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Beat Up

2024

対帝京大 『豊田組』、成長の証


 これぞ『プロジェクション』効果! なぜ?を考える。何?を考える。どう?を考える。常に意図を持ってプレーする。イメージを共有し、先読みする。「夏関東」後の大事な一戦、『豊田組』は成熟した大人のチーム、理想の境地へ、また一歩前進した。「今日はこれだけグラウンドコンディションの悪いなか、我慢して取るべきところで取れたのは大きいです。テンポを上げて、取るべきところで取って、我慢。そういうゲームができました。関東戦後の反省、この一週間の成長です」(主将・豊田将万)―
 試合は開始から想定どおり、覚悟のとおり、ザ・帝京戦と言うべきハードな展開。ブレイクダウンはガッチガチ、近場はドスンドスンのメガトン級。ことに外国人選手ふたりの暴れっぷり、荒っぽさはすさまじく、壮絶な肉弾戦が繰り広げられた。執拗に繰り返されるペナルティにリズムとチャンスを奪われ、気づけば根競べのキックの蹴り合い。「特に前半はうまくいかずに相手のペース。帝京の形であるスローテンポに持ち込まれて、ゲームが停滞、フラストレーション溜まりました…」(主将・豊田将万)。加えて開始早々の2分には、SO山中亮平がチャージを喰らい先制を許す(昨春とそっくりの形。有田隆平がスーパータックルでターンオーバーした直後だけにもったいなかった…)など、難局は積み重なった。
 しかし、俄然盛り上がる赤いカベを前にしても、慌てず、騒がず、ワセダは冷静にしっかりとゲームをコントロール。「CDと連勝した勢いもあってはじめは勢いがあるだろうけど、絶対に相手はバテる」「ボールを動かし続けて走り勝つぞ!」「やってくることは分かってるんだから、雨だろうが絶対に大丈夫!」。試合前行ったプロジェクションミーティングで共有されたイメージをぼやかすことなく、徐々に相手の自由と勢いを削いでいった。19分には2人の外国人選手と一悶着あった後のペナルティから隙をつき突然の大外展開(誰もがタッチと思ったところで山中がGO!)。27分にはゴール前スクラムからの計画的な崩しであっさり逆転(WTB中濱寛造!)。「アタックではハイパンが多かったですけど、それでも敵陣に入ってからは、自分たちが攻めたいところのチョイス、やりたいプレーができて、結果トライも取れてよかったです」(副将・長尾岳人)…。「ブレイクダウンについても、最初は相手もガンガン来て思うようにいかないですけど、途中からは相手の足が止まって、ワセダの足はよく動いていて、よかったと思います」(主将・豊田将万)…。劣悪なグラウンドコンディションもあって、目指す超アップテンポラグビーには持ち込めなかったものの、それでも危なげなく戦うその姿からは、成長の跡がしっかりと見て取れた。
 そしてそして、何よりも成果を実感、大きな意味を持ったのが、心が折れてもおかしくないピンチでの粘りと、チャンスを潰しながら「ここぞ」では取りきった勝負勘。19-7で迎えた後半26分、それまで激しさでチームの先頭に立っていたフッカー有田隆平がまさかのシンビンを喰らうと、それをキッカケにゴール前に釘付け。7人対8人。しかも場所は大所帯・帝京ベンチの目と鼻の先。「見せてやれ~」「ST~」。つい先日、慶應をスクラムトライで捻じ伏せた大男たちとの、息を呑む意地の張り合いが始まった。ヒット!1,2,3,4,5…。お互い組みなおすこと数回。ついに瀧澤直が相手に組み勝ちペナルティを誘発。まとまりとイメージの共有で、大きなヤマを乗り越えた。そしてその直後には逆に相手をゴール前から逃がすことなく、ターンオーバーを起点に加点(18分に引き続き、またしても長尾岳人!)。「ここが絶対にカギだ、勝敗に関係なく取られたら大きな反省が残る、絶対やってやろうって。その直前にターンオーバーされてみんな目の色変わってましたね。帝京が今年スクラムに拘っているのは分かりきっていましたし、あそこはそれぞれが口には出さなくても、全員が分かり合えていた。ワセダとしていいスクラムが組めたと思います」(副将・瀧澤直)。
 相手を剥がしきれない、反則を許してしまうブレイクダウンの甘さ、もっと試合を楽にできたであろうチャンスでのミスなど、まだまだ完成形には程遠いものの、この夏のテーマ『プロジェクション』で難敵を下したことは、今後への分岐点、単なる一勝以上の大きな価値あり。「今日は課題も出たけど、それぞれがしっかり意図を持って、きちっと先を読んでプレーしているのが分かった。そのすべてが今の段階でうまくいくかは別にして、成果があった試合。夏合宿残りの一週間は、プロジェクションの精度と、シンプルに基本スキルの向上、今一度基本に立ち返ってやっていこうという気持ちです」(中竹監督)。夏のラストスパートで更なる高みへ。『豊田組』はこんなものでは終らない―

