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One Shot

2025
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【第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会】【決勝 明治大学戦/観戦記】

『荒ぶる』を響かせるための決勝での勝利。そのたった一つの勝利はまだ遠かった。43,489人が見届けた大学ラグビーの頂上決戦は紫紺のジャージに軍配が上がった。立ち上がりで3点を決め、先行した早大。しかし、明大のキック戦術に押し込まれ、自陣でのプレーを余儀なくされる。25分に今試合初トライを奪われると、続く34分にも失点。早大はトライチャンスを得られないまま前半を3-14で終えた。
続く後半も明大に先制を浴び、徐々に早大アタックに焦りが見え始める。ハンドリングエラーも増える中、反撃のきっかけとなったのはFB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)のラン。ようやくトライを生み出すと、早大らしい継続アタックが復活。フェーズを重ねて何度もラインブレイクするが、最後まで明大の守備を崩し切ることができず無念のノーサイド。『荒ぶる』は響かず、昨年同様、そして日本一に輝いた6年前のあの日から実に4度目の決勝敗退となった。

試合後にSO服部を慰めるCTB野中

明大のキックオフで開幕した運命の80分。ファイナルらしく、序盤はキックによる堅実なエリアの取り合いが行われる。5分、今試合注目のファーストスクラムが組まれると、吹かれた笛は明大のアーリーエンゲージ。敵陣でのプレータイムを増やし、じわじわと明大を自陣に押し込んだ早大。7分、WTB池本晴人(社3=東京・早実)がキックカウンターで前進し、ディフェンスを後手に回すとグラウンド中央で反則を獲得した。CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)が選択したのはショット。Hポール中央にキックを沈め、先制に成功した。
ここからは明大のキック戦術に押し込まれる展開が続くが、LO栗田文介(スポ4=愛知・千種)のスティールなどでピンチを脱していく。しかし15分、早大は中盤のマイボールスクラムで故意に崩したとみられてしまい、明大にゴール前まで侵入を許す。モールから辛抱強くタックルし続けた早大だったがついにゴール中央へのダイブを許してしまい、4点を追いかける展開となった。中盤での攻防が続く中、25分に早大はまたも敵陣中央で反則を得る。1点でも点差を縮めたい早大はショットを選択。しかし、野中のキックは左に逸れ、惜しくも追加点とはならない。プレー再開後はまたもキックの蹴り合いとなるが、空中での接触プレーにテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)が適応され、矢崎にシンビンの判定。スーパーエースを10分欠くこととなった。ミスが続き、思うように試合の流れをつかめずにいた早大は30分、明大のロングキックに押し込まれ、ボールをこぼしてしまうと紫紺のジャージにインゴールでボールを抑えられ、不運なかたちで失点を許した、かに思われた。TMOにて明大のノックフォワードの判定となり、救われた早大。しかし、陣地を思うように回復できず、34分にゴールラインを駆け抜けられ、スコアは3-14に。早大はいくつかのフェーズを重ねた後にハイパントキックで一気に前進することを試みていたが空中戦を得意とする明大BK陣に阻まれ、思うようにチャンスを生み出すことができない。ノータイムのホーンがなると同時にSO服部亮太(スポ2=佐賀工)が中盤からドロップゴールを狙うが、得点にはならず前半が終了。11点のリードを奪われ、後半に突入する。

PGを決めるCTB野中

日本一を決める最後の40分。早大はできるだけ早く明大の背中をつかむため、アグレッシブなアタックを仕掛ける。開始直後に見られたNo.8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)の素早く、力強いボールキャリーで前進する姿は後半に懸ける早大の熱い思いを表しているようだった。「敵陣でのセットプレーを増やしたいという意図」と試合後に大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)が語ったように、早大は敵陣でも積極的にボールを蹴り上げる姿勢を一貫させていた。しかし肝心のセットプレーで安定性を欠き、8分にはラインアウトのミスから追加点を奪われてしまう。3-19とリードを広げられる中、明大も同様にキックで敵陣侵入を試みており、早大は陣地を押し込まれてしまう。19分、自陣でのスクラムで反則を取られ、明大は3点の追加に成功する。時間を使われながら点差を広げられ、早大としては苦しい展開に。時間を考えれば早い段階での反撃のトライが欲しい早大だったからこそ、アタックには焦りが見え始める。24分には服部が自ら仕掛け、前進するがフォローが間に合わずスティールされてしまう。つかみかけた反撃の糸口を早い段階で摘まれ、グラウンドには閉塞感が漂う。しかし31分、自陣のスクラムからボールを展開した早大は矢崎が一気にスピードを上げ、ディフェンスを振り切る。フォローに走っていたWTB鈴木寛大(スポ3=岡山・倉敷)がさらに前進すると、最後は内側を走っていたSH渡邊晃樹(スポ2=神奈川・桐蔭学園)がインゴールに飛び込んだ。すぐに野中がキックを決め、スコアは10-22。

残り時間は少なくなっているが逆転可能な点差。ボールを保持し、フェーズを重ねるアタックに切り替えた早大はらしさの溢れる攻撃をようやく展開し始めた。35分、ハーフライン上でのラインアウトから左右にフェーズを重ね、飛び出した明大ディフェンスのギャップを見逃さなかったのはやはり服部。試合終了間際ながらも輝きを失わないその鋭角のステップでラインブレイクし、22メートルライン付近まで前進。勢いを増すアタックとともに、会場も最終盤に向けて熱気を帯びていく。しかし、全速力の攻撃はボールを落ち着かせることが難しく、無念にも落球してしまう。未だに12点を追う早大だが、時間は刻一刻と過ぎていく。15を超えるフェーズを重ね、フルタイムを告げるホーンがなる中でFL粟飯原謙(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がラインブレイク。日本一の可能性は潰えたが、赤黒のジャージはトライを取ることを諦めない。グラウンドに立つ15名の選手たちは最後まで戦い抜いたが、ついに明大のディフェンスを打ち破ることはできず、ゴール前でノックフォワード。拳を天に突き上げる明大とは裏腹に、早大の選手たちは崩れ落ちた。最終スコアは10-22。6年ぶりに『荒ぶる』を響かせることは叶わなかった。

鋭いボールキャリーを見せるNo.8松沼

国立競技場に絶えず響いた『One Shot』コールと『早稲田』コール。部員席から始まり、会場全体に伝播する野中組ならではの文化はまさに、この代の一体感を顕著に表していた。1年時には16年ぶりに新人早明戦で勝利したものの、チームは帝京大相手に決勝史上最多得点差で敗戦。2年時は大阪の地で年越し前に敗戦を喫し、3年時もまた帝京大に行く手を阻まれた。幾度も流してきたその涙は勝利への執着心を強め、一枚岩で戦う早大を作り上げた。日本一に輝くことができなければ、これまでの努力は間違っていたのだろうか。『荒ぶる』を響かすことができなければ、これまでの日々は水泡に帰すのだろうか。
そうではない。野中組で形作られた新たな文化の数々、そしてまたもあと一歩のところで敗れた強烈な悔しさ。これらは必ず、次の世代へと受け継がれる。3度目の正直、来年こそは『荒ぶる』を響かせてくれると信じる。

記事:村上結太 写真:村上結太、安藤香穂(早稲田スポーツ新聞会)