前節の日体大戦で火蓋を切った関東大学対抗戦。初戦を白星で飾った早大は、第2戦で立教大と対戦する。勢いを維持するためにも、この試合で勝利を収め、波に乗りたいところだ。

前節、早大の対抗戦は北の大地・北海道から始まった。日体大との初戦は、前半から早大が猛攻を仕掛ける。FWの力強い縦へのプレーと、BK陣の巧みな横への展開力が機能し、FB植木太一(人2=神奈川・関東学院六浦)、CTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)、WTB池本晴人(社3=東京・早実)らが立て続けにトライを奪う。38-0と圧倒的なスコアで、早大が前半を掌握した。
しかし、後半に入ってからは雨足が次第に強まり、ボールが手につかない。ミスが増えたことで、早大の持ち味であるテンポのいい攻撃は影を潜めた。しかし、CTB黒川和音(人4=茨城・茗渓学園)が魅せた。持ち前の冷静さと安定感でアタックラインを統率。彼のコントロールによって流れを取り戻した早大は、試合終盤に畳み掛けるように得点を重ねた。最終スコアは59-7。悪天候下でのタフな試合を、見事に制してみせた。
この試合で、特に際立ったのが池本と黒川、二人の存在だ。強風と雨という生憎の天候の中でも、彼らのプレーは揺るぎない安定感と一貫性を保ち、チームを勝利へと導いた。また、この記念すべき対抗戦初戦では、LO小林光晴(文2=福岡)、HO杉村利朗(社2=東福岡)、PR勝矢紘史(スポ4=長崎北陽台)、PR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)、FL野島信太郎(教3=東海大大阪仰星)、SH大賀雅仁(スポ3=神奈川・桐蔭学園)、SO田中大斗(教2=東京・早実)といった面々が、大舞台で堂々たる対抗戦デビューを飾り、チームの未来への確かな一歩を刻んだ。

対する立教大は、対抗戦の初戦で全国大学選手権覇者・帝京大との大一番に臨んだ。帝京大の接点での圧倒的な圧力と、素早い展開力によって数的有利な状況を作り出され、厳しい戦いを強いられる。しかし、FB大畑咲太(立教大)を起点としたテンポの速いアタックから、SH有賀貫人(立教大)が逆転のトライを決め、逆転に成功。一時はリードを奪う。
その後、帝京大に得点を許したものの、試合終了間際にも意地の一本を返すなど、最後まで攻め続けた。結果は21-48での敗戦となったが、昨年のチャンピオン相手に果敢に挑み続けたこの一戦は、立教大にとって大きな自信につながるものとなったに違いない。

今試合の早大のキーマンとなるのは、SO服部亮太(スポ2=佐賀工)だ。初戦となった前節・日体大戦は欠場したため、彼にとって今節が待望の対抗戦初戦となる。「自分にとっては初戦。いつもと違う感じになると思うが、落ち着いて自分のやるべきことを全うしたい」と語る服部。昨年度、ルーキーながら圧倒的な存在感を放った彼は、2年生となり、経験を重ねることでさらに自信を深めている。今年も右足から繰り出される大砲と、持ち前の卓越したゲームメイクで、早大のアタックを巧みに操る。
そして、今試合最大の注目選手はNo.8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)に他ならない。欠場期間が長かった昨季。春に行われた東大戦との定期戦で復帰を果たすと、菅平合宿では着実にカテゴリーを上げ、一貫して自身の役割を全うし続けた。そして、ついにこの男が再び『赤黒』のジャージに袖を通す。「自分はまだ『赤黒』に相応しい選手ではない」と静かに闘志を燃やしたあの春夏を経て、実力でこのジャージを掴み取ってみせた。彼の真骨頂は、接点での圧倒的な激しさだ。今試合でも、立教大の堅いディフェンスラインを打ち砕く、その豪快なプレーに期待がかかる。


そしてルーキーのSH川端隆馬(スポ1=大阪桐蔭)がついに対抗戦のメンバーに入った。春シーズンから着実に努力を重ね、ついに『赤黒』をつかみ取ってみせた。彼の持ち味は素早い球捌きとラグビーナレッジの高さだ。先週行われたジュニア選手権・明大戦でもスクラムから直接ボールを蹴り込み、50:22を披露するなど、視野の広さを見せた。今試合ではリザーブでの登録だが、早大のアタックにテンポを生み出してくれることに間違いない。
また、同じく対抗戦初出場となるWTB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)も控えている。彼の力強いランにも注目だ。

立教大の注目選手はFB大畑咲太(立教大)だ。前節の帝京大戦で何度もみせた力強いランには注意が必要。大畑のラインブレイクを許さず、攻撃の起点とさせないために早大は堅実な守備が求められる。
また、大型SHの有賀貫人にも警戒が必要だ。SHとWTBをこなすスピードとユーティリティ性が魅力の選手で、今シーズンからSHを主戦場としてきた。素早いラックサイドへのアタックと、トライに繋がるサポートプレーを強みとしている。
さらに、東海大大阪仰星を準優勝に導き、高校日本代表にも選出されたSO向井悠統と、流経大柏をベスト8に導いたSO鈴木大治郎のゲームメイクにも注目が集まる。早大の守備力で立教大ハーフ団を封じ込めることに期待したい。
対抗戦が開幕し、負けは許されないチーム野中。前節で大きな自信をつかんだ立教大は早大としての真価を証明する格好の相手に違いない。そんな立教大相手に完勝し、9月最後となるこの一戦で勝利を収め、佳境に入る対抗戦へ大きな弾みをつけたい。
立教大とのキックオフは、学生ラグビーでは珍しい18時。夜の帳が下りた秩父宮ラグビー場に稲穂の戦士たちの雄叫びが響き渡る。
記事:大林祐太 写真:村上結太、安藤香穂、大林祐太(早稲田スポーツ新聞会)