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WASEDA FIRST

2023

ジャパンセブンズ2日目観戦記

 夕闇迫る薄暮の秩父宮が興奮の坩堝と化した。誇り高き赤黒セブンは見る者すべてを唸らせる絶頂のパフォーマンスを披露。ワールド、リコー、クボタ、破竹の勢いでトップリーグを3タテし、涙のプレート優勝を成し遂げた。
 この日のワセダの快進撃は、まさにチームスローガン『RAISE UP』そのもの。「やるのは俺たち。自分たちで気持ちを高め、勝利を掴み取ろう」。極限の集中に高度な意思統一。個々の意識が明らかに変わり、前日までとは明らかに違うオーラが発せられた。
 万全の準備で臨んだワールドとの初戦。ワセダは会心の試合運びを見せる。ビデオミーティングで修正を重ねたグリップディフェンスがその威力を発揮。タックルでは最後まで諦めず、相手を引き倒すという約束事もきっちりと果たし、ピンチの芽をことごとく摘んでいった。
 そしてアタックでもチャンスを確実に物にし、4トライをゲット。外国人パワーもものともせず、24-7で会心の勝利を収めた。心・技・体、すべてが充実のパーフェクトウィンでチームは完全に勢いづいた。
 迎えた準決勝。リコー相手に選手たちのハートはさらに熱く燃え上がった。「日本選手権の借りを絶対に返すぞ」。思うようなパフォーマンスができずに喫した『山下組』唯一の敗北。あの悔しさを忘れている者など、誰一人としていなかった。
 練習をオフにしてまで応援に駆けつけた全部員の大声援にも後押しされ、ワセダは開始からリコーを圧倒。山田智久(4年)の4トライに後藤翔太(3年)の50メートル独走で31-12と大きくリードを奪った。後半3分に山田が挙げたトライには会場中がやんやの喝采。鋭角的なステップで相手ディフェンス3人を翻弄し、トライを演出した山岡正典(4年)からはガッツポーズまで飛び出した。
 ところが、この後ワセダOB武川(H14卒)、小森(H12卒)に走られペースを崩されると状況が一変。ラストプレーでもまさかの同点トライを許し、土壇場でサドンデスの延長戦に持ち込まれてしまった。
 会場を包み込む大きなため息。しかし、ワセダの気持ちは決して切れることはなかった。「とことんまで戦ってやる」(後藤)。1本で勝負が決まる緊迫した雰囲気の中、チームは息を吹き返した。そして延長開始1分、塾長・今泉清が丹念に落とし込んだディフェンスが歓喜をもたらす。自陣に攻め込まれたところで、乾坤一擲、渾身のターンオーバー。やっとの想いで取り返したボールを、後藤が相手を置き去りにする見事なスピードでインゴールまで運び、決勝へのキップを手に入れた。
 日本選手権のリベンジ達成に応援のチームメイトも大熱狂。「熱すぎる。見ているこっちが興奮してきた。居ても立ってもいられない」(伊藤雄大)と、選手の下を訪れる激励の輪が次々と広がっていった。
 「ここまできたら後は気持ちと、基礎体力の勝負だ。自信を持て」(今泉清)。プレート決勝の相手は、あのキャメロン・ピサーにマフィリオとワールドクラスを要するクボタ。塾長の熱い檄に送り出された赤黒セブンは、最後の気力を振り絞り、20分間の戦いに挑んだ(決勝は10分ハーフ)。
 大一番にふさわしく試合は「大激戦」。大男を嘲笑うかのように、山田、後藤が防御網をすり抜ければ、クボタも外国人選手がド迫力の突進を見せワセダを粉砕。トライを取り合う、激しい攻防に観衆の目が釘付けになった。
 後半3分にマイスクラムスクラムをターンオーバーされ21-26と逆転を許すも、赤黒セブンは焦ることなく、とにかく我慢。相手との間合いを計り、一瞬の勝機にすべてを懸けた。そして迎えた7分、ついにその時が訪れる。キックを処理した山田が相手とのすれ違いでブレイクすると、元SOのスキルを存分に発揮し、2人飛ばしのロングパス。最後は正木健介(4年)が涙の50メートル独走を見せ、優勝を大きく手繰り寄せた(28-26)。
 終了間際に訪れた絶体絶命のピンチも「ワセダのMVP」後藤が根性で追いつき、外国人選手をタッチの外へ。最後は後藤が雄叫びを挙げながらボールに蹴りだし、見事プレート優勝を掴み取った。
 試合後、赤黒を身に纏った選手たちの喜びはMAXまで上昇。応援に駆けつけた部員も加わり、2003年1月11日、大学選手権優勝時に負けない盛り上がりが秩父宮を包み込んだ。これで先のYC&ACセブンズと合わせてトップリーグ4チームを撃破。「応援に来た仲間に(ミッションに掲げる)打倒社会人が可能だというところを見せてやろうぜ」。選手に語った塾長・今泉清の言葉が現実のものとなった。
 「社会人だって勝ちにきている。その中でのプレート優勝は評価できる」と観戦に訪れた清宮監督もニンマリ(夜には赤坂で、清宮監督から選手たちへ焼肉のプレゼント!)。「Thats 『RAISE UP』!」。『大田尾組』がその第一歩で大きく羽ばたいた。<HP委員 疋田拡>

