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Beat Up

2024

対関東学院大戦・観戦記


 極限の集中力…。「80分のうち75分集中できていたけれど、残りの5分で切れた時間があった」(NO8佐々木隆道)。「足りなかったのは半端なものではなく、極限の集中力」(主将・大田尾竜彦)。ギリギリの戦いの中で生じた僅かな隙間。沸き起こる後悔の念。ふとした瞬間、あの5分が今シーズンのすべてだった…。
 前半は完璧だった。「外から思い切り刈りにいけ。絶対に止められる」。指揮官の思惑通りのビッグヒット。低く、鋭く、そして激しく。スクラム、ラインアウトも制圧し、FW戦で想定通りの展開に持ち込んだ。
 そして課題のアタックでも、W杯準決勝・対NZ戦におけるワラビーズばりの『一点集中』で、関東学院大の数少ない穴を徹底追求。突貫小僧・CTB池上真介(2年)、ワセダが誇る自慢の第3列が愚直に前へ出続けた。「あの抜け方は想像以上だった」(清宮監督)。時間の経過とともに深まる自信…。そこにははっきりと『荒ぶる』への手応えが存在した。
 しかし、惜しむらくは関東学院大脅威のバッキングに屈した仕留めでの甘さ。鉄壁の防御を再三崩しながらも、決定打を欠き、相手をねじ伏せるに至らなかった。「先に点数を入れていれば…」(ロック桑江崇行)。
 そして我慢比べのまま迎えた後半、何かに吸い寄せられるように「魔の時間帯」(副将・川上力也)が訪れる。6分、ここしかないという絶妙のタイミングで仕掛けたNO8佐々木隆道、渾身のピックゴーが無情にもオブストラクション。「あれで流れを失った」(清宮監督)。一瞬よぎった失望の念…。直後の8分、対関東学院用に改良、それまで完璧に機能していたBK陣のディフェンスが僅かな綻びを突かれ、ついに失点。長く続いた均衡が崩れると、ギリギリの戦いで張り詰めていた緊張感が、瞬時途切れた。
 「あそこはこの一年の積み重ねの部分。修正できなかったのは自分たち4年生の責任…」(川上)。あまりにも大きな7点を失うと、その後は『荒ぶる』への想い、ひいてはこの一年・『大田尾組』のすべてが打ち砕かれるような、辛すぎる展開。空白の5分間の代償は余りに大きく、全身全霊を懸けた最高の舞台・粉雪舞う大学選手権決勝で涙に暮れた。
 「このメンバーでラグビーができたことを誇りに思う」。この一年、すべての重圧を背負ってきた主将・大田尾竜彦は、最高の仲間を前に、その感情を抑えることができなかった。頬を伝う大粒の涙。ともに戦ってきた4年生に対する自責の念。「後輩たちがみんな、王者の座は絶対に取り返すと言ってくれたから…」(大田尾)。『荒ぶる』こそ自分たちの物にすることができなかったが、『大田尾組』の財産は確かに後輩たちへと受け継がれた。
 来年も同じ舞台で関東学院と。早くも煮え滾る宿敵への想い。果てなく続くライバル伝説。「この悔しさは来年100倍にして返す」(ロック内橋徹)。「もう、絶対に負けたりはしない」(NO8佐々木隆道)。目に見えない極限への挑戦。挑戦者・ワセダの長い長い1年が再び始まる…。<早大ラグビー蹴球部広報 疋田拡>

<宿敵・関東学院の強さに悔しさを滲ませた清宮監督>
「言いたいことはたくさんあるけれど…。勝った者が強くて、負けた者が弱かった。そういう試合だったと思う。前半はプラン通りで、スコアに関しても予想の範囲内。想像以上に相手の裏に出る回数は多かったけれど、関東のバッキングの速さもあって仕留めるに至らなかった。後半は4,5回裏に出るチャンスを物にするように指示をしていた。抜け出した隆道がオブストラクションを取られたプレーがワセダにとっては非常に痛かった。あれでリズムを失ってしまった。前半のワセダのディフェンスを見て、関東はCTBのところを突いてくると思っていたけれど、そこのところでいかれてしまった。チャージされてしまった竜彦のキックは自分の指示。有賀はブレイクダウンに入ってくるので、誰もいない裏に蹴るように指示していたけれど、あの場面では裏目にでてしまった。有賀のカウンターはワセダは3,4人いっていたけれど、あそこまでいってしまうと後は組織の力ではなく、個人の力。そこの部分での集中力が足りなかった。今日の関東学院は素晴らしいチームだったと思う。竜彦を男にしてやろうと思ってこれまでやってきたけれど、それができずに申し訳ない気持ちで一杯。このチームは確実に進化していたし、幸いにもまだ終わりではないので、日本選手権ではいい試合を見せたい。関東学院のディフェンスは素晴らしかった」

