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One Shot

2025
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四年早明戦/観戦記

伝統と誇り。稲穂を胸に過ごす時間が長くなるほど、その想いは確かな重みを帯びていく。4年間、苦楽を共にしてきた仲間とともに早大・上井草グラウンドで明大を迎えうつ。その歩みのすべてを証明する場所で、宿敵との四年早明戦が幕を開けた。試合開始早々から流れをつかんだ早大は、その勢いのまま先制に成功する。攻守にわたってプライドを示したが、続けざまに明大に得点を許し、試合は一転して追う展開に。それでもSO仲山倫平(法4=ニュージーランド・ウェリントン・カレッジ)のゲームメイクが光り、FB髙栁壮史(創理4=東京・早大学院)の豪快なランから1本を返す。10-14で前半を折り返した。迎えた後半、早大はラインアウトモールを起点にBKへと展開し得点。この日初めてリードを奪った。しかし、再び明大に流れを渡すと、立て続けに失点を許してしまい、4年間の積み重ねを背負いながら臨んだ四年早明戦は17-26でノーサイドとなった。

ラインブレイクするFB髙栁

前半は仲山のキックオフで幕を開けた。強風が吹き荒れ、ゲームメイクが難しい状況の中、早大は風下に立ち、前半の行方は仲山のゲームコントロールに託された。明大のキックが風に流されてデッドラインを越えると、早大は開始早々、敵陣でのマイボールスクラムからチャンスを得る。5分、そのスクラムから仲山が一瞬のギャップを突いてビッグゲイン。最後はWTB小澤アンディ(法4=千葉・流経大柏)にボールが渡り、そのままゴールラインへ。風下という不利な条件の中でも、早大は幸先の良いスタートを切った。早大はアタックだけでなく、ディフェンスでも気持ちのこもったプレーを見せた。誰かが抜かれても、必ず誰かが止める。中でも光ったのが、LO萩原武大(スポ4=茨城・茗渓学園)の献身性だ。内側から鋭くプレッシャーをかけ、味方が窮地に陥れば即座にカバー。相手のチャンスの芽を次々と摘み取った。

10分、早大にピンチが訪れる。スクラムで劣勢に立たされると自陣深くまで押し込まれ、ラインアウトモールを形成される。自陣5メートルラインまで迫られる大ピンチも、FWが一体となって一度は凌ぐ。しかし12分、明大に細かなパスを繋がれ、ついにインゴールを明け渡し、スコアは5-7に。そして20分には連続失点を許し、5-14と点差を広げられる。しかし、その後も得点を許しかねない場面で、萩原とCTB森田倫太朗(スポ3=兵庫・報徳)が決死のタックルを見せ、相手を仕留め切った。そして30分、上井草を揺らすビッグプレーが飛び出す。明大のキックを髙栁が処理すると、迫り来るディフェンスを次々とかわしてビッグゲイン。自陣22メートルラインから一気に独走し、相手を寄せつけることなくゴールラインを駆け抜けた。その後も森田や萩原、LO米倉翔(スポ3=福岡・修猷館)の鋭いキャリー、さらには相手の陣形を見極めた仲山のキックなど、プライドを示すプレーが続く。しかし得点には結びつかず、10-14でハーフタイムを迎えた。

力強いボールキャリーを見せるLO萩原

戦いはセカンドハーフへ。仲山のパスからFL山下広一朗(創理4=東京・早大学院)が抜け出してビッグゲインを奪うと、SH渡邊晃樹(スポ2=神奈川・桐蔭学園)の素早い球捌きからペナルティーを獲得。直後のラインアウトモールを起点にフェーズを重ねた。WTB小澤ジョージィ(スポ4=千葉・流経大柏)は接点で力強く走り込み、渡邊(晃樹)も隙あらば自らラックサイドを突き、攻撃を加速させる。13分、ラインアウトモールから前進すると、渡邊晃が起点を作り、仲山が巧みなステップでディフェンスを翻弄。そのままゴールラインをこじ開けた。自らコンバージョンを沈め、スコアは17-14とこの試合初めてリードを奪う。

しかし、明大はフレッシュレッグスを投入して流れを引き寄せた。早大は自陣でゴールラインを背負う時間が続くと、23分、35分に立て続けにトライを許し、スコアは17-26に。早大は最後まで勝利を諦めず、WTB山下一吹(教4=東京・早実)を中心に攻守で気迫のこもったプレーを見せた。山下一はボールを持てば果敢に前へ出て、守りでは体を張ったタックルでチームを鼓舞。ベンチから部員の『One Shot』コールや声援を背に、稲穂の誇りを体現し続けた。しかし、反撃は及ばず無念のノーサイド。4年間の歩みと想いを背負って臨んだ四年早明戦は、17-26で幕を閉じた。

インゴールにボールを叩き込むSO仲山

早大の伝統と誇りを背負い、4年生は最後まで戦い抜いた。苦楽を共にし、山も谷も経験してきた4年間。決して平坦ではなかった時間を仲間とともに歩んできた。すべてを分かち合いながら乗り越えてきた日々が、この一戦には詰まっていた。受け継いできたものを、そして自分たちの4年間で積み上げてきたものを次につなげたい。その想いを胸に4年生はピッチに立った。結果は無念の敗戦。しかし、最後まで粘り強く、泥臭く戦う姿によって確かにバトンは受け渡された。これで終わりではない。全員で勝利をつかみにいこう。その先に待つ1月11日、凱歌を響かせるために。

記事:大林祐太 写真:村上結太、安藤香穂(早稲田スポーツ新聞会)