなど、いくつもの共通点を持つCTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)とCTB平翔太(明大)であり、ここまでの対抗戦6試合でのキックの成功率はお互いに70%ほど。大一番で見せる主将の集中力が試合の行方を左右するだろう。


さらに、注目したいのは5番対決。第2列の右側に位置し、スクラムでは3番を押し込む役割を担う。さらにはラインアウトでも中核を担い、セットプレーの屋台骨として欠かせない。そんな試合の随所で存在感を発揮するポジションを担うのはLO栗田文介(スポ4=愛知・千種)、そして明大は菊池優希(明大)だ。どちらも大きな体躯を生かしたダイナミックなボールキャリーも強みとしており、フィールドプレーでの輝きが試合の流れを生み出すことだろう。1年からこの舞台を経験してきた早大の怪物、栗田か。ケガに悩まされながらも戦い続け、4年目にしてようやく紫紺をつかみ取った苦労人、菊池か。二人のマッチアップから目を離せない。


第101回を迎える大学ラグビー随一の好カード。ここまでの100回、赤黒と紫紺が激突するそのグラウンドの中に1度たりとも同じ瞬間はない。100年をかけて紡がれてきた数多の闘争の記憶は節目を越え、新たな1ページを刻もうとしている。今年はどんなドラマが生まれるのであろうか。国立の舞台で、その瞬間を見逃すな。
記事:村上結太 写真:安藤香穂、植村晧大、大林祐太、伊藤文音、吉田さとみ(早稲田スポーツ新聞会)
