早大と明大、この2校の熾烈(しれつ)な争いは全カテゴリーを通して毎年様々なドラマを見せてくれる。その中でも春シーズンを締めくくるように行われる新人早明戦は、両校の今後を見通す意味でも一際注目される一戦だ。早大・上井草グラウンドの観客席は両校のファンで埋め尽くされ、例年通りの期待感に満ちた空気が流れた。今春、新たに早大ラグビー蹴球部の一員となった総勢27名のプレイヤーが相対するは大学ラグビー屈指のタレント集団・明大の新人だ。薄暗い雲が空を覆う中、両校の新人同士の力試しは明大新人のキックオフで幕を開けた。試合序盤は緊張からか、ボールが手につかない場面も多く見られ、シーソーゲームが続く。しかし前半20分、CTB佐々⽊凜太郎(スポ1=東京・⽯神井)が個人技でトライを獲得しその均衡を崩した。そのまま流れに乗った早大新人がもう1トライを追加し14-0とリードしたまま前半を折り返す。後半も開始早々佐々木がトライをあげ早大新人の勢いはさらに加速。鉄壁のディフェンスで明大新人にインゴールへの侵入を許さず無失点を守り抜いた。今試合ラストプレーでは、途中出場のWTB今尾⿓太(⽂1=東京・早⼤学院)がダメおしのトライをねじ込み、38-0で完封勝利を収めた。

明大新人のキックオフで試合の幕は開けた。天気模様は曇り。予想通り、キック合戦から始まった今試合序盤。SO⽵⼭史⼈(スポ1=神奈川・桐蔭学園)のロングキックからの統率されたディフェンスで明大新人の反則を誘い、早大新人が試合の主導権を握った。前半4分、注目のファーストスクラムは将来の重戦車を相手に完全な五分。セットプレーでも明大新人に流れを渡さない。続く8分、相手ラインアウトからのフェーズアタックをFL齋藤俊太(教1=東京・早実)の強烈なダブルタックルで防ぎペナルティを誘う。その後も果敢にラックにプレッシャーをかけ続け、明大新人に攻撃のテンポを一切作らせない。
15分、敵陣でのマイボールラインアウトからFB吉廻温真(スポ1=早稲⽥佐賀)が大きくゲイン。そこから安定したシークエンスで早大新人は攻撃のテンポをあげていく。そして19分、WTB髙野恵次郎(スポ1=福岡・⼩倉)がラインブレイクし一気にディフェンスラインを押し下げると、竹山のハイパントキックで明大新人はたまらずノックフォワード。安定したスクラムから佐々木にボールが渡る。持ち味のスピードでディフェンスラインを崩すとそのまま全員を置き去りにし、インゴール中央に単独トライ。竹山が確実にキックを成功させ7-0。
先制に成功した早大新人はこのまま流れを掴みたいが、明大新人がそれを許さない。キックオフ直後、相手からプレッシャーを受け、ノットリリースザボールの反則をとられてしまう。そこからの10分間、今度はディフェンスに回った早大新人だが、鉄壁の防御でトライラインを守り抜いた。ゲインラインをフェーズのたびに押し戻し、セカンドマンレースで相手の攻撃テンポを作らせない。まさに2年前から作り上げてきた早大のディフェンスを入部3ヶ月の新人チームが体現していた。
守備のターンから一転、再び流れは早大新人へ向き始める。33分、相手の連続アタックの隙を見逃さずターンオーバーに成功。キック合戦の末、ボールは吉廻の手に渡った。ここもまた個人技の高さが光る早大新人。吉廻が単騎でディフェンスラインを破ると、最後はSH栗原樹(商1=早稲⽥佐賀)がインゴールを叩き割る。その後の攻防も危なげなく制した早大が14-0と優位を保ってファーストハーフを終えた。