<4年生に申し訳ない… 主将・大田尾竜彦>
「今は何を話していいか分からない…。一年の総決算として臨んだけれど、5分くらい集中力が切れた時間があった。そこで修正できなかったのはリーダーとしての自分の力不足です…。後半はきるべきところできれなかった。有賀のカウンターもチェイサーが不十分なところで蹴ってしまった。今は有賀に走られたという印象が強い。足りなかったものは集中力。ただそれは半端なものではなくて、極限の集中力。追う者の立場が強い者に勝つには完全なる集中力が必要だけど、ワセダは少し及ばなかった。関東にそれがあったかは分からないけれど、その一瞬を突いてきたのは強いということだと思う。ワセダとしては準備したことはほとんど出せた。FWのゴリゴリも完璧に止めたし、関東としては一番苦しい試合だったと思う。それでもああいう展開に持ち込める関東はうまかった。(関東学院大主将・山村)亮とはお疲れ様と話した。これからゆっくり話したい。メンバーの22人は決勝の舞台に立って、関東の強さを感じることができたけれど、それ以外のメンバーは悔しさを味わうことすらできなかった。そんな仲間、特に4年生に『荒ぶる』を歌わせてあげることができなくて申し訳ない気持ちで一杯。後輩のみんなに4年生がしてあげられることは、これがワセダなんだという物を残すこと。日本選手権ではそういう物を示せるような試合がしたい。みんなの想いを背負って戦ったけれど、4年生には本当に申し訳ない気持ちで一杯です」


<魔の時間帯を悔やむ副将・川上力也>
「ワセダとしては練習でやったことを80~90%できた。残りの部分の精度が足りなかったのが悔やまれる。ワセダに足りなかったものは集中力。魔の時間帯と言うか、1本取られた後の集中力が少し緩かった。それはこの試合に対しての戦術とか、そういったところではなく、チームが始まった時からの積み重ねの部分。それができなかったのは4年生である僕たちの責任。僕は信じて見守ることしかできないけれど、後輩たちにはそこの時間帯を埋めて欲しい。ここというところでの集中力の高さを感じたし、関東学院は強かった。攻め込んでる時間もワセダの方が長かったし、いいエリアでのアタックもワセダの方が多かったけれど、そこで取りきれなかったのが甘さだし、集中力の差。こういう舞台では集中力が高いチームが強い。その差だと思う。僕らはプレーできる分、悔しさも味わうことができたけど、スタンドで見守ってくれた仲間はその機会すら与えられない。そんな仲間にはとにかく申し訳ない気持ちで一杯です」


<悔しさを噛み殺すWTB吉永将宏>
「とにかく勝つことしか考えてなかったから今は頭の中がからっぽです。悔しいけれど、この気持ちをどう表現していいか分からない。まさかこんな風になるとは…。4年のみんなには申し訳ないことをした。みんなの前でどんな顔をしていいか分からない。代表としての責任、プライドを背負って戦ったけれど、それが果たせなかった。みんなの前で俺が絶対にやるから、日本一にしてやるから信じて見ててくれと約束したのに、申し訳ない…。後輩たちはこの悔しさを忘れずに勝ち続けて欲しい。もう、こんな思いは味わいたくない。日本選手権で完全燃焼します」

<勝つことの難しさを痛感するWTB正木健介>
「優勝できなかったことがとにかく悔しい。もう少し時間が経ってみないと現実として受け入れることができない。今の気持ちを言葉にすることはできない。出たときはリードされている状況で、外から見ていてトライを取られて切れかかっているところがあったから、何とか立て直そうと思った。最後まで勝ちを諦めないのがワセダだから…。今日試合を分けたのはこの一年の積み重ね。昨年勝ったことで、慢心ではないけれど、すべての場面で必死になって勝つという部分が足りなかったかもしれない。勝つことは簡単ではないのに…。それを後輩たちに伝えてあげることが自分たちの使命だと思う。4年間やってきたなかで勝ちたいという気持ちはみんな一緒だった。試合に出られる自分はみんなの想いを背負って勝たないといけなかった。今日はとにかく勝ちたかったです…」


<この悔しさは100倍にして返す ロック内橋徹>
「とにかく悔しい。表彰式での関東の姿を見て、次は絶対にやってやろうと思ったし、下を向きたくなかった。今日は最後のところで仕留めきれずに、一瞬のスキを突かれてしまった。キックがどうとかはそれがラグビーだからしょうがいない。もっと体を張らなければいけなかった。自分のプレーは全然ダメ。来年はこの悔しさを100倍にして返す」

<来年のリベンジを誓うロック桑江崇行>
「悔しいの一言。関東との差は何だったのかと言われても、今はよく分からない。前半はラインアウトも完璧だったし、ワセダとしては思い通りの展開だった。ただ、先に点を取りたかった。自分のプレーも全然ダメだった。今日は勝たなくては意味のない試合。この悔しさは来年必ず晴らす」


<赤黒を着て初めての敗北を味わったNO8佐々木隆道>
「今思うのはやっぱりラグビーは難しいということ。ワセダとしては思い通りの展開だったし、悪くはなかった。ただ80分の試合の中で75分集中できていたけれど、残りの5分切れた時間があった。今日はそこの差。取られた後、フッと抜けてしまった。今は冷静には振り返れないけど、要はワセダより関東学院の方が強かったということ。自分にとってはいつか負けることが必要だと思っていたけれど、やっぱり今日は負けたくなかった。今日の経験をワセダにとっていいものにしていかないと、先輩たちに申し訳ないと思う。この悔しさを忘れずに、来年の今日は笑っていたい。僕はもうこれ以上は負けません」