<井上、坂井、村田、BK陣大爆発!Bチームも快心の勝利!>
 これに先駆けて行われたB戦では、関東戦の負けから生まれ変わった『チーム・小塩』が終始圧倒。SO井上隼一が相手No8を迎撃したのを皮切りに、前日から続くと思われた帝京の勢いを完全に食い止めた。
 特にSO井上、CTB/WTB坂井克行、村田大志を軸にしたアタックは、もう何をやってもうまくいく、怖いくらいのハイパフォーマンス。シャークスアカデミー留学効果の井上は、SOとしてはありえない?4トライ。雨でもキレキレ、坂井、村田の超人的ランは完全に赤黒レベル。この日も大活躍、Aチーム不動のCTB長尾岳人も気にせずにはいられない? 「BのCTB陣、すごいですね。試合を見ていてすごく刺激を受けますし、自分もやらないとって。あいつら、ホントやばいっす(笑)」


<成果十分! プロジェクションの更なる精度アップを追及する中竹監督>
「今日は課題も出たけど、それぞれがしっかり意図を持って、きちっと先を読んでプレーしているのが分かった。そのすべてが今の段階でうまくいくかは別にして、成果があった試合。ゲームコントロールをする山中をはじめとして、すぐに結果に結びつかない、まだまだ課題だと認識してくれれば、それでいい。これからドンドン成長していってくれると思う。今日は総じてよく我慢できた試合。成果を感じるところは、例えば、反則が多いなかでゲームコントローラーがしっかりと冷静にハイパンを上げて、エリアを取るべきところはきっちり取って、勝負どころのスクラムは抑えて、逆に一発でトライを取るとか。スクラムはアゲインもあったけど、そこを起点にトライを取れたのはよかった。雨の日の戦い方も、今日で学んでくれたらと思う。ブレイクダウンに関しては、外国人選手ふたりが強かった。ワセダとしては、ボールキャリアのところ、ドライブなど基本部分を修正していかないといけない。今日も相手に反則をされているし、なかなかいい球を出すことができなかった。これからについては、もっともっと深くプロジェクションしていくこと。セットが安定しなかった場合どうするのか、雨の日はどうするのか、相手のプランは。ワセダだけの問題ではない外的要因をもっともっと考えていく必要があるなと。今日はその認識を持てた試合。夏合宿残りの一週間は、プロジェクションの精度と、シンプルに基本スキルの向上、今一度基本に立ち返ってやっていこうという気持ちです」


<我慢を重ねて新たな境地! 今後への手応えを口にする主将・豊田将万>
「帝京は関東同様ブレイクダウンの強いチーム。簡単に自分たちのペースに持っていくことはできませんでした。特に前半はうまくいかず、相手のペース。帝京の形であるスローテンポに持ち込まれて、ゲームが停滞、フラストレーション溜まりました…。ただ、最初の20分はああいう展開になることは分かっていましたし、とにかく我慢だと。今日はこれだけグラウンドコンディションの悪いなか、我慢して取るべきところで取れたのは大きいです。テンポを上げて、取るべきところで取って、我慢。そういうゲームができました。後半ひとり少ないなか、インゴールを背負った場面は、ここで取られたら関東のときと同じだぞと。絶対死守、絶対ノートライとみんなで意識しました。そこを乗り越えられたのは成長の証だと思います。関東戦後の反省、この一週間の成長です。ブレイクダウンについても…、我慢です。最初は相手もガンガン来て思うようにいかないですけど、途中からは相手の足が止まって、ワセダの足はよく動いていて、負けてない。よかったと思います。スクラムに関しても、内田にしろ、橋本にしろ、やるべきことが明確になって、よくなってきてるなと。最悪の時期を脱して、上向いてきてると思います。今日はこれだけボールが動かない泥試合で、FWは消耗しましたけど、乗り越えられたことは大きなことです。残り一週間、シニアは今日の反省をしっかり踏まえることと、ジュニアは負けが続いているこの流れを断ち切る。ふんどしを締めなおそうと思います。春の最後に比べると、それぞれに責任感がでてきましたし、U20で悔しい想いをしてきた奴もいて、やっとの思いでこの場に上ってきた奴もいて、チームとしていい状態です。今日は相手のペナルティの多さにテンポを奪われました。いらんことされたというか…。ただ、そこをきれいに剥がしきれないのは自分たちの課題です」