前半の流れのまま試合を支配したい早大新人は、後半開始直後から激しいプレッシャーをかけ続ける。しかし流石のタレント集団。後半最初のスクラムで早大新人を押し切り、セットプレーの完成度を見せつけた。このまま試合の流れは明大新人に渡るかと思いきや、その直後のスクラムで早大新人はすぐさま修正し、戦況を五分に引き戻す。
2分、安定したスクラムから竹山、吉廻、佐々木の巧みなサインプレーでチャンスを演出するも、ノックフォワードで得点には繋がらない。その後も攻撃の手を緩めることのない早大新人は、キックキャッチから齋藤のビッグゲインで再び大きく敵陣に攻め込んだ。そこから左右に大きく展開しながら、テンポよくアタックを繋ぎディフェンスラインのほころびを作り続ける。一瞬のディフェンスギャップを見逃さなかったのはまたもや佐々木。得意のカットインで相手守備を置き去りにすると、そのままゴール中央にトライ。21-0と明大新人を突き放した。
後半はキック合戦も有利に進めた早大新人。トライ直後の6分、ロングキックをエンドライン間際まで飛ばし、明大新人はインゴールドロップアウトで再開。竹山が守備の隙間を縫うように突破すると、サポートに走っていたWTB河村和樹(教1=東京・早実)に託して追加点を挙げ、26-0。
続く9分、センタースクラムで相手FWを押し切り後半序盤での借りを返した。その流れのまま竹山がまたもラインブレイク、サポートは栗原。安定した得点力で両者共に今試合での存在感を示しスコアは33-0。
このまま黙っているわけにはいかない明大新人も、さらに一段と攻撃のギアをあげ猛攻を仕掛ける。後半中盤戦は相手プレッシャーを前に守備の時間が多くなった早大新人だが、磨き上げたディフェンスで22メートルラインを一度も抜かせない鉄壁ぶりを見せる。なんとか反撃を試みるも、重なるミスやペナルティで試合の主導権を握りきれない。両者の集中力は試合終盤まで途切れることなく、スティールやターンオーバーの応酬が繰り広げられた。互いにフレッシュレッグを投入し、試合が大きく動き出したのは試合終了間際の36分。途中出場のSO中川空河(⼈2=福岡・修猷館)の長距離砲が炸裂し、早大新人に再びチャンスが訪れる。相手ラインアウトがこぼれたところをすかさずキャッチし、今試合最後のパスはグラウンド右側大外に構えていた今尾に渡った。執念のディフェンスで追いついた相手守備を、持ち前の体幹とフィジカルで引きずりながらダメおしのラストトライを叩きつけた。そのまま試合終了を知らせるホイッスルが鳴り、38-0と明大新人を相手に完全勝利を収めた。

今試合、早大新人の個人技の高さもさることながら、特筆すべきは徹底した守備の意識だろう。特にルーズボールへの反応、ラックへのプレッシャー、さらにゲームキャプテンHO堂薗尚悟(スポ1=神奈川・桐蔭学園)が語ったように「ラインブレイクされた後の対応、修正力」は目を見張るものがあった。また、前述したルーズボールへの反応や抜け出したプレーヤーへのサポートなど、決して目立たないがチーム全体として統一された意識を80分間保ち続けた結果が今回の勝利へと繋がった。引き継がれたチーム力の高さに加え、個人でもあの明大新人を圧倒してみせた。今試合を見たものは今後早大にはタレントが少ないなどとはもはや簡単に口にできなくなっただろう。それほどの結果を示してみせた早大新人のこれからの躍動が今から楽しみだ。鍛錬の夏、勝負の秋、最後の冬を控え、強烈な下からの追い上げを前に部内競争は加速の一途を辿るだろう。悲願の『荒ぶる』獲得へ、何人の新人が『赤黒』に袖を通すのか。これからの早大の活躍から目が離せない。
記事:堀内遥寿 写真:飯塚咲、吉田明日香、宮川紗季、藤本聡(早稲田スポーツ新聞会)
