ノーサイドの笛とともに歓喜の瞬間が訪れた。早明戦史上に残る大熱戦を制しての対抗戦制覇。14年ぶりという全勝優勝に選手たちは素直に喜びを爆発させた。 劇的な幕切れだった。1点のビハインドで迎えた後半ロスタイム、敵陣22mライン上で得たペナルティーのチャンスに主将・左京は迷わずペナルティーゴールを選択。レフリーにゴールを狙うことを告げた左京はキッカー武川の手を握り締めた。外せば敗色濃厚のこの場面。ワセダの運命はすべて武川に託された。「左京と握手した時に入ると思った」(武川)。「4年間を思いつつ、絶対に入ると思った」(左京)。メイジファンから沸き起こる大外せコールのなか、「無心で」蹴り放たれたボールはグラウンドの選手、見守る部員、そしてすべてのワセダラグビー関係者の思いを乗せポストの間を通り抜けた。36-34。残り1プレーという土壇場で試合をひっくり返し、執念で勝利を掴み取った。 「これが早明戦」(清宮監督)。ワセダは開始から相手の前に出る圧力に防戦一方。FWの激しい縦突進、強烈なタックル、密集でのしつこい絡みの前に思うようなプレーができずに、14-22と今シーズン初めてリードされて前半を折り返した。「これはまずい」国立がそんな雰囲気に包まれた。そして後半も先にトライを許してしまい14-29。もはやこれまでかと思われた。 しかしここで諦めるワセダではなかった。この試合のテーマは『責任と信頼』。試合前日清宮監督は「みんな満身創痍だけど、明日は自分の責任を果たそう。そうすることで他の14人、スタンドで応援している部員たちの信頼を得ることができる」と全員の前で語りかけた。見守る部員、そしてチームを支えてくれたスタッフのためにも諦めることなどできるはずもなかった。15点のビハインドから怒涛の反撃。今シーズンのワセダの形『高速アタッキングラグビー』でゲームを支配し、最後の最後で勝利を手繰り寄せた。 「あの点差から逆転するのは気持ちが強くないとできない。選手たちを誇りに思う」と清宮監督もこの逆転劇を手放しで喜んだ。それぞれが『責任』をまっとうした結果の後半の反則数0。そして誰もが入ると『信頼』したロスタイムの武川のゴールキック。ゲーム内容は決して満足できるのもではなかったが、テーマ『責任と信頼』を実践した「大きな意味のある勝利」(清宮監督)だった。 そして『信頼』の大切さを語りかけた清宮監督への選手からの『信頼』も相当のもの。今年は部員誰もが「ボスにどこまでもついて行く」と口を揃えるほどだ。そんな絶対的な『信頼』を集める清宮監督は夏合宿で配られる部集『鉄笛』の終わりにこんな言葉を残している。 学生よ、思いっきり暴れてくれ、楽しんでくれ、笑ってくれ、泣いてくれ。 すべてを受け止めて、お前たちを優勝させてやる。 これに応え、これまで感情を素直に表わしてきた選手たち。この言葉にうそはない。カリスマ監督に導かれ、ワセダは頂点への階段を駆け上がる。 <喜びは分かち合う仲間がいてこそ大きくなる。祝勝会も大盛り上がり!> <左京主将試合後のコメント> <ロスタイムに見事な逆転ゴールを決めたCTB武川正敏(4年)> <スクラムで奮闘。プロップ安藤敬介(4年)> <再三に渡ってゲインラインを突破したNO・8佐藤喬輔(4年)> <強さでメイジに対抗したロック高森雅和(3年)> <1年生ながらスクラムで互角に渡り合ったプロップ伊藤雄大> <堅実に相手のキックに対応したFB柳澤眞(3年)> |
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