<相棒に喝!? 勝負どころのスクラムを制し面目躍如の副将・瀧澤直>
「僕としては…、ちょっとスクラムが安定しないところがあったというか、反省が先にきますけど、合宿を通じて確実にステップを踏んでいることがやっていても分かりますし、まぁよかったのかなと。前半は相手も元気で、自分たちのやりたいようには組めず、後ろには迷惑をかけたところもありましたけど、時間の経過とともに、相手のフィットネス含め、ワセダもどう組むべきか分かってきて、最後はスクラムで勝てたと自信をもって言える形だったと思います。後半ゴール前に釘付けにされた場面は、ツカ(塚原)も入ってきてくれたので、ここが絶対にカギだ、勝敗に関係なく取られたら大きな反省が残る、絶対やってやろうって。その直前にターンオーバーされてみんな目の色変わってましたね。帝京が今年スクラムに拘っているのは分かりきっていましたし、あそこはそれぞれが口には出さなくても、全員が分かり合えていた。ワセダとしていいスクラムが組めたと思います。樹は…、やっと戻ってきましたね。遅いですよ(笑)。僕も以前同じところを受傷して、スクラムを組むときに一番辛いケガだとは理解していますし、彼は案外ヘタレなんで(笑)痛い痛い言うかもしれないですけど、あいつがいないとパワー減ってしまいますから。最後みたいなスクラムを組んでくれたらすごく助かります。今日はいいスクラム組んでましたよ、橋本さん(笑)。ブレイクダウンに関しては、やっぱり関東なのかなと。帝京は外国人選手がすごく暴れていてタイトでしたけど、あれでも挑発には乗ってない方だと思います。ブレイクダウンは全然問題なかったです。ガツガツやれた。試合を通じて、ペナルティが多かったのは反省しないといけないですけど。山を降りたらもうすぐシーズン。Aはもうこの合宿では試合はないですけど、まだ合同練習がありますし、この2ゲームの結果に満足せずシーズンに繫げていければと思います。もちろん誰しも満足するつもりもありません。今日はスクラムに関しても成長を感じられる試合だったと思います」


<DFが厚くても無問題! 核弾頭として相手を崩し続けた副将・長尾岳人>

「前半は帝京のスローペースに引き込まれてしまって、さらには自分たちのキックに対する戻りが遅かったこともあって、タイトなゲームになってしまいました。勝負どころでのトライが大きかった?、あぁ~、あのトライですか、はい(笑)。あれは山中の入れ方もうまかったですから。対面に立っていた外人選手が自分から目を切っていたので、いけるかなって。今日もディフェンスに狙われている感じがありましたけど、いつもそこは厚いところですし、狙われる、ディフェンスがいるのが分かっているなか、自分がそこをどうこじ開けるのかを常に考えてやっているので大丈夫です。まぁ、でもまだまだ。シーズンに向けて、もっともっと前に出られるように追求していきます。アタックではハイパンが多かった(山中が繰り出すその高さは間違いなく日本一!)ですけど、それでも敵陣に入ってからは、自分たちが攻めたいところのチョイス、やりたいプレーができて、結果トライも取れてよかったと思います。ハイパンをうまく使っていこうとも試合前から話していましたし、悪くはなかったです。今日は中竹さんにして頂いているプロジェクショントレーニングの効果が出た試合だったと思います。よく我慢できたゲーム。ゴール前ではFWに相当助けられましたし、BKも常に集中してました。合宿ではまだアタック&ディフェンスもありますし、秋のシーズンに繫げられるよう、またしっかりやっていきます。BのCTB陣、すごいですね。試合を見ていてすごく刺激を受けますし、自分もやらないとって。あいつら、ホントやばいっす(笑)」


<いい試練? 初のAチーム『15番』にも反省しきりのFB井口剛志>
「いやぁ、Aチーム初スタメンだったんですけど、全然うまくいきませんでした…。今日は下が緩いので、自分のいつもの大きなものではなくて、ショートステップで早めに交わすことをイメージしていたんですけど、まったくできずで。緊張はなかったんですけど、全然でした…。今日は自分にとってチャンスだったんですけど…。課題たくさんでてしまいました。カウンター、これは個人の問題になりますけどキック処理、ラインにも全然参加できず、もっと積極的にやらないといけないなって。やっぱりAでやることは、いい刺激になるというか、Bにいるときとはまったく違う感じです。AはFWが強力ですし、SOの山中さん、これがすごいというか、他のチームとは全然違う。ギリギリのパスもどんどんきますし、プレーしていてすごく楽しいです。試合後の南橋(伏見工での同期)との会話ですか?、剛志のステップは全部分かってたよ。だからそれを仲間に教えてそこを抑えるよう伝えたって言われたので、逆に僕もお前の動きは全部分かってたわって(笑)。ホント強力なCTBだと思うので、これからもいいライバル関係で負けないようにやっていきます。今日はAチームでプレーさせてもらいましたけど、まだ自分は力不足で、判断のところに問題があるなと。そこはしっかりと直していって、プラスして新しいスキルを身につけられたらと思っています。例えば、1:1でもっとスピードに乗ってラインブレイクするとか。他にも色々模索中です(笑)。もう小さいときから自分はワセダの15番を着たいと思ってラグビーをやってきました。ワセダの15番には、背中を押してくれる力がある。今日はその力を借りることができませんでしたけど、次こそはやってやります。次に目指すのは赤黒の15番です。夏合宿は毎日新しいことに取り組んでいて刺激的ですし、吸収することだらけです」

<こんなシーンの連続 「日本人相手なら完全にトライの形でした…」(山中)>