すでに関東大学対抗戦(対抗戦)では各地で多くのトライが生まれている。ラグビーの醍醐味ともいえるその瞬間は、これまで数々のドラマを作り出してきた。しかし、秋の早大は相手に対してそんな希望は一切与えない。今季の対抗戦では、いまだ1トライも許さず。立ちはだかる壁をことごとく粉砕し、徐々にステップアップしていく。
次なるターゲットは青学大だが、これまでの2戦と同様に一方的に試合を支配したい。勝利の糸口が見出せなくなるような完全無欠な盾と切れ味抜群の矛で、チャレンジャーを迎え討つ。

前節の立大戦では、早速6分にSO竹山史人(スポ1=神奈川・桐蔭学園)からのキックパスを受けたFB吉廻温真(スポ1=早稲田佐賀)がハンドオフで相手を突き放して、グラウンディング。1年生ラインで先制得点に成功し、序盤からチームに流れを持ってくる。勢いそのままCTB東佑太(スポ1=東海大大阪仰星)の好タックルで再びボールを手にすると、敵陣深くまでゲイン。最後はラックサイドから飛び出したNo.8城央祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園)がトライラインを割った。
たとえピンチの局面を迎えても、鉄壁のディフェンスで立大を寄せつけない。17分には、安定感のあるラインアウトモールで押し込んで、FL牧錬太郎(スポ3=神奈川・桐蔭学園)が確実なトライを奪った。さらにWTB鈴木寛大(スポ4=岡山・倉敷)も得点を追加して、リードを広げる。
その後、立大に攻められる時間帯が続くが、32分に相手のダイレクトタッチでラインアウトを獲得。そこから、アタックを左右に展開し、PR新井瑛大(教4=大阪桐蔭)が抜け出す。スピードを上げ、外からサポートに走っていたFL久我真之介(文構3=東京・早実)へとパスが繋がり、そのままインゴールへ飛び込んだ。これによりスコアは31-0となり、試合を折り返した。
後半が始まると、キックミスでいきなり早大にピンチが訪れる。誤ってハンドのペナルティーを犯すと、ペナルティーキックで3点を奪われてしまった。前半の勢いを取り戻したい早大であったが、ハンドリングエラーが続き、立て続けに好機を逃す。ようやく相手のミスでトライライン近くのマイボールスクラムを迎えると、力強く前進。城が自らグラウンディングに成功し、息を吹き返す。そして、22分にはLO⼩林光晴(⽂3=福岡)、27分にはWTB西浦岳優(社3=東福岡)と連続得点で突き放す。早大はここからさらにアタックのギアを上げ、試合終了までトライを重ねた。
最終的なスコアは67-3と圧倒的な実力を見せつけた。対抗戦の2戦では、自由な攻撃でグラウンドを駆け回り、主導権を握り続けた。自らのペースでテンポよく仕掛けることができているため、相手も後手に回り防戦一方となる。これがどんなメンバーでも実現できるということが、早大にとってのなによりもの強みだ。何度でもこのパターンで一方的にトライを積み重ね、早大が誇る強力な武器として残りの試合を戦いたい。

昨年の対抗戦は7位で終えた青学大。立大以外の6チームに敗れるという悔しい結果となった。それでも、全試合で必ず1トライはしており、そこにただでは負けられないという意地を感じる。今季は初戦でいきなり王者の明大と対戦。前半終了間際に初得点をあげるも、試合を通して多くの失点を許してしまった。続く慶大戦では、先制得点を決めるも、降雨の影響もありミスを重ねてしまい待望の白星とはならなかった。
3連敗を避けたい青学大は、今節での勝利に向けて念入りに準備してくるであろう。攻撃においてチャンスを逃さずトライに繋げる場面も多いため油断のならない相手だ。特に敵陣深いエリアに侵入した際の集中力の高さは目立つ。丁寧なプレーでフェーズを重ね、しっかりとボールを生かす。その中で少しずつディフェンスの綻びを誘い、ペナルティーの獲得やゲインを狙う。試合を通して苦しい時間が訪れることは確実だろう。しかし、早大の堅守は大学ラグビーの中でも頭一つ抜けている。強烈なタックルが次々と襲い掛かり、ターンオーバーまでやり遂げる。そんな激しいプレッシャーがかかる中で行われる我慢比べの軍配がどちらに上がるかは今節の見所である。

早大の注目選手は日本人離れしたフィジカルを活かした迫力のあるキャリーが魅力の小林だ。ボールを手にすれば、相手を引きずりながら進撃。多くの選手はその超大型な体格を前に手でジャージーを掴むことがやっと。囲まれた壁を壊すようにディフェンスラインを豪快に突破していく。進み続けた先にあるのはインゴール。残酷なことに、かろうじて倒すことができたとしても、長い手を伸ばしてトライを奪う可能性が十分にある。まさに早大アタックの心臓だ。また、大きな身体からは想像できない速さのタックルもきちんと目立つ。早大のメンバー一人ひとりのディフェンス意識の高さを象徴しているといえる。今後も体を張ったプレーに期待がかかる。
さらに、新世代で台頭する東にも注目したい。対抗戦の舞台はまだ経験が少ないにも関わらず、臆することなくボールを受け取って相手ディフェンスに突っ込む。要所要所でしっかりゲインし、BKラインでアタックの重要なアクセントとなっている。とはいえ、やはり光るのは強烈なタックルだ。完璧なタイミングで何度も肩をぶつけ、その度に会場を沸かせる。青学大戦では、ルーキーながらチームを牽引し、圧倒的な存在感を放ちたい。
また、WTB池本晴⼈(社4=東京・早実)がスターティングメンバーに名を連ね、No.8松沼寛治(スポ4=東海⼤⼤阪仰星)がベンチに控える。満を持して登場する副将コンビが、勢いのみならずチームに安定感をもたらしてくれるはずだ。

対する青学大の注目プレイヤーはFWのセットプレーを支える柱の役割を担うHO松﨑天晴。極上のスローで、ジャンパーの手元へ確実にボールを届ける。加えて、ランニングスキルも非常に高く、フロントローながらスピードで相手を置き去りにすることも可能だ。対抗戦初戦では、まさにこの松﨑が躍動。タッチライン際を駆け抜けた松﨑がサポートにきた仲間になんとかオフロードパスを繋ぐと、そのままトライに成功する。昨年の全国大学ラグビーフットボール選手権大会覇者である明大に一泡吹かせる活躍を見せた。
しかし、早大FWにも多くのタレントが揃っている。そのため、ラインアウトの完成度に関しては申し分なし。体格だけでなく技術を活かして高さや速さ、正確さにこだわり、BKへボールを供給する。それこそが、これまでと同様に安定感のある試合運びをするための鍵となる。

秋に対抗戦が始まってから早大は、付け入る隙を与えない一方的な試合を続けている。どんなチームでも調子がいい時もあれば、悪い時もある。勝ち続けるということはプレッシャーとの戦いであり、理想が現実と乖離する危険性もある。難攻不落の牙城を幻想のままで終わらせない。肝心なことは周りの状況に左右されず、どんな相手でも常に安定した結果を残すこと。簡単なことではないからこそ、努力を怠らなかった早大。青学大戦では、期待を上回る出来栄えをしっかりと示してくれるであろう。続く戦いの中で、真価が問われる。
記事:池田健晟 写真:大林祐太、伊藤文音(早稲田スポーツ新聞会)
