『OneShot』
「限られた好機を確実にものにし勝ち切る。 選手、スタッフ、サポーターが一体となり、同じ方向を見据え続ける。」 ノックアウトステージである全国大学ラグビーフットボール選手権準決勝は、その言葉が示す意味を体現した一戦だった。『One Shotコール』と『早稲田コール』が響きわたる国立競技場。緊迫した中、試合が幕を開けた。開始早々、早大は連続フェーズからSO服部亮太(スポ2=佐賀工)が一瞬の隙をつく鋭いランからディフェンスを切り裂き、先制点を奪った。しかし、試合巧者の帝京大が反撃の狼煙をあげる。早大は続けざまに2トライを許し、追う展開に。それでも早大は冷静なゲームメイクを見せる。服部のキックから試合を組み立て、追加点。ペナルティーゴールと服部のドロップゴールで着実に得点を重ね、23-14で試合を折り返した。
続く後半も早大はラインアウトモールとペナルティーキックから得点を重ねていき、帝京大を突き放す。試合終盤、帝京大の猛攻から失点を許す場面もあったが、ホーンが鳴るその瞬間まで全員が身体を張り、つながり続けた。激闘の末に早大が勝利を手繰り寄せ、決勝の舞台へと駒を進めた。

帝京大のキックオフでセミファイナルの幕が上がった。早大は服部の正確なキックでエリアを掌握し、落ち着いて試合を組み立てていく。5分、帝京大の反則から敵陣ラインアウトの好機を得ると、No.8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)が力強いキャリーで前進し攻撃の起点を作る。連続フェーズで相手守備を揺さぶると、最後は服部がディフェンスの隙間を鋭く突き、ゴールラインを駆け抜けた。稀代のゲームメーカーは感情を爆発させ、渾身のガッツポーズを見せる。CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)のコンバージョンゴールも決まり7-0と幸先のよいスタートを切った。
しかし、頂を知る昨年度の王者・帝京大は、このまま引き下がる相手ではない。10分、反撃の狼煙が上がる。ラインアウトを起点にフェーズを重ねられると、ディフェンスラインの間を突かれる。さらにはオフロードパスを繋がれ、インゴールを叩き割られた。前半の早大は硬さからか相手にフェーズを重ねられる展開に対応しきれず、ディフェンスにギャップを生じさせる場面が目立つ。12分にも帝京大のラインブレイクを許すが、FL田中勇成(教4=東京・早実)のバッキングからの決死のタックル、さらに服部のスティールで一度はピンチを切り抜けた。だが直後のキックカウンター、迫り来る早大ディフェンスをなぎ倒すように前進され、再び失点を許す。スコアは7-14。しかし、早大が焦ることはなかった。19分、服部のキックに松沼が素早く反応し、猛然とプレッシャーをかけて赤いジャージーを仕留め切る。早大は勢いそのままにラックを乗り越えてターンオーバー。テンポよくボールを動かし、相手の反則を誘う。ショットを選択した早大は野中が冷静に沈め、点差は4点に縮まった。
ここからモメンタムをつかんだ早大はディフェンスの激しさを一段と高め、試合の主導権を握っていく。服部が50:22を成功させ、一気に敵陣へ侵入。スタンドに『早稲田コール』が響き渡る中、CTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)、LO小林光晴(文2=福岡)が立て続けに鋭く、そして激しいヒットを見せると、帝京大は耐えきれず反則。直後のラインアウトモールからはHO清水健伸(スポ3=東京・國學院久我山)が力強くゴールラインを叩き割り、15-14。早大が逆転に成功する。
さらに29分、帝京大ボールのラインアウトに強烈なプレッシャーをかけると、相手のミスを誘発。好機を逃さず、野中が絶妙なキックパスを通す。WTB池本晴人(社3=東京・早実)が裏へ転がし、ボールに追いついた矢崎がグラウンディング。スコアを20-14とし、リードを広げた。36分、服部がドロップゴールを沈め、スコアは23-14。1トライ1ゴールでは追いつかれない差をつける。前半終了間際のノータイムでは、野中がペナルティーゴールを狙うも成功には至らず。それでも早大は23-14とリードを保ち、前半を折り返した。

迎えた勝負のセカンドハーフ。服部のキックで試合が再開すると、次第に風が強まり、早大にとっては難しい条件となっていく。それでも池本がハイボール処理で勝負強さを発揮し、流れを渡さない。スクラムでも早大は圧倒的な強さを示し、優位を保った。15分、ラインアウトモールから再び清水が力強く押し切り、貴重な追加点を挙げる。 23分には服部がペナルティーゴールを冷静に沈め、スコアは31-14。突き放しにかかる。
26分には服部と池本がテンポよくパスをつなぎゴールラインへ迫るも、あと一歩及ばず得点には結びつかない。 30分過ぎ、帝京大にフェーズを重ねられると接点で仕留め切ることができず失点。31-21と点差を詰められ、試合は再び緊迫した展開となる。
ラストチャンスに懸ける帝京大は大外へとボールを動かすが、SH糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)、LO栗田文介(スポ4=愛知・千種)を中心に早大ディフェンスが激しさを見せ、矢崎とWTB鈴木寛大(スポ3=岡山・倉敷)も鋭いタックルから連続攻撃をしのぎ切る。 国立に『One Shot』コールと『早稲田コール』が響き渡る中、糸瀬からのパスを受けた服部がタッチラインへ蹴り出す。ボールは静かな放物線を描いてスタンドへと消え、その余韻を切り裂くように試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。早大は31-21で勝利し、決勝の舞台へと駒を進めた。

『極限遂行』をテーマに掲げて臨んだ今試合。帝京大との一戦は、まさに激闘だった。それでも早大は80分間集中力を切らすことなく戦い抜き、『One Shot』を体現して勝利をつかみ取った。大学選手権に入ってから、試合を重ねるごとに確かな成長を遂げてきた早大。 次なる舞台は決勝戦。泣いても笑っても、チーム野中で挑む最後の一戦。仲間との笑顔の先に、赤黒の凱歌が待っている。
記事:大林祐太 写真:村上結太、安藤香穂(早稲田スポーツ新聞会)