<後藤に負けず、4年生WTBカルテットが大活躍!>
しなやかな走りでトライを量産した正木健介、独特の身のこなしで社会人を翻弄し続けた山岡正典、「ゴキブリステップ」でラインブレイクを連発した山田智久、的確な指示と堅実なプレーでチームを支えた加藤かい。「4年生が本当によくやってくれた」(今泉)と言うように大会を通じて4年生WTBカルテットが大活躍。「4年生がチームを引っ張る」ワセダの伝統を体を張って体現した。4人に共通するのは4年の意地とレギュラーへの熱い思い。期待のルーキー、高校NO1WTB・首藤甲子郎(桐蔭学園)やエリートアカデミーに選出された今村雄太(四日市農芸)にレギュラーは座は渡さないと、その存在感を改めて見せつけた。そして、今大会主将を務めた山岡が4人の思いを代弁し、強烈な自己主張。「清宮さん、1年生にあまりホクホクしないで、僕を見てください!」。4年生WTB陣が今年は魅せます。

<MVP級の活躍を見せた後藤翔太>
「今日は昨日のミーティングの時に、みんなで話したことがうまくできた。ディフェンスもアタックもすごくよくなったと思う。今日はみんなが頼りにしてくれてうれしかった。社会人にも大分慣れてきたし、全然いけるという感じでできた。変に意識することもなくなってきた。最後はカッコよかったでしょ(笑)。魅せ場を作っちゃいました。自分のプレーは悪くはなかったけど、もっとスピードをつけて相手を置き去りにしたい。SHとしてどうしても(田原)耕太郎さん(H15卒)と比べられてしまうけど、それはしょうがないし、余り気にしていない。ただ、最近あの人の凄さが分かってきて、ビデオを見たりして動きを研究しています。盗めるところは自分のものにしていきたい。清宮さんも自分を生かすプレーを考えてくれているみたいなので、うれしいです。今年はがんばります」

<今泉清も絶賛!優勝後には涙を流した正木健介>
「今日は本当によかった。すごくうれしいです。泣くのはちょっと早過ぎましたかね(笑)。最後は本当にきつかったです。ワールドに勝ったところからみんなで「社会人を3タテしようぜ」と言って、盛り上がってました。昨日ヤマハに完封負けして、負い目を感じる部分もあったけど、今日でそれも破けたと思います。YC&ACの時に比べてディフェンスもアタックもすごく変わったと思います。今はアピールする場をもらっているので、それを生かそうという気持ちです。自分も今年で最後ですし、4年の意地とプライドに懸けて若い人には負けられないです。まだまだ自分のプレーに不満なところはありますけど、強気でがんばりたいです。今年は15人制でも絶対に赤黒を着ます」

 対ワールド(プレート1回戦、24-7)
先発:正木健介、山岡正典、星野邦夫(2年)、後藤翔太、菊地和気(3年)、加藤かい、山田智久
入替:中村大祐(3年、←加藤)、池上真介(2年、←山田)

 対リコー(プレート準決勝、36-31)
先発:正木健介、山岡正典、星野邦夫、後藤翔太、菊地和気、加藤かい、山田智久
入替:松本允(2年、←山岡)、池上真介(←正木)

 対クボタ(プレート決勝、28-26)
先発:正木健介、山岡正典、星野邦夫、後藤翔太、菊地和気、加藤かい、山田智久
入替:池上真介(←山